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「AV女優じゃ終わらない」――グラビアアイドルとしてスカウトされたはずがセクシー女優に。元AV女優・蒼井そらの半生をモデルに小説化

ダ・ヴィンチNEWS

『夜が明けたら 蒼井そら』(藤原亜姫/主婦の友社)

「平凡ではない、何者かになりたい」
 そんな淡い夢を抱いたことはないだろうか。

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 ほとんどは「そんなこと言ってたなぁ…」なんて頭をかきながら、家族や仲間と笑顔で話す思い出話となるのが関の山だろう。

 しかし、そんな野望を決してあきらめず、がむしゃらに追い求めた女性がいた。小説『夜が明けたら 蒼井そら』(藤原亜姫/主婦の友社)の主人公・ジュンだ。

 ジュンは、姉と2人の兄、妹を持つ、ちょっとヤンチャな平凡な女の子。小学生の頃、漠然と芸能界にあこがれを抱くが、特に行動を起こすわけではない。普通に高校・短大へ進学して、普通に彼氏を作り、普通に仲間と遊び青春を謳歌していた。

 そんな彼女の運命の歯車は、友人と遊ぶために訪れた渋谷でスカウトに声を掛けられた瞬間、動き出す。グラビアアイドルとしてスカウトされたジュン。ふっと湧いたチャンスを生かすため、スカウトを受け入れるが、気付けばセクシー女優としてデビューすることに。

 普通であれば「騙された!」と憤慨してしまうところだが、ジュンは違う。セクシー女優からタレントに転身して人気者となった飯島愛を目指す。その野望を胸にアダルトビデオの世界に飛び込んだ。「蒼井そら」と名を変えて…。

 蒼井そらという名前にピンときた方もいるかもしれない。蒼井そらは実在する元セクシー女優。何を隠そう、この小説は彼女の半生をもとに作られたフィクションだ。

 そのため、アダルトビデオに関するエピソードはかなり生々しい。「新人のギャラが最も高く、数本契約の度にギャラは下がっていく」というエピソードや、

「撮影しながら感じてると思ってるの?」
「大人の男たちは、無邪気な可愛い『普通の女』が大好きだ」

 といったジュンの本音など、ドキッとさせられる内幕も語られている。

「AV女優じゃ終わらない」――強い決意で夢を掴もうと、もがくジュン。しかし、彼女の心は夢を追いかける高揚感や希望だけで満ちているわけではない。

 初めての撮影を終えたジュンは、

「ああ、やっちまった…」
「どんなに苦しくても戻れない。引き返すべき岸辺は喪失した」

 という後悔の念や不安を抱く。前向きなだけではいられない。ただの人間であり、ひとりの女性ということだ。それでも、人前では無邪気で天真爛漫な“蒼井そら”を演じる。そんなジュンの強さと弱さ、両面に心を打たれる。

 もがき、苦しみながらも前に進むジュン。だが、セクシー女優に対する世間の目は厳しい。ジュンがセクシー女優であると知った同級生は「最低の汚い仕事」「クソビッチ」「恥晒し」と蔑む。周囲の人間がジュンの家族にまで「AV女優の親」と心無い言葉を投げかける。

 その度に心が抉られるほど傷ついただろう。何度も心が折れそうになったはずだ。それでもジュンは歩みを止めない。自分はジュンほどツラいだろうか。自分はジュンほど前を向いて進めているだろうか。不思議と勇気がもらえるはずだ。

 モデルとなった蒼井そらさんは本書の最終ページで「どこまでがホントでどこからが脚色なのか公表するつもりはないけど」としつつも、「生きるのがへたくそなあたしが選んだ人生にこれっぽっちも後悔なんかしてねぇよ!」「もう一度生まれ変わっても、あたしは『蒼井そら』に生まれたい」とメッセージを寄せている。発売前に行われたマスコミ向け取材会では「(だからこそ)悩んでいる人たちに読んでもらいたいし、背中を押すことができたら」と話す。

 ジュンが歩んだ波乱万丈な半生を綴った本書が、悩みを抱える人が前に進むための糧となることを願ってやまない。

文=冴島友貴

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