二塁を守りつつマイコラスを一喝!巨人マギーは成績以上の助っ人だ。
二塁を守りつつマイコラスを一喝!巨人マギーは成績以上の助っ人だ。
 その昔、巨人にレジー・スミスという助っ人外国人選手がいた。


大リーグ経験のある川崎宗則と二塁上で談笑するマギー。その人間性は、巨人にも好影響を与えている。 (photograph by Takuya Sugiyama)

 その昔、巨人にレジー・スミスという助っ人外国人選手がいた。

 ロサンゼルス・ドジャースやサンフランシスコ・ジャイアンツなどメジャー4球団で17年間プレーした左右両打ちの外野手で、通算314本塁打はスイッチヒッターではメジャー歴代5位の数字を誇る強打者だった。

 そのスミスが巨人と契約したのは1982年オフ、藤田元司監督の時代だった。

 すでに37歳。両膝に肩も故障して満身創痍だったが、それでも勝負強さは抜群。好調時には4番を任されることもしばしばあった。

 1年目の’83年の西武との日本シリーズ第3戦では、1点を追う9回2死一、二塁で当時の王貞治助監督から「ヒットでいいからレフトに流せ」とアドバイスを受けた。しかし、それが元メジャーリーガーのプライドに火をつけたのか、東尾修投手の外角シュートを強引に引っ張ってセンター前に同点タイムリーを放ったというエピソードも残っている。

あのクロマティが直立不動になる存在感。

 ’84年には広尾の自宅から地下鉄を乗り継いで後楽園球場に通勤する途中、後楽園駅でその日対戦する阪神ファンに取り囲まれる騒動になった。人種差別的な野次を受けて小競り合いとなり、息子のレジー・ジュニアを守るために十数人を相手に殴り合いを演じて逮捕された(のちに起訴猶予)武勇伝もある。

「ただ普段のレジーは物静かな紳士で、野球に関してはプライドの塊のような選手だった。身体はボロボロだったけど、必死でプレーして、メジャーの野球をジャイアンツの選手たちに教える先生のようだった」

 当時、取材していた先輩記者からは、こんな人物評を聞いたことがある。

 2年目にはバリバリの現役メジャーリーガーだったウォーレン・クロマティ外野手が入団。1年目から打率2割8分、35本塁打と活躍を見せた。いきなりの活躍に日本の野球をバカにしたような態度を見せるクロマティーだったが、大リーガーとして格上のスミスから注意を受けると「イエス、サー!」と直立不動で従っていたという。

物静かだが迫力あるレジー先生とかぶる男。

「クロマティーもすごいバッターだったけど、レジーの方が遥かに本物の大リーガーという品格のある選手だった」

 こう振り返った当時のチームメイトの原辰徳前巨人監督も、こんな話をしている。

「バッターというのはとにかくバットを振らなければ始まらない。打席に立ったら弱気になるな。スイング・ファースト。まずバットを振るという意思を強く持て。レジーからはそういう心構えを教わった」

 物静かだったが、どこか他を圧する迫力がある。そういう助っ人だったのである。

 そんなレジー先生の姿とかぶる選手が、今の巨人を引っ張っている。

 ケーシー・マギー内野手である。

マギーが「2番・二塁」定着以降の勝率は6割超。

 球団史上ワーストの13連敗を喫した今季の巨人が、巻き返しに転じたのは7月12日のヤクルト戦だった、というのはほぼ意見の一致するところだろう。

 この日、高橋由伸監督は初めてマギーを「2番・二塁」に起用。これを転機にそれまで37勝44敗で勝率4割5分7厘だったチームは、以降の42試合を25勝16敗1分けの勝率6割1分と巻き返してAクラス争いを演じるところまで盛り返した。

 その間の42試合でマギーは166打数59安打の打率3割5分5厘をマーク。シーズントータルでも打率3割1分8厘で首位打者争いを演じている。

 ケガをしない。ちょっとやそっとでは「休む」と言わない。そういう選手としての強さがマギーにはある。

 4年前に楽天でプレーしたときも、144試合全試合に出場して、打率2割9分2厘、28本塁打で93打点をマークしている。

 今季は7月に打撃不振から6試合先発を外れたことがあったが、12日に「2番・二塁」で復帰すると、以降の試合には全てスタメンで出場を果たしている。

「オレは一塁手でも三塁手でもなく野球選手」

「頭がいい。楽天時代の経験もあるし、セ・リーグの投手に慣れてきて、配球をきちっと読んで狙い球を絞れている。基本はセンター中心に打ち返すことを意識したバッティングだけど、状況に応じて引っ張れるし、文句のつけようがない」

 こう語るのは村田真一ヘッドコーチだ。

 豪快なスイングで一発を狙うタイプではない。すでにチーム新記録となる42二塁打が示すように、どちらかといえば右中間、左中間を破るライナー性の打球を量産するタイプで、当初は長打力不足を指摘する声もあった。

 しかしデータをきちっと頭に入れて、場合によっては追い込まれても、ヤマを張って思い切って振っていくような大胆さもある。

「打順は気にせずにいつも通りのバッティングをしているし、2番を特別に意識することはない。それに打順が一巡すれば同じだからね」

 1番に入った陽岱鋼外野手とこのマギーが攻撃的2番打者として機能したことが、チームの巻き返しの起爆剤になったのは誰もが認めるところである。そうして不安視された二塁守備も無難にこなす。

「オレは一塁手でも三塁手でもなく野球選手なんだ。だから最善を尽くすのは当たり前のことだと思っている」

「とにかく野球に取り組む姿勢が真面目やね」

 首脳陣から可能性を伝えられると、起用される前から空き時間を見つけては自主的に二塁の守備練習に励む姿があった。

 三塁とは全く逆の動きになる二塁に入って、当初は戸惑いがあったかもしれない。しかし、練習を繰り返して、今は問題なくこなしている。

「とにかく一番いいのは、責任感があって、野球に取り組む姿勢が真面目なところやね」

 村田ヘッドコーチの評価である。

 マギーの価値とは、単に打つ、守るということだけにない。自分のプレーにプライドを持って、それをグラウンドで示そうとしている。そこがレジー先生を彷彿させるところなのである。

判定に不満のマイコラスに「ガタガタ言うな!」

 レジー先生がクロマティを一喝したように、マイルズ・マイコラス投手がマウンド上で審判の判定に不満を爆発させたときに、マギーもマイコラスを一喝したことがあった。

「ガタガタ言ってないで、いいから早く投げろ!」

 マギーからそう言われると、マイコラスもさすがにシュンとなって、それ以降はマウンドでイライラした態度をあまり見せなくなったという。それが8月4勝で月間MVPに輝く、安定した成績につながったとも言えるかもしれない。

「とにかく安定して出場して、大事なところでいい仕事をしてくれる」

 高橋監督のマギー評だ。

 数字もいいが、数字以上にチームにプラスの影響をもたらす。

 それがマギーという選手の価値である。

text by 鷲田康
「プロ野球亭日乗」

(更新日:2017年9月12日)

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