高橋・巨人、後半戦の鍵握る2番打者。山本泰寛と重信慎之介が競うが……。
高橋・巨人、後半戦の鍵握る2番打者。山本泰寛と重信慎之介が競うが……。
魔の13連敗に堤辰佳GMから鹿取義隆新GMへの交代劇など、激動となった巨人の前半戦。ただ、球宴直前の広島、阪神、ヤクルトとの9試合を7勝2敗で乗り切り4位に浮上。チームとしてのリズムを何とか取り戻しつつ、後半戦の巻き返しを図ることになる。

同期の山本と「2番打者」の席を競い合うこととなった重信。求められるのは「打撃」である。 (photograph by Kyodo News)

 魔の13連敗に堤辰佳GMから鹿取義隆新GMへの交代劇など、激動となった巨人の前半戦。ただ、球宴直前の広島、阪神、ヤクルトとの9試合を7勝2敗で乗り切り4位に浮上。チームとしてのリズムを何とか取り戻しつつ、後半戦の巻き返しを図ることになる。

 その前半戦最後となった東京ドームでのヤクルト戦で、高橋由伸監督は「2番・二塁」マギーという勝負手を打った。

 連敗中には打線の得点力不足解消のために、2番に坂本勇人内野手を起用するなど様々なオーダーの入れ替えを行ってきた。そうした一連の打線編成は、いわば緊急対策的なものでもあったが、このマギーの「2番・二塁」起用は、後半戦の戦い方の1つのオプションとして試されたものと言っていいだろう。

マギーを「2番・二塁」で使うというオプション。

 高橋監督がこのオーダーを決断した1つの理由には、この日の先発が今季未勝利の宮國椋丞投手だったことがあるはずだ。

 要は「1、2点を取りにいくのではなく5点、6点と大量点を取って宮國を援護する」超攻撃的打線を考えたわけである。決して日本的2番打者ではなく、安打を打つことを仕事とする2番として、監督はマギーを指名したわけだった。

「つなぐ意識を強く持つのではなく、いつも通りのアプローチで臨んだ」

 ここのところ状態がもうひとつで気分転換の意味もあり、もちろん本人もその辺の首脳陣の配慮もわかっている。結果として2番・マギーが3打数1安打2四死球と出塁したことで、打線が機能したのだから、指揮官の狙いはズバリと当たったわけである。

 後半戦での起用を聞かれた高橋監督は「それはそのときによってですかね」と含みをもたせた回答だった。

 マギーを「2番・二塁」で使うのは、阿部慎之助と村田修一両内野手と3人を同時に先発で使うときのオプションである。守備力はもちろん本職ではないが、それでもそこそこゴロの打球処理は無難にできるし、極端に下手ではない。ただ、例えば併殺をとれる場面でとれなかったりというリスクは生じるかもしれないし、それは覚悟の上である。

 それでもそういうマイナスを飲み込み、先発投手との兼ね合いで打ち合う野球をシミュレーションするケースでは、このオーダーは強力な選択肢となるはずなのである。

山本泰寛という「つなぎ」のスペシャリスト。

 高橋采配の1つの特徴は、先発投手でゲームプランを大きく変化させることにある。

 菅野智之、マイルズ・マイコラス、田口麗斗と防御率2点台の安定した先発投手が投げる試合では、序盤でいかにゲームの流れをつかむかが大きなポイントになる。采配もまず1点、まず先取点を狙う作戦となるのだ。

 1番の長野久義外野手が出塁すると、ほぼ送りバントで3番の坂本勇人内野手へとつなぐことになる。だからこの3人が先発するケースでは、マギーの「2番・二塁」での起用はほぼないはずなのだ。そういう試合で監督が求める2番の役割は「つなぎ」だからだ。

 そういう野球で力を発揮する2番打者とすれば、現時点では山本泰寛内野手が一番だろう。

巨人の選手では珍しい「ファウルを打てる技術」。

 山本はバントが上手い。ほぼ一発で送りバントを決められる。そこが大事でバントを一発で決めることで、初回の攻撃にリズムを作れる。

 それともうひとつ別の山本の能力が、巨人では珍しくファウルを打てる技術だ。

 開幕当初の巨人は1、2番を立岡宗一郎外野手と中井大介内野手で組むことが多かった。打撃の状態を見ながらこの2人を入れ替え、ときにはそこに橋本到外野手や石川慎吾外野手、辻東倫内野手が入ることもあった。

 こうした若手打者たちの物足りなさの1番の原因は、「打てなければ終わり」という打撃にあった。

「好投手を攻略するには失投を逃さずに打つ」というのはバッターの基本戦略である。3割前後を打てる実績のある打者であれば、そこに徹するのは1つの相手投手の攻略法である。

 その一方で日本ハムなどでは「先発投手にできるだけ球数を投げさせチームとして攻略する」というチームとしての戦略があり、例えば中島卓也内野手のような選手が高く評価される。

 ただ、巨人の若手打者はなかなかそういう打撃ができない(意識がない?)のが1つの弱点だった。

 その中で山本は打席で粘れる。

「後半戦の鍵を握る2番候補がいるとしたら……」

 山本は、追い込まれたり、一塁に走者がいるときにはポイントを近づけて右への打球を打てる。最低限でも粘って球数を投げさせようという意識を感じさせる打撃ができる、巨人では数少ない打者ということだ。

 そういう意味では後半戦のシビアな局面で、最も2番としての期待がかかるのがこの山本であることは間違いない。

「ただもう1人、後半戦の鍵を握る2番候補がいるとしたら、それは重信です」

 一方、これはある球団関係者の証言だ。

「もし重信が2番に定着できれば巨人の野球に革命が起きるかもしれない。それぐらいの能力があると高橋監督も首脳陣も評価している選手なんです」

 この話を聞いたとき、重信慎之介外野手の名前に実は少し意外な気持ちがした。前半戦では代走要員としての起用が多く、「2番打者」としては、まだ同期の山本にも置いていかれている感がある。

 確かに重信には並外れたスピードがある。そこに首脳陣はかなり大きな期待を抱いているということなのだろう。

 7月4日の広島戦では5月26日以来の「2番」で先発起用された。

 この試合では0対0の6回1死から右前安打で出塁すると、広島バッテリーの警戒の網をくぐって二盗に成功。そこから坂本の先制タイムリーを引き出している。

重信に必要とされる要素は「打撃」。

 重信が「2番」にはまれば、例えば初回に先頭打者が出塁した場合に、併殺のリスクが少ないばかりか、ゴロさえ転がせば内野安打の可能性もあるし、最悪は走者が入れ替わっても盗塁でバントと同じ1死二塁という状況を作れる可能性も少なくない。

 もちろん1点ずつというゲームプランはあるかもしれないが、重信が機能すれば簡単にアウトを与えず1死二塁、うまくすれば無死一、二塁や一、三塁を作ることもできるということだ。そういう意味ではこのスピードスターは「革命」を起こす潜在能力を秘めているというのにもうなずける。

 ただ、問題は肝心の打撃なのである。

 久々の広島戦を含めその後3試合に先発したが、合わせて12打数で2安打2四球3三振と結果を残せなかった。大学時代にはそれなりにパンチ力もあったが、プロの世界ではどういうスタイルを作り上げていくのか。

 そこが見えてきていないようでもある。

タイカッブ式のバットを試してみるのも……。

 これからどこまで打撃を磨いて足で安打を稼げるようになっていけるかが課題なのは明白だ。

 場合によっては同じタイプの元南海の藤原満内野手や元阪急の福本豊外野手、元巨人の松本匡史さんや元近鉄の大石大二郎内野手らが使った「ツチノコバット」「コケシバット」と呼ばれるタイカッブ式でヘッドの抜けが良くボールに当たり負けしないバットを試してみることも必要かもしれない。

 そうしてゴロを転がしファウルを打つ。打席で結果を残す……そこからしか重信は「革命」を起こせないはずなのである。

 ただ、開幕から懸案だった「2番」問題に、時間はかかったが少しずつ結論が見え始めているのが、巨人にとっては光でもある。

 クライマックスシリーズのファーストステージで菅野、マイコラス、田口で接戦を凌ぐ。そこでは2番は山本かもしれない。そしてファイナルステージの第1戦の先発は山口俊か、内海哲也か大竹寛か……。そのときには2番・マギーのオプションが打撃戦で威力を発揮するかもしれないし、ひょっとしたらその頃には重信が不動の2番となっているのかもしれない。

 いずれにしろ巨人の巻き返しの隠れたキーマンは、2番打者なのである。

text by 鷲田康
「プロ野球亭日乗」

(更新日:2017年7月17日)

Series シリーズ

Ranking/人気の記事(スポーツ)

dマーケットの「話題のドラマ・映画特集」

Pick up ピックアップ

人気キーワード

Category カテゴリー

HOME