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少子化による人口減少はチャンス!? 次世代が先を生きる世代より豊かになるために

ダ・ヴィンチNEWS

、『子供が消えゆく国(日経プレミアシリーズ)』(藤波匠/日本経済新聞出版)

 オリンピックの延期、終わりが見えないコロナ禍…日本の未来に明るい希望がもてない中で、心底疲れ果てた人は少なくないだろう。コロナの流行が終息しても、数年来いわれ続けてきた人口減少問題がある。希望がもてるニュースはどこにあるのか。

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「ピンチはチャンス」という言葉は安易に使われがちだが、心が沈んでいる人にとっては無責任で苛立たしい言葉にも捉えられる。「人口減はむしろチャンス」といっても腑に落ちない人が大半だろう。しかし、ここに論理や根拠が伴っていれば、見方が変わる。

「人口減はむしろチャンス」、今後の歩み方次第では日本がゆるやかに成長していけると述べるのは、『子供が消えゆく国(日経プレミアシリーズ)』(藤波匠/日本経済新聞出版)。

 先にネガティブな情報を出しておく。本書は冒頭で、出生数減少のペースが一気に早まっていることに触れている。ソースは日経新聞の記事。2019年の1月から7月までの出生数は、前年比で5.9%も減少した。この数値は、ベビーブームが終焉したときと同水準。ベビーブーム時とは違い、出生数がひたすら緩やかに下がり続ける中での急な減少は、衝撃をもって報じられた。

 そんな危機的状況にあっても、本書は「人口減はむしろチャンス」と言い切る。その論理や根拠はどこにあるのか。

 ひとつは、日本が低失業率であること(※本書発売時)。日本は意外にも、周知のとおり低成長にありながらも、世界的に見ると失業率が極めて低い。とりわけ、若い世代でこの傾向が顕著だという。通常、経済成長率が低下すれば失業率が上がり、雇用政策が最重要課題となる。しかし、日本は緩やかに出生数が下がり続けたことで、低成長にもかかわらず完全雇用に近い状態にある。そして、これからも生産年齢人口が減少し続ける。つまり、人手不足時代が確実に到来する、ということだ。人手不足時代の到来はすでにあちらこちらで叫ばれていることで、真新しさが感じられないだろうが、この状態は世界的に見て稀有なことで、これこそが逆境を跳ね返すチャンス。なぜなら、雇用の規模拡大を考慮することなく、生産性向上を徹底的に図ることができるからだ。具体的な方法としては、効率化に向けた設備投資やIT投資の実施をすべし、と本書は述べている。

 このときに必要となるのが、ITリテラシーに長けた若い世代。奇しくも、団塊世代、それに続く世代のリタイア期とも重なる。ITリテラシーを携えた若い世代への新陳代謝を図ることで、若い世代の生活が少しずつ豊かになる。これが繰り返されることで、日本全体が豊かになっていく、と本書は考えているのだ。

 希望を示すと同時に、いくつかの変革の必要性にも言及している。例えば、仕事の質より量に重きを置いた取り組みや考え方、環境を見直すこと。地域農業に目を向ければ、耕作放棄地を再生するために、若い新規就農者に次代の担い手としてその土地を任せることがあるが、耕作放棄地は生産性の低い農地であるため、若手にとっては荷が重いし、能力に見合っていない。介護現場では、人間同士のふれあいこそが介護の基本であるとして、介護ロボットの導入などテクノロジーの活用が遅れているところがある。こういった取り組みや考え方、環境を見直し、ITリテラシーに長けた若い世代が活躍できる環境を整える、いわば主役の座を後進に譲るような気持ちがベテラン世代に求められる。

 日本では長らく、官民双方が責任を放棄して、場当たり的な経済政策をとってきた。本書は今こそ、「次世代が、先を生きる世代よりも、少しずつでもいいから豊かになる」というビジョンを官民で共有し、推し進めるときだと述べている。

文=ルートつつみ

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