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トラックドライバーにも言わせて。在宅生活を支える物流網、そのウラの実態とは?

ダ・ヴィンチNEWS

『トラックドライバーにも言わせて』(橋本愛喜/新潮社)

 日本の物流は、日夜ひた走るトラックドライバーたちが支えている。しかし、実際の道路では邪魔者扱いされることもしばしば。強引な幅寄せや堂々と路駐など、公道上でとかく悪者にされ、批判されがちだ。
 
 だが、彼らには彼らなりの本音があるはず。そんな思いから手に取ったのが、元・トラックドライバーの著者による書籍『トラックドライバーにも言わせて』(橋本愛喜/新潮社)だ。本書を開くと、外出自粛が続く中でも私たちの日常生活を支え続けてくれている人びとの本当の世界に触れることができる。

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トラックドライバーが背負う「荷主第一主義」

 トラックドライバーの仕事は、とにかく過酷、と著者は語る。その背景にあるのは、彼らが背負う「荷主第一主義」のプレッシャー。ときには「会社からの指示以上に、現場で言われた荷主の要望を優先せざるをえないこともある」という。

 なかでも、彼らを悩ませるのが「荷待ち」の問題だ。荷待ちとは「積んでいる荷物を現場で降ろすまでの待機状態」を意味する。トラックドライバーは、現場に遅れて到着することも、早く到着することも許されない。

 その理由は、必要なものを必要なときに必要なだけ供給する「ジャスト・イン・タイム方式」が多くの産業で定着しているからで、トラックドライバーの多くは、現場近くの待機場所を考えて、時間調整せざるをえないのだ。

過積載を強いられるトラックドライバーも

 荷主第一主義は、たびたび問題視される「過積載」にもつながる。本来、過積載はドライバーだけではなく、運送業者や荷主も処罰されるおそれがあるが、何よりも、末端のドライバーが「誰よりも心に傷を負う」と著者は現状を憂う。

 実際、著者は取材により、現役のトラックドライバーから次のような声を聞いたという。

「積み場所にいくと、そこには10トン分の積み伝票の他に、もう一枚『ウン千キロ』と書かれた別伝票がありました。荷主に『積まなきゃ駄目か』と尋ねると、出来れば積んで欲しいとのことでした。会社に連絡したところ、管理者から『積め』との命令があり、荷主の指示通り積んで出発しました」

 この話を語ったドライバーの方は、のちに死亡事故を起こしてしまい免許停止になった。その後、会社と荷主が営業停止になり、他のドライバーからも「オマエのせいで生活出来ない」と罵倒されてしまったのだという…。

再配達はトラックドライバーの「首を絞めている」

 私たちの生活にごく身近な場面でも、トラックドライバーたちはつねに時間に追われている。背景にあるのは、今やおなじみのサービスである「時間帯指定」や「再配達」だ。

 なかでも再配達は「彼らの首を絞めている」と著者は指摘する。客の中には「寝起きの顔を見られたくない」「知らない人と家の前で対面したくない」といった驚きの理由で居留守を使う人もいるという。本書のデータによれば、宅配便の再配達率はじつに20%にものぼる。

 一方で、彼らの希望になっているのが、昨今浸透しつつある「置き配」だ。宅配便を直接受け取らずに自宅などへ届けてもらえるサービスだが、盗難防止策などの改善余地はあるものの、トラックドライバーにとっては再配達の負担が減り、荷物を受け取る側にとっても時間に縛られないメリットがある。

 外出自粛で通販利用が増えた今、著者が語る「『届いて当たり前』から『届けてもらっている』へ意識改革すること」は喫緊の問題だ。在宅を続けながら生活を続けられるありがたみは、コロナ禍で多くの人びとが味わっているはず。そこには多くのトラックドライバーたちの、目に見えない努力や苦労があるのだ。

文=カネコシュウヘイ

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