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子どもからのSOSのサインを見逃さないで! “空気を読みすぎる子どもたち”の本音とは?

ダ・ヴィンチNEWS

『空気を読みすぎる子どもたち』(古荘純一/講談社)

 コロナ禍による長かった休園、休校期間。普段より、多くを過ごした親子の時間のなか、思いがけない子どもの一面を見つけた人もきっと多かったのではないだろうか。“いつの間に、●●ができるようになっていた”“こんなことに興味を持つようになっていたなんて”……。子どもは親の知らない間にどんどん成長していく。けれど一方で、聞こえてきたのは、その表情や言動に、違和感や不安を抱いてしまったという親の声――。

知的障害・発達障害のある子との適切な関わり方とは

「過去の失敗をしょっちゅう思い出している」「“どうせできない”とよく言う」「大げさに自分をアピールする」「大人の言うことにまったく抵抗しない」「“〇〇さんはいいな”と人をうらやむ」「新しいことにチャレンジしない」

 もしもこのなかに思い当たるものがあったら、それは、子どもの自己肯定感が低下し始めているシグナルかもしれない、と本書『空気を読みすぎる子どもたち』(古荘純一/講談社)は告げている。発達障害、自己肯定感、不登校、ひきこもり、虐待などの研究を長年続け、子どもの心の病気やその心理に幅広い見識を持つ小児精神科医、青山学院大学教授・古荘純一氏が監修した一冊は、現代に育つ子どもたちが、けっして声に出すことのできないつらさ、苦しさを、子どもの視点に立って紹介していく。

本書で考えていくのは、空気を読みすぎる子どもたちです。誰でも、ある程度は空気を読んで生活していますが、読みすぎはよくありません。親、学校、友だちの空気を読みすぎ、緊張しつづけていれば、疲弊します。

 本来、自由闊達な子どもたちが、なぜそんなことをしてしまうのか。本書で、対象として挙げられている年齢層は就学前から10歳くらいまで。“そんな小さな子が、空気を読み、ストレスを感じているなんて……”と思うかもしれない。だがそこには、今の子どもたちを取り巻く親世代のそれとは一変した環境がある。超少子化時代ゆえの注目、期待、あふれすぎている情報、早期教育、受験、子どもたちに厳しい社会のルール……。その現状が、子どもたちの心にどんな影響を及ぼしているのか。そのメカニズムをイラスト図解でわかりやすく説明してくれる。

 “KY”という言葉が、一般的に使われるようになったのは2000年代はじめ頃。10歳くらいまでの子どもを持つ親世代の多くは、その時期に思春期を過ごし、空気を読むことがコミュニケーションをとるうえで一番大切、と刷り込まれてきたのではないだろうか。だがその行為が、まだ自分というものも確立できていない、脆いほどにやわらかな心を持つ子どもたちのなかで行われているとしたら――。友だちに合わせようと常に気配りするAさん、以前は習い事、今は受験で休む暇がないBくん、活発さを、親に「発達障害」と思い込まれたCくん……本書で紹介される様々なケースからは、自分を無理に抑えてでも、周囲に合わせる子どもたちの姿が浮き彫りになってくる。

 自分の気持ちより、“空気”を優先していくことが続いていけば、子どもは自信がなくなり、自分のことを大切にできなくなってしまう。そして年齢が上がれば上がるほど、自己肯定感は下がり、「ささいなことで傷つき、立ち直れなくなる」「被害者意識を持ちやすくなる」など、精神的な弱さを抱え込んでいくようになってしまうと古荘先生は指摘する。その危うさから子どもたちを守るべきは、周りにいる大人。「つらい気持ちのSOSを見逃すな」という章では、見逃しがちな、子どもからのいくつものサインと、その原因が具体的に挙げられている。

 子どもが出すSOSの一方で、知らず知らずのうちに、親が出しているSOSを指摘した解説にもハッとする。

 親は大人であり、社会的な経験を経ては来ているけれど、“親”としての年齢は、我が子と一緒。子育ては戸惑いの連続だ。しかも幼稚園や保育園、学校での保護者同士・先生とのコミュニケーションに疲れている人が多いのも現実。そんな親の気持ちにも寄り添ってくれるのも頼もしいところだ。

「大人が心がけたい八つのこと」という章では、ほめ方や叱り方、不安や恐怖を安心に変える方法、過度の教育行為をしていないか、そして親として、大人として、自信を持つためのメソッドなど、小児精神科医の立場から具体的なアドバイスがいっぱい。

 教育の情報があふれ返り、自身と子どもにとって、正しいものを掴み取りにくくなってしまっている今、この一冊は、良き子育て、そして自分のなかの“親育て”の指針をつくるためのたしかな糧になるだろう。

文=河村道子

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