top_line

【毎日更新】新着クーポンをチェック

絶滅危惧種の馬「モウコノウマ」のクローンが誕生。40年前に冷凍保存した遺伝子サンプルから現代に蘇る(アメリカ)

カラパイア

モウコノウマのクローンが誕生
モウコノウマのクローンが誕生 image by:Gen Pets & Equine/Instagram

 2020年8月6日に世界で初めて「モウコノウマ」のクローンが誕生した。クルトくんと名付けられたこのウマには一族の存亡がかかっている。

 クルトくんは40年前に冷凍保存された遺伝子のサンプルを使用しクローンとして誕生した。体に宿っている遺伝子は、モウコノウマから失われた遺伝的多様性を蘇らせるための鍵だと考えられている。

絶滅危惧種「モウコノウマ」


 中央アジアの草原地帯が原産の「モウコノウマ」(学名 Equus ferus przewalskii)は、かつて現存する唯一の野生馬(家畜化されていない馬)だと考えられていたこともある貴重な馬だ。

 第二次世界大戦以降、狩猟・家畜との競合・厳冬といった要因によって生息数が激減し、もはや飼育されているものしか生き残っていない。

 野生のモウコノウマが最後に目撃されたのは1969年のことで、野生ではこの頃に一度絶滅したと考えられている。

 幸いにも、動物園にはまだ生き残りがいる。1899~1902年および1947年に捕獲された計12頭のモウコノウマを繁殖計画にしたがって増やし、現在では2000頭近くが各地で飼育されている。

繁殖計画が進められているモウコノウマ
飼育下にあるモウコノウマ
iStock

個体数の激減による遺伝的多様性の喪失


 ただし、そうして繁殖されたモウコノウマには遺伝学でいう「ボトルネック効果」が生じてしまっている。

 ひとたび数が激減した種を再び増やすことに成功したとしても、その子孫の遺伝的多様性は著しく低くなってしまうのだ。

 どの個体も似たような遺伝子ばかりなので、外部のストレスや環境の変化に種全体として適応することが難しくなり、結局は簡単に絶滅してしまうことになる。

 また数が少ない集団では「遺伝的浮動」も生じやすい。これは集団内においてある遺伝子の占める割合が偶然の要因によって変化することなのだが、このために特定の遺伝的特性だけが目立つ一方で、別の遺伝的特性は失われるという結果になる。つまり、種の遺伝的多様性がよりいっそう乏しくなりやすいということだ。

 当然ながら、小集団では「近親交配」も生じやすい。その問題点は、遺伝子が近いもの同士で子供が生まれると、隠れていた有害な遺伝的特性が表面化しやすくなることだ(近交弱勢)。これもやはり、長期的には種が生き残る確率を下げる。

iStock-1146875914
iStock

遺伝的に多様だった40年前の遺伝子サンプルから誕生したクローン


 クルトくんがモウコノウマにとって大切な存在なのは、この子が一族の遺伝的多様性を豊かにしてくれると期待されているからだ。

 40年ほど前、あるオスのモウコノウマの血統を分析したところ、そのゲノムが2頭の野生の祖先から受け継いだものであることが判明した。

 つまり、そのオスなら当時生きていた他の個体よりも遺伝的に多様な子孫をもうけることができたということだ。そこで1980年、サンディエゴ動物園の冷凍動物園にその遺伝子のサンプルが保存されることになった。

 クルトくんは、このとき保存された遺伝物質から誕生した仔馬だ。そのオスの遺伝物質から作られた胚を代理母のウマ(学名 Equus ferus caballus)に移植して、普通の出産プロセスによって誕生した。

1_e4
クルトくんと代理母 image by:Scott Stine/Revive & Restore

 名前は冷凍動物園の設立者である遺伝学者クルト・ベニルシュケにちなんだものだ。

「仔馬は、この種にとって遺伝的にもっとも重要な個体になるでしょう」と、サンディエゴ動物園グローバルの動物学者ボブ・ウィーゼ氏は述べ、「モウコノウマの未来にとって大切な遺伝的多様性を取り戻してくれればと願っています」と期待をにじませた。

クローンとして誕生したクルトくんの映像

Kurt, the cloned Przewalski’s foal, August 31, 2020


他の種にとっても希望の光


 クルトくんはモウコノウマにとって希望の光だが、世界中にたくさんいる他の絶滅危惧種にとっても同じことが言える。

 というのも、クルトくんの誕生は、長期間冷凍保存されていた遺伝物質であっても、きちんと蘇らせることができるという証明だからだ。


この投稿をInstagramで見る

ViaGen Pets & Equine(@
viagenpetsandequine)がシェアした投稿



 これまでには13年間保存されていた和牛の精子や、20年間保存されていたクロアシイタチの精子からクローンを作成することに成功しているが、今回はさらに長期間となる40年前の遺伝物質からの誕生だ。

 サンディエゴ動物園と協力してクローンを作成したRevive & Restore社は、絶滅が危惧されるクロアシイタチの回復にも着手しており、将来的にはマンモスの復活も目論んでいるそうだ。

 そのためには4000年という時を超える必要があるが、今回の成功はそれへ向けた小さくとも着実な一歩だと言えよう。

References:sandiegozoo / sciencealert/ written by hiroching / edited by parumo

TOPICS

ランキング(動画)

ジャンル