今年も凱旋門賞は厳しいのか……。サトノが前哨戦で直面した芝問題。
今年も凱旋門賞は厳しいのか……。サトノが前哨戦で直面した芝問題。
 日本のホースマンの悲願達成への道のりは今年も険しくなるのか――。 第96回凱旋門賞(10月1日、仏シャンティー芝2400メートル、3歳以上GI)と同じ舞台の前哨戦が、日本時間の9月10日夜から11日未明にかけて3レース行われた。


凱旋門賞へ向けて好スタート、とはいかなかったサトノダイヤモンド(左端)。残り3週間でフランスの重い馬場に対応することはできるか。 (photograph by Kyodo News)

 日本のホースマンの悲願達成への道のりは今年も険しくなるのか――。

 第96回凱旋門賞(10月1日、仏シャンティー芝2400メートル、3歳以上GI)と同じ舞台の前哨戦が、日本時間の9月10日夜から11日未明にかけて3レース行われた。そのひとつ、かつてオルフェーヴルが連覇したフォワ賞(現地時間9月10日、4歳以上GII)にサトノダイヤモンド(牡4歳、父ディープインパクト、栗東・池江泰寿厩舎)が出走したが、6頭立ての4着に終わった。直線入口までは余力を残していたように見えたが、本来の爆発力を発揮することはできなかった。

 サトノダイヤモンドにとってこのフォワ賞は、初の海外レースであったと同時に、天皇賞・春でキタサンブラックの3着に敗れて以来4カ月半ぶりの実戦だった。

 1番枠からの発走となったサトノダイヤモンドは、速いスタートを切り一度はハナに立ったが、僚馬のサトノノブレスを行かせて2番手にポジションを固定した。重発表の芝コースはやわらかく、キックバック(前の馬のはね上げ)が飛び交う状態で、何度かノメるような走りになっていた。

ラスト300メートルで追い出したが……。

 それでも能力の高さで持ちこたえ、鞍上のクリストフ・ルメールが手綱をがちっと抑えたまま抜群の手応えで直線に向いた。

 ラスト300メートル地点、外から後続が来るのを待って追い出した。そこから力強く伸びるのがこの馬の本来の姿なのだが、なかなか突き放せず、逆にラスト200メートル付近で次々とかわされ、4着に沈んだ。

 ルメールは「長い休み明けで、馬場も重かった。最後の200メートルは止まってしまった」とコメントした。

 2分35秒86という勝ちタイムでこのレースを制したのは、道悪巧者として知られるドイツのチンギスシークレット(牡4歳、父ソルジャーホロウ、M.クルーク厩舎)だった。1馬身半差の2着は、3連勝でGIガネー賞を制したフランスのクロスオブスターズ、3着もフランス調教馬のタリスマニック。昨年の優勝馬シルバーウェーヴは5着、サトノノブレスはしんがりの6着だった。

日本より10秒ほども遅い勝ちタイム。

 サトノダイヤモンドを管理する池江泰寿調教師は、レース前「前哨戦なのだから、何らかの課題が見つかったほうがいい」と話していたのだが、ここまで負けることは想定していなかったのではないか。

 後ろから何度も乗っかかられる「アウェーの洗礼」もあったようだ。

 敗因はいくつか考えられる。ひとつは、叩き良化型なので、久々の競馬だった今回は状態が本物ではなかったこと。

 もうひとつは、日本より10秒ほども遅い勝ちタイムが示しているように、これまで経験してきた競馬とは異質のレースへの対応と、重い馬場をこなすことに疲れ、スタミナを失ってしまったのではないか、ということだ。

 外から後続にかわされたとき、それまで左手前で走っていたのだが、右手前に戻して失速した。シャンティーは直線が長いからか、直線で手前を替える馬は珍しくないのだが、今回のサトノダイヤモンドは、苦しくなったから替えたように見えた。

 それでもラスト300メートル地点までは、おそらくルメールも余裕を持って勝てると思っていたはずだ。そこからゴールまで、伸び切って駆け抜けるために足りないものを、陣営は、本番までの3週間で補っていくことになるのだろう。

サトノダイヤモンドなら、馬場への対応力も高いはず。

 能力のあるサラブレッドは学習能力が高い。サトノダイヤモンドなら、こうした緩い馬場でも、エネルギーをロスせず、ゆっくりと走りながら最後に瞬発力を発揮するための体の使い方を習得できるはずだ。そのために一発勝負ではなく、前哨戦を使う中期滞在の戦術をとっているわけだから、巻き返しに期待したい。

 この日、シャンティーでは凱旋門賞の前哨戦がもう2つ行われた。

 キズナが2013年、マカヒキが昨年制した3歳馬限定のニエル賞を勝ったのは、ランフランコ・デットーリが騎乗したクラックスマンだった。

 そして、牝馬限定のヴェルメイユ賞は、ピエール・ブドーが手綱をとったバティールが制した。

トレヴクラスの大本命が君臨する今年の凱旋門賞。

 今年の凱旋門賞の本命と目されているのは、GI4連勝中の女傑、イギリスのエネイブル(牝3歳、父ナサニエル、ジョン・ゴスデン厩舎)だ。その4連勝で2着馬につけた平均着差が5馬身。それには、古馬の牡馬を蹴散らしたキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスも含まれている。土砂降りのなか、タフな馬場コンディションで行われたキングジョージを圧勝したこの馬に、ほとんど死角はないように思われる。

 池江調教師が管理したオルフェーヴルは2012、2013年と2年連続2着となり、2度とも牝馬に敗れた。特に’13年の勝ち馬トレヴはとてつもない強さだったのだが、エネイブルは、その域に達しているか、上を行くスケールかもしれない。

 そんな「化け物」でも絶対に勝てるとは限らないのが競馬というスポーツだし、さらに上のパフォーマンスを発揮する馬がいても不思議ではないのが凱旋門賞という世界最高峰の舞台だ。

 疑いなく世界トップレベルにある日本の競馬でこれだけの実績を残してきたサトノダイヤモンドにも、もちろんその頂点に立つ資格と可能性がある。

 凱旋門賞仕様の走りをマスターしたこの馬の姿を、10月1日に見せてほしいと思う。

text by 島田明宏
「沸騰! 日本サラブ列島」

(更新日:2017年9月14日)

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