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美人女子高生を料理で手なずけ飼育するのは…小5のお母さん!? 幸せ満腹グルメコメディ

ダ・ヴィンチNEWS

『舞ちゃんのお姉さん飼育ごはん。』(秋津貴央/竹書房)

 偶然だが、前回の『短い横断歩道も待つタイプの中学生』のような、“しっかりした少女”が主人公の作品を2週連続で取り上げたい。誰も傷つかない、それでいて心温まる内容だ。私はこういうやさしい作品が好きだ(それとはまったく真逆のサイコっぽい作品も好きだけれど…)。

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 さて話を戻して、今回ご紹介する“しっかりした少女”は、前回よりさらに年齢を引き下げて小学生。しかも、年上のお姉さんを料理で“飼いならしちゃう”というトンデモストーリー…ではなく、お腹を空かせたお姉さんに手作り料理を食べさせて心もお腹も満たしてあげるというやさしい物語。小学生なのに“オカンみ”溢れるグルメコメディ、秋津貴央先生の『舞ちゃんのお姉さん飼育ごはん。』(竹書房)をご紹介!

小学5年生なのにまるで“オカン”!? 彼女が見つけたお姉さんは…

 自然豊かな田舎で父と2人暮らしの小学生5年生の少女・五十嵐舞。ある雨の日に学校から帰宅すると、玄関前に何やら影が…。近づいてみると、そこにはセーラー服姿のロングヘアーのお姉さんが横たわっているではありませんか! 生きているのかな? お姉さんをツンツンしてみると、スッと起き上がった! …と思ったら、力が入らなかったのか、舞の胸元に倒れ込んでしまう。倒れた原因は、空腹。お腹の虫が鳴ったのを聞き、舞は彼女に料理を振る舞うことに。

 舞が料理を始めようと、朝から仕込んでおいた鮭の炊き込みご飯が入った炊飯器を開けると、お姉さんはたまらずにつまみ食い。
「下手に手を加えるよりこのままのほうが…」
お姉さんが発した何気ない言葉に、舞ちゃんのハートに火が点き、さらに美味しいものに仕上げようと腕を振るう! 小学生の包丁を使う姿にハラハラしながら見守るお姉さん(※実際は、危なげなく使いこなし、慣れた手つきで材料を刻んでいます)。そして出来上がったアレンジ料理にガッつくお姉さん! 彼女の心からの「おいしい」という感想に、やさしく微笑む舞――そんなお姉さんと少女の、ごはんで幸せを満たし合う、あたたかく美味しい物語だ。

 小学生の舞ちゃんが、なぜこんなに料理が上手いのか。それは、幼い頃に亡くした母親の手伝いをよくしていたから。今は父親と2人暮らしだけれど、父は仕事が遅くなることも多く、ここは推測だが、炊事は舞がそのまま引き継いだのかもしれない。

 一方、妙な形で舞と出会ったお姉さんの正体は、プロの小説家でもある女子高校生・三家環(みつやたまき)。炊事どころか、生活力ゼロらしい。傍からみると2人の姿はまるで母親と娘――ちなみに母親役は小5の舞ちゃん。環の口についた米粒を取ってあげたり、そのあと環のキレイな髪をブラッシングしてあげたり、さらに彼女が眠くなれば舞が膝枕してあげたり…どちらかというと親子というよりも家主とペット状態。そう感じた舞ちゃんは思わず、

「お姉さん、本当に飼えたらいいのにな…」

 それがこの作品のタイトルだ。環は舞ちゃんに甘えっぱなしでお世話されっぱなしの日常へ。お互いの足りないところを補い合いながらも、やっぱり舞ちゃんの“お母さん”ぶり、つまり“オカンみ”が素晴らしい! 読み進めるほど、「自分も舞ちゃんの子になりたい!」という感情が芽生えてくる。舞ちゃんの笑顔は、ただの小学生じゃない、甘えさせてくれるお母さんのもの。物語の中で毎回みせてくれるやさしい表情に、男女問わずそう思うはずだ。

 2人の少女が織り成す物語は、まるで風が吹き抜けるようなキレイで透き通った作風で描かれているので、環が突然見せる“キレイなお姉さん”の顔や“小説家”としての言葉の表現にもまた心がキュンとくる。ぜひその部分も楽しんでいただきたい。

 この作品の大事な登場人物(?)でもある、小さなお母さんこと舞ちゃんが作る数々のレシピは、どれも美味しそう。さっぱりしたお茶漬けも良いが、環が秘密食材を追加したスペシャルな角煮丼も。シンプルな材料と簡単な調理工程はレシピ付きで紹介されているので、普段料理しない私でも再現できそう。読んで心を満たした後は、お腹も満たされてみては? (ヤバい、お腹が空いてきた…舞ちゃん、来てくれ!)

文・手書きPOP=はりまりょう

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