ゲスの極み乙女。は復帰のタイミングで『影ソング』を出してきた
ゲスの極み乙女。は復帰のタイミングで『影ソング』を出してきた
ゲスの極み乙女。が復帰しています。このバンドについては、あらためて多くを説明する必要もないかもしれませんが、一応触れておきましょう。高い楽曲センスと演奏技術、バンド名のインパクトで人気を得て紅白歌合戦に出場。しかしボーカル川谷絵音のスキャンダルが発覚し、批判が殺到。ゲスの極み乙女。は、このスキャンダル以降活動自粛を余儀なくされました。
スキャンダルの詳細については、ここでは触れません。バンド名がゲスの極み乙女。であったがために、このスキャンダル絡みの言葉が流行語大賞にノミネートされるまでになりました。テレビでも何回も取り上げられ、罵詈雑言から擁護も含めネットでも様々な意見が出たことも、記憶に新しいですね。

ゲスの極み乙女。は、復帰のタイミングで『影ソング』を発表しました。復帰にこの曲をもってくる度胸は、さすがと言えるでしょう。この曲は、ネット上にあふれるアンチや罵詈雑言への皮肉になっているからです。

“影になったらニヤついて
光が差したら神妙に
声を止められた僕たちは
触ることもできない
おかしな話も本当になって
地を這って駆け巡る
潜ったら潜るだけ中心は逃げていく”


「影になったらニヤついて 光が差したら神妙に」冒頭から主題である「影」の単語が登場します。影でニヤついてコソコソと悪口を言っているような人ほど、光が差すような明るい場所では神妙な態度をとる。こういう人は、どこにでも存在します。『影ソング』の「影」が、影でニヤつくような態度を指していることを冒頭で示します。

「声を止められた僕たち」という、活動停止を指すフレーズが登場。あまりに荒れて活動停止に追い込まれると、自分達の意見を述べることすらできません。

「おかしな話も本当になって」メディアで、真実ではないことまで本当かのように語られる状況を歌詞にしています。

「潜ったら潜るだけ中心は逃げていく」というフレーズも、このバンドならでは。ゲスの極み乙女。は、過去に『デジタルモグラ』という曲を発表しています。デジタルの世界をモグラにたとえた『デジタルモグラ』のように、光のあたらない場所へ行けば行くほど、影になればなるほど、中心となるはずの人物や事象とはかけ離れていくことを歌詞にしています。

“日々のうのう
what you know?
何も知らないくせに出しゃばって
日々のうのう
what you want?
本当に品がないな君たちは
弱いから強がるんじゃない
弱ってるから強がるんだ目”


「日々のうのう」と暮らしているような人が「what you know?」=何を知っているというのか。「何も知らないくせにでしゃばって」批判ばかりして。「本当に品がないな君たちは」「君」は、品がない暴言を吐く人々を指します。曲自体が、アンチや罵詈雑言に対する批判になっているんですね。

“量り売りの言葉で傷付けて
まともだと思い込んでるだけ”


「量り売りの言葉で傷付けて」「まともだと思い込んでるだけ」というフレーズも登場。「量り売り」は、あらかじめ決めた分量をパッケージにするのではなく、客が求める量を量って売るスタイル。平気で人を傷付けることを言ってしまう人は、その場で量り売るように言葉を扱ってしまう。そして、そんな自分をまともだと思い込んでいる。

“正しいことが何なのかきっと誰にもわからない
間違ったことも気付かず正しいと思い込んでしまう
でも仕方がないと片付ける前に歌にして自分と共に省みる
ただ当たり前に生きないといけないから
信じるものに身体を預けるよ”


この曲の大事なポイントは、後半のこのあたりです。歌詞にもあるとおり、実際の正しいことが何なのかは、真相は誰にも分かりません。テレビ報道もネットも、より過剰に書くことで数字を欲してしまうからです。そして、情報にあふれている現代では、多くの人が間違ったことも正しいと思い込んでしまう。この曲は、このバンドや一連のスキャンダル報道だけでなく、現代人のあやうい思い込みを指摘します。

「歌にして自分と共に省みる」というフレーズにあるように、このバンドはこの現象そのものを歌にします。「省みる」という「反省」の文字が出現。この曲のMVでは、ラストで袋をかぶって顔を隠していた者の正体が、川谷絵音だったことが判明します。この表現からも、『影ソング』を発表してしまう自分自身もまた「影」を持つことを自覚しているのでしょう。この曲は、アンチに対する批判だけでなく、自身に対しての反省の念も込められているのです。終盤では「信じるものに身体を預けるよ」という音楽を続けていく意思を示します。

このバンドは、今後もずっと一連のスキャンダルをネタにアンチに叩かれ続けるでしょう。しかし、少なくともこういう曲を出せるぐらいには、このバンドにはまだ力がある。この国にまだ自由がある。その表現の自由が残されていたことは良かったと思います。その自由が新たなる「影」『影ソング』を生むものだったとしても。



改訂木魚(じゃぶけん東京本部)

(更新日:2017年7月16日)

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