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キャッシュレス決済で世界が再注目する「QRコード」、実は日本のあの企業が開発したって知ってた?

ダ・ヴィンチNEWS

『QRコードの奇跡 モノづくり集団の発想転換が革新を生んだ』(小川進/東洋経済新報社)

 店で買い物をする際、現金を使う機会がめっきり減った。言わずもがな、キャッシュレス決済の影響だ。クレジットカードはまだ使える場所が限られているが、QRコードを利用した決済サービスは、コストの低さから爆発的に普及が進んでいる。とはいえ、このQRコードはもともと決済のために開発された技術ではない。航空機のチケットや、Webページの閲覧など、私たちの生活のいろいろな場面で登場する。その源流はどこにあるのだろうか?
 
『QRコードの奇跡 モノづくり集団の発想転換が革新を生んだ』(小川進/東洋経済新報社)は、なんと50年も前にさかのぼり、QRコードがたどってきた数奇な運命を解き明かす。この技術を開発したのは、トヨタの関連会社であるデンソーだ。1970年代、トヨタの「かんばん方式」をデジタル化するところから物語は始まる――。

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源流はトヨタの「かんばん方式」にあり

 QRコードの源流となるバーコード(NDコード)は、トヨタの「かんばん方式」に対応するために生まれた。これは、生産工程で工程間ロスを最少にするために開発された仕組みのひとつだが、1970年代、トヨタに自動車部品を納めるデンソーは、その管理方法に悩まされていた。製品が売れるたびに前工程に「かんばん」を回して部品を発注するため、部品メーカーは高頻度で納品しなくてはならない。そのため、伝票の管理が非常に煩雑になってしまう。

 デンソーは、「かんばん」の情報をデジタル化するために、バーコードと読取機の開発を行った。油まみれの状態でも読めるデンソーの技術は、大量の製品を管理するセブン-イレブンなどにも採用される。そのNDコードよりもさらに情報量を増やし、読み取りやすいデザインにしたのが今のQRコード。特徴的な模様は、世界中の印刷物を分析した結果、活字と区別しやすい黄金パターンなのだという。

オープンソース化でさまざまな企業が活用

 デンソーの企業努力によって、多くの情報を持ちながら読み取りやすいQRコードが誕生した。しかし、技術が優れているからといって必ずしもすぐ普及するわけではない。先代のNDコードは、特許を取得しライセンス料を受けとる方式にしたため、トヨタグループ以外にはなかなか普及しなかった。そこで、デンソーは特許の権利行使をせず、コードを公開するオープンソース化に踏み切る。

 すると、多くの企業がQRコードの活用に手を挙げるようになった。例えば、携帯電話メーカーは、カメラでQRコードを読み取り、Webサイトに接続する使い道を考案。これが今日のスマホにも受け継がれており、キャッシュレス決済の核となっているのだ。

 本書は、デンソー社員への綿密な取材によって作られている。まるで池井戸潤の企業小説のように、純粋に読み物としても楽しめる。その一方で、神戸大学教授の小川進氏が著者であるから、イノベーションの事例としても非常に示唆に富む内容となっている。QRコードは、先を見通す天才経営者の大号令ではなく、現場の努力と、たくさんの協力企業のアイデアによってここまで発展した。そのルーツから学べることは多いはずだ。

文=中川凌(@ryo_nakagawa_7)

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