top_line

【new】エンタメウィークをアプリで読もう

34年の時を経て、蘇る『夢みるように眠りたい』–そして、同じく最新作『BOLT』を発表の林海象監督×佐野史郎インタビュー

cinefil

映画『BOLT』『夢みるように眠りたい』林海象監督×佐野史郎インタビュー

左より林海象、佐野史郎

第22回上海国際映画祭ほか世界を震撼させた林海象監督7年ぶりの最新作、盟友・永瀬正敏さん、佐野史郎さんほか出演による映画『BOLT』が12月11日より全国公開されます。
さらには林海象監督・佐野史郎さんの劇場デビュー作『夢みるように眠りたい』も34年ぶりに12月19日よりデジタルリマスター版となってスクリーンによみがえります。類まれなる感性から第一線で活躍を続ける林海象監督と佐野史郎さんに、両作品への思いや撮影時のエピソードを伺いました。

――本作は3つのエピソードで構成されています。その理由をお聞かせください。

林海象(以下、林): 初めからそうしようとしたわけではないんです。まずエピソード3の『GOOD YEAR』を1つの短編として2014~2015年にかけて製作しました。当時は東北芸術工科大学に教員として呼ばれて、学生と一緒に何か作ってくださいと言われた。『LIFE』『BOLT』のことは想定していませんでした。その後に主演の永瀬(正敏)さんともお話して、原発をテーマに短編を続けて何か作れるのではないかと。そこから『LIFE』の企画が立ち上がり、福島の20キロ圏内に三回入りました。そこで実際に何が起きているのか知ったことは大きかったですよね。そして2017年に『LIFE』を撮り終える頃に、美術家のヤノベケンジさんから「(高松市美術館での)展示会でセットを組むから撮らないか」とお話をいただきました。あれだけの原子炉のセットはコストがすごくかかるものだけどヤノベさんがすべて作ってくださると(※1https://cinefil.tokyo/_ct/16965349)。そこで短編を3つ合わせて1つの映画にできるのではないかと思いました。それらが期せずして震災から10年のタイミングで劇場公開となった。導かれたというのか、不思議な映画ですよね。

――それぞれの短編がSF、リアリティショー、怪談というような異なる色合いで撮られています。多様なジャンルを駆使したのはなぜですか。

広告の後にも続きます

林:映画はやはりエンターテイメントだと思っています。根底には実際に起きた出来事や原発の問題がありますが、3つの短編が暗示しているものをファンタジーとして観客に届けたかった。今人類が持っている閉塞感のようなものを色々なパターンの中で見せて、想像を膨らませてもらいたかった。そういう想いがありました。

佐野史郎(以下、佐野):林監督の作品はどれも基本的にファンタジーですよね。つらく悲惨な現実があっても、ファンタジーとして描かれることで向かい合える。そこに救われる人はたくさんいると思います。

左より佐野史郎、林海象

――林監督と初期の頃からタッグを組んでいる佐野さんから見て、『BOLT』の撮影現場はいかがでしたか?

佐野:楽しかったですし、厳しかったです(笑)。林監督とは10本以上の作品でご一緒させてもらっていますが、『BOLT』はデビュー作の『夢みるように眠りたい』の頃と一番現場の雰囲気が近かった。撮影カメラマンの長田勇市さんが同じだったということもありますが、セリフも少なく、サイレントの要素が重なっていましたし。また『夢みるように眠りたい』は今はなき古い日本の建築物がたくさん映っていて、今回も美術や建造物が重要な現場でした。そうした建造物の中で人間だけがフィクションをやろうとするとどこか嘘くさくなってしまう。美術に負けてしまう。美術館に来てもらった人たちから展示物と並んで撮影を見られていたことで、より逃げ場がなかったですよね。映画の世界とちゃんと向かい合わなければいけなかった。とてもよい雰囲気の現場でした。

佐野史郎

林:美術館からは「とにかくお客さんを止めないでほしい」と言われていたのでずっと見られながら撮影を続けていたんです。撮影隊すべてが展示物になったみたいで面白かった(笑)。たぶんあんな撮影方式は映画史上初なんじゃないかと思います。

――34年ぶりの公開となる『夢みるように眠りたい』について、改めてご覧になっていかがでしたか。

佐野:何度も見ている作品ですが、見るたびに印象が違います。とくに今回は映画デビュー作と最新作を同時期に見ることができるだけに、見比べる面白さがありました。こういう巡りあわせはなかなかないですから。

林:『夢みるように眠りたい』は非常に評価もされましたし、たくさんの人に見てもらうことができました。僕はあの作品に救われましたし、今でも救われています。ぜひこの機会に両作品とも劇場で見てもらいたいです。

©︎映像探偵社

――もう一度探偵モノをお二人でつくろうというお話が出ることはないんですか?

林:佐野さんの「魚塚」というキャラクターはすごくいい役ですからね。シリーズでやろうかと思った時もありました。

佐野:僕は今回久しぶりにデジタルリマスター版を見た時に、吉田義夫さんが演じた松之助という執事役、あれをやりたいと思いました。あの映画の世界のまま歳をとった魚塚としてそこにいるのか、別の役として出演するのか。

林:分かりました(笑)。ちょっと考えましょうか。

林海象
京都府京都市生まれ。映画監督、映画プロデューサー、脚本家。東北芸術工科大学教授。
映画では『夢みるように眠りたい』『私立探偵 濱マイク3部作』『探偵事務所5 シリーズ」『彌勒』、テレビドラマでは『黒蜥蜴-BLACK LIZARD-』他、作品多数。
2019年、監督作品『BOLT』が「第22回上海国際映画祭」のパノラマ部門(受賞対象外の話題作品)の正式招待作品として上映。2020年、監督デビュー作である『夢みるように眠りたい』が、「英国映画協会が選ぶ、1925~2019年の優れた日本映画95本」の1本に選出。また、映像のみならず舞台の世界でも活躍の場を広げており、2019年には舞台『ロストエンジェルス』の演出を、2020年には舞台『かげぜん』の演出を手掛けた。

佐野史郎
1955/島根県出身。1986年『夢みるように眠りたい』(林海象監督)で映画デビュー。
『毎日が夏休み』(1994/金子修介監督)、『ゴジラ2000ミレニアム』 (1999/大河原孝夫監督)、『カラオケ』 (1999/佐野史郎第1回監督作品)、『完全なる飼育/赤い殺意』 (2004/若松孝二監督)、『太陽』 (2006/アレクサンドル・ソクーロフ監督)、『はやぶさ/HAYABUSA』(2011/堤幸彦監督)、『Fukushima50』(2020/若松節朗監督)など数多くの映画作品に出演。92日本新語流行語大賞、第30回ゴールデンアロー話題賞、第30回ギャラクシー賞奨励賞

『BOLT』
 12月11日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次公開

STORY
ある日、日本のある場所で大地震が発生。その振動で原子力発電所のボルトがゆるみ、圧力制御タンクの配管から冷却水が漏れ始めた。高放射能冷却水を止めるため、男は仲間とともにボルトを締めに向かう。この未曾有の大惨事を引き金に、男の人生は大きく翻弄されていく。

【予告編】BOLT

永瀬正敏 佐野史郎 金山一彦 後藤ひろひと テイ龍 進吉村界人
大西信満 堀内正美 佐々木詩音 佐藤浩市 月船さらら

監督・脚本:林海象 
プロデューサー:根岸吉太郎

美術:ヤノベケンジ 制作:東北芸術工科大学
製作:レスパスビジョン/ドリームキッド/海象プロダクション
撮影:長田勇市 美術:竹内公一/磯見俊裕
協力:高松市/高松市美術館/京都芸術大学

配給:ガチンコ・フィルム
2019年/日本/80分

(C)レスパスビジョン/ドリームキッド/海象プロダクション

■公式Twitter:@BOLT_kaizou

公式サイト

BOLT

『夢みるように眠りたい』

STORY
大正7年。初めての女優主演映画といわれる帰山教正監督「生の輝き」の以前に、実は月島桜が主演した「永遠の謎」という映画があった。しかし、この「永遠の謎」は、警視庁の映画検閲によって妨害され、ラストシーンが遂に撮影されないまま、その名を映画史から消されてしまった……。 昭和のはじめ、東京。私立探偵・魚塚甚(佐野史郎)の元に、月島桜と名のる老婆(深水藤子)から、誘拐された娘・桔梗(佳村萠)を探して欲しいとの依頼がくる。調査を続けるうちに、魚塚は、この事件全体がまるでドラマのように出来すぎていることに気がついていく……。

【予告編】夢みるように眠りたい

佳村萌 佐野史郎 大竹浩二 大泉滉 あがた森魚 小篠一成 中本龍夫
中本恒夫 十貫寺梅軒 遠藤賢司 草島競子 松田春翠 吉田義夫 深水藤子

脚本・監督:林海象

撮影:長田勇市 製作:一瀬隆重 美術:木村威夫
音楽:熊谷陽子/浦山秀彦/佳村萠/あがた森魚
照明:長田達也
制作年:2020年デジタルリマスター(初版1986年)
製作国:日本

84分/モノクロ/Blu-ray
製作:映像探偵社
宣伝・配給:ドリームキッド/ガチンコ・フィルム

公式サイト

夢みるように眠りたい

TOPICS

ランキング(映画)

ジャンル