top_line

2020年のカオスは80年代のSF作品『AKIRA』で予言されていたという海外の考察。ネオ東京と現実世界の奇妙な符合

カラパイア

AKIRAが2020のカオスを予言

 第三次世界大戦で荒廃し、復興の途上にあるネオ東京を舞台に、健康優良不良少年たちが超能力者の秘密を巡って反政府ゲリラや軍を相手に活躍する――それが大友克洋のSFマンガ・アニメ作品『AKIRA』だ。

 その独創的な世界観は日本のみならず海外でも高く評価され、日本国外における日本アニメムーブメントのさきがけとなった。

 発表当時はまだ未来だった2019年はすでに過去となったが、不思議なことにAKIRAで描かれた状況は、奇妙なほどに現実世界の今の状況と一致していると、アメリカの「A.V.クラブニュースワイヤー」誌ののクリエイティブ・ライターであるサム・バルサンティ氏は、その共通点を考察している。

新型コロナ・パンデミックを予言?


AKIRAの予言
image by:youtube:2020年東京オリンピック記念動画『AKIRA』

 ところでAKIRAの看板には、東京オリンピック開催まで147日と記されているが、現実世界で東京オリンピック開催予定日の147日前は、2020年2月28日にあたる。

 奇しくもこの日は、WHOが新型コロナの危険性評価を「高い」から最高レベルの「非常に高い」に引き上げた日だ。

 それだけではない。漫画版の3巻の巻末には、新聞形式にデザインされた次巻の予告が掲載されているのだが、そこには「WHO、伝染病対策を非難」との一文がある。

 今のパンデミックを言い当てているかのようなシンクロ率だ。

AKIRA
image by:AKIRA3巻スクリーンショット

抗議デモと警察の衝突


 映画版の冒頭では、暴走族のリーダー金田は仲間を率いて、ネオ東京の街中で抗争グループとバイクで乱闘を繰り広げる。

 その街には持つ者と持たざる者との緊張があるようだ。金田たち暴走族は、車のドライバーやレストランにいる裕福そうなカップルを襲撃。街が混乱に陥る様子が描かれているが、それと同時に抗議活動が行われているらしい描写もある。

 ほんの数秒だけ映し出されるテレビのニュースキャスターは、抗議活動を行う学生と機動隊が衝突したことを伝えている。

 劇中で抗議活動が暴動になった理由については語られていないが、平和的なデモ行進らしきものは、シーンが変わると機動隊の装甲車をひっくり返す暴徒と化している。機動隊は催涙ガスを投入。機動隊の中には催涙弾を抗議者の胸に直接打ち込む者までいる。

 そして2020年、現実世界では、香港をはじめ、「BLM」運動などによる抗議者と警察が世界中で衝突を繰り返している。


Akira – Clown biker’s & Riot Scenes, Brilliant anime!

オリンピック開催の是非をめぐる対立


 AKIRAでは、抗議者は税制改革を訴えている。このことから、戦後復興したネオ東京では富裕層が優遇され、そうでない者は冷遇されてきたことがうかがえる。

 2020年の現実では、構造化された人種差別と警察の暴力への抗議が行われているが、それとは別にコロナ禍が大量の失業者を出した一方で、「富裕層が資産を増やしている」というニュースも報道された。

 AKIRAのオリンピックは、そうした持つ者と持たざる者との対立を文字通り象徴している。「中止だ 中止」や「粉砕」という看板の落書きは、ネオ東京の社会不安を丸め込むことが目的であるということを十分証明するものだ。

 そして看板自体は、「抗議などやめて、日常を取り戻すために団結しよう! 経済を再開させよう!」というメッセージのように見える。


2020年東京オリンピック記念動画 『AKIRA』

かつての日常に戻りたいという願望が一線を越えた時


 AKIRAのオリンピック会場は、秘密の実験施設の真上に作られたもので、そこにはアキラという少年の遺体が保管されていた。その少年こそ、軍の実験で強力な超能力に目覚め、それによって旧東京を壊滅させた張本人だった。

 オリンピック会場は、まさに東京荒廃の原因となり、再び破壊を繰り返す危険性があるクサイ物に蓋をするためのものだ。かつての当たり前に戻りたいという願望が、本当の危険を隠喩的に覆い隠してしまっているということだ。

 金田の幼なじみ鉄雄は軍の実験で超能力に目覚めるが、やがて力を制御できなくなり暴走。不気味な肉の塊のような姿に変貌する。

 ネオ東京では市民の抗議活動がますます暴力的に抑圧されるようになり、怪しげな宗教が流行。軍は鉄雄を殺すべくハイテク兵器を投入するが、結局しっぺ返しを食らう。そして大勢の人々が死に、ネオ東京は再び破壊される。

 鉄雄に伝わった唯一のものは、金田との友情の記憶だった。つまりは実力行使よりも人間同士の解決だ。

 鉄雄が引き起こした大破壊がこの現実世界の何に相当するのか分からないが、私たちはまだそこの一線を超えてはいない。

 AKIRAで描かれたカオスは、奇妙なほど現実の2020年に似ている。それでも、私たちに唯一残された希望がカタストロフを回避することだけなどという絶望的な状況にはない。

 AKIRAは我々に、真の脅威を無視し続ければどうなるのかを警告してくれているのだ。例え日々そこに近づきあるとしても、まだ私たちはその一線を超えてはいない。

ls
 以上がサム・バルサンティ氏の考察である。

 ちなみに日本のお笑いコンビ、オリエンタルラジオの中田敦彦氏も、YouTubeでAKIRAと東京五輪延期、コロナ禍の関連性について説明している。


【AKIRA①】2020東京五輪延期&新型コロナ蔓延を予言!?

 私もAKIRAは大好きで、今一度漫画を読み返してみたのだが、読み終わった時に心に残るポイントが、その時々で違っていくのが興味深い。

 また、AKIRAのアニメーション映画は、高画質、高解像のリマスターバージョン(4K ULTRA HD Blu-ray & Blu-ray Disc 2枚組)が2020年4月24日に発売になっている。

 通常版はAmazonプライムなどで配信中なので、この機会に触れてみてはどうだろう。


「AKIRA 4Kリマスターセット」(4K ULTRA HD Blu-ray & Blu-ray Disc 2枚組)」
References: written by hiroching / edited by parumo

TOPICS

ランキング(動画)

ジャンル