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【石田雄太の閃球眼】トライアウトのあり方に問題アリ

週刊ベースボールONLINE


11月15日にマツダ広島で行われた12球団合同トライアウトで好投を見せた前ソフトバンクの大隣憲司

 今年も12球団合同トライアウトが開催された。場所は広島だったが、51人のプレーのすべてをテレビで観ることができた。なぜなら、今年のトライアウトはCS放送で生中継されたからだ。現場には行けなかったので選手たちの機微に触れることは叶わなかったが、大隣憲司のアウトコースいっぱいに決まったストレートの美しい軌道も、松坂世代の木村昇吾が放ったライトフェンス直撃のツーベースヒットも、地元の広島出身、宇佐美塁大が執念でスタンドへ運んだホームランも、すべて観ることができた。この日の結果だけが合否を左右するわけでないことは選手たちにしてみれば百も承知だろうが、それでも結果は出るに越したことはない。プレーを終えた選手たちとその家族は、しばらくの間、鳴るかどうかも分からない携帯電話を握りしめて、辛い時間を過ごすことになる。

 合同トライアウトも、今年でもう17回目になるのだとか。今年のトライアウトを中継したフジテレビによれば、過去、トライアウトに参加した選手は去年までの16回で延べ1134人。うちキャンプ等で別に行われたテスト入団を含めない、トライアウト直後に合格を勝ち取った選手はたったの63人。合格率は5.6パーセントに過ぎない。昨年は榎本葵、柴田講平、久保裕也の3人、一昨年もウーゴ、白根尚貴、鵜久森淳志の3人のみ。トライアウトでの合格は極めて厳しくなっている現実の一方で、注目度は年々、アップしている。“戦力外通告”という言葉がテレビ番組のタイトルになって野球好きに広く認知され、やがては合同トライアウトのスタンドに大挙して観客が詰めかけるようになった。今や、テレビで生中継される一大イベントとなっている。

 選手の野球人生を左右する運命の一瞬をショーアップすることに違和感を覚える向きはあるだろうが、ドラフト会議もショーにしている現状を思えば、合同トライアウトも、もっとショーにしてしまえばいいのに、と思ったりする。一週間、携帯を手に真綿で首を絞められるような辛い時間を過ごすくらいなら、その日のうちに結果が分かったほうがスッキリするのではないかと思うのだ。トライアウトが終わった後、グラウンド上で受験した選手の名前を一人ずつ読み上げ、交渉を希望する球団はプラカードを上げる。伝説のオーディション番組、『スター誕生!』のように、複数のプラカードが上がる選手もいれば、一枚もプラカードが上がらないことであきらめざるを得ない選手も出てくる。

 そのために、NPBとしては来季、12球団のいずれかと契約を希望する選手には合同トライアウトへの参加を義務づけなければならない。ケガなどでプレーできない選手は、その旨、申告すれば実技は免除される。昨年の細川亨や田中浩康、3年前の新井貴浩のように、戦力外通告のリストに載りながらトライアウトを受けずに他球団へ入団することは認めない。今年なら、戦力外通告を受けながら現役続行を希望していると伝えられている松井稼頭央(その後、古巣の西武と契約)、村田修一、松坂大輔などはトライアウトを受けていない。そういうケースをなくす代わりに、12球団のほうにもそれなりの覚悟を求めるべきだろう。

 たとえば、少なくとも一人に対しては交渉の意思を示すプラカードを上げることを義務づけ、支配下選手枠を“71”にしてでも、1人はトライアウト枠を設けることにする。ほんの数年前、どこかの球団が高く評価してプロの世界へ来てもらった選手なのだから、他球団がセカンドチャンスを提供するのはプロ野球全体としての責任なのではないかという気がしてならない。環境を変えれば花開くかもしれないというアプローチを、12球団で試みる。選手を財産として考えるのなら、合格率が低過ぎるトライアウトのあり方に問題アリと考えるべきだと思うのだ。

 トライアウトとオーディションをセットにして、選手たちにはその日のうちに合否を伝える。もちろん社会人や独立リーグ、海外の球団にその規定を当てはめるわけにはいかないが、まずはNPBとしてそういう仕組みを作る。ドラフトと同じように、トライアウトもショーアップすることで、それがビジネスになる一方、選手にとってもいろんなことが分かりやすくなるのなら、NPBにも選手にもウインウインの話ではないかと思うのだが、どうだろう――。

文=石田雄太 写真=太田裕史

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