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動物の第六感「磁覚」の謎に迫る。磁場に反応する細胞の観察に成功(日本研究)

カラパイア

磁場に反応する細胞の観察に成功
磁場に反応する細胞の観察に成功/iStock

 動物界には第六感が本当に存在している。それは「磁覚」と呼ばれる磁場を感じる力だ。例えば渡り鳥はかなり正確な方向感覚を持っているが、これは彼らが磁場を知覚できるからだと考えられている。

 これまで謎とされてきたそのメカニズムだが、東京大学の研究グループによって、史上初めて磁場(磁力)に対して量子力学的な反応をする細胞の様子が観察されたそうだ。

生物が磁場を感じる量子のメカニズム「ラジカルペア・メカニズム」


 鳥やコウモリ、ウナギやクジラなど、地球の地磁気(磁場)を感じることができる動物はたくさんいる。驚いたことに、人間にすらそうした力が備わっている可能性がある。

 しかし、その詳しい仕組みはあまりよく分かっていない。それが微生物(細菌)によってもたらされるなどいくつかの仮説があるが、主流な考え方は、「ラジカルペア・メカニズム」という細胞内で起きる量子力学的・化学的反応が関係しているというものだ。

 分子が光によって励起すると、そこにある電子が別の分子に向かってジャンプすることがある。

 通常、電子は2つずつのペアになっているものなのだが、こうしたジャンプによって電子が1つしかない(ラジカル)分子が2つ出来上がる――これが「ラジカルペア」だ。

 ところで電子のような粒子には、「スピン」という量子力学的な状態がある。

 そして、もしこのラジカルペアのスピンが互いに一致していれば、ゆっくりとした化学反応が起こる。その反対にスピンが一致していなければ、化学反応は素早いものとなる。

 磁場は電子のスピンに影響を与えるので、細胞内の化学反応を左右し、それが動物の行動の変化にもつながる。これがラジカルペア・メカニズムと磁覚の関係だ。

渡り鳥
Pixabay

磁場に反応するタンパク質を観察


 磁覚を備えた動物の細胞の中でラジカルペア・メカニズムを起こしているのは、「クリプトクロム」というタンパク質だと考えられている。今回、史上初めて観察されたのは、このタンパク質が磁力に反応している姿だ。

 研究グループは「HeLa細胞」(1950年代に亡くなった女性の癌細胞から分離された人間由来細胞株)のクリプトクロムを構成する亜粒子「フラビン」に着目した。

 この粒子には、青い光を照射すると蛍光色を発する性質がある。そこで細胞に青色光を照射して光らせながら、4秒毎にさっと磁場にさらしてみた。するとその度に蛍光が3.5%ほど低下したという。

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磁場にさらした細胞が暗くなっている様子 image by:Ikeya and Woodward, PNAS

純粋な量子力学的プロセスが細胞の化学反応に影響


 研究グループによると、こうした陰りはラジカルペア・メカニズムが起きている証拠であるという。

 フラビンが光によって励起したとき、ラジカルペアか蛍光のどちらかが生じる。これはつまり、蛍光の強さは、ラジカルペアの反応の速さによって左右されるということだ。

 磁場にさらされると、ラジカルペアの電子スピン状態はお互いに一致する。すると化学反応がゆっくりになる。だから蛍光の強さが全体的に陰る。

 「純粋な量子力学的プロセスが細胞レベルの化学反応に影響を与えているところを観察できたことを示す、超強力な証拠だと考えています」と、論文共著者のジョナサン・ウッドワード教授は述べている。


磁場が弱い方が反応しやすい可能性


 なお今回の実験で使われた磁場は、一般的な冷蔵庫の磁石くらいの強さで、地球の地磁気より500倍も強いそうだ。

 ならばやはり地磁気とラジカルペア・メカニズムは関係ないのではと思うかもしれないが、面白いことに、磁場を弱くした方が、ラジカルペアの電子スピン状態を切り替えやすかったとのことだ。

 このこともまた、磁覚を備えた動物の細胞内でラジカルペア・メカニズムが作用していることを示唆しているのかもしれない。

 この研究は『PNAS』(1月19日付)に掲載された。

References:東京大学プレリリース / newatlas/ written by hiroching / edited by parumo

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