五輪から除外間際だった競歩50km。IOCはなぜ種目を減らそうとするのか。
五輪から除外間際だった競歩50km。IOCはなぜ種目を減らそうとするのか。
 競歩の50kmのオリンピック、世界選手権での存続が決まった。 あらためて経緯を説明すると、「50km競歩」はロンドンで開催された国際陸上競技連盟の理事会で、オリンピック、世界選手権から除外するか否かについて議論されることになっていた。

荒井広宙がメダルをとったこともあり、日本国内での競歩の認知度は高い。存続はひとまず喜ばしいことだろう。 (photograph by JMPA)

 競歩の50kmのオリンピック、世界選手権での存続が決まった。

 あらためて経緯を説明すると、「50km競歩」はロンドンで開催された国際陸上競技連盟の理事会で、オリンピック、世界選手権から除外するか否かについて議論されることになっていた。もし除外された場合、2019年の世界選手権、そして2020年の東京五輪でも実施されないことになっていたから、競歩界にとって大きな成功であったと言える。

 50kmは、リオデジャネイロ五輪で荒井広宙が激しいデッドヒートの末に銅メダルを獲得したレースも記憶に新しい。また、1932年のロサンゼルス五輪で採用されて以来、1976年のモントリオール五輪を除き、実施されてきた伝統を誇っている。

 そもそも除外の可能性が出てきたのはなぜか。その背後には、国際オリンピック委員会(IOC)の存在がある。

過去には200m走や砲丸投げが除外検討されたことも。

 IOCは、競歩50kmの何を問題視したのか。

 その1つは、男女での実施の違いだ。競歩は20kmと50kmがオリンピックや世界選手権で行なわれているが、20kmは男女両方、50kmは男子のみだ。今回の除外では、その点を指摘されていた。

 また、ロシア勢のドーピング違反が発覚したほか、競技時間が長い、ルールの分かりにくさといった点もあげられたという。

 それを受けて今回、国際陸連の理事会で除外について議論された。最後は採決で存続が決定。理事会を前に、国内外の選手や関係者、ファンによるネットでの署名活動、メディアを通じてのアピールなど、存続へ向けての活動も行なわれていた。また、もともと伝統ある競技でもあるため、継続の重要性を認識している理事も多かったと見られる。

 今回は無事継続ということで、2020年の東京五輪でも実施されることになったが、存続・廃止の問題は、競歩にとどまる話ではない。

 実はこれまでにも、陸上種目の継続が問われたケースがある。3年前には、200m走、10000m走、砲丸投げの3種目を五輪種目から除外することが検討されていたと伝えられている。この3種目に加え、競歩20km、三段跳びも除外候補となっていたとも言われている。

大会規模を抑え、注目度を保つために。

 このうち、例えば200mと言えば、ウサイン・ボルトというスーパースターがいたように、多くの選手が脚光を浴びた種目だ。こうした人気種目も含め、除外が考えられた最大の理由は、陸上の種目数の多さ、つまりは参加人数の多さにある。

 IOCにしてみれば、参加者を絞りたい意向があるのだろうが、陸上関係者にとっては、先に記した200mも含めて寝耳に水という事態だったはずだ。それでも除外の検討対象になってしまうところに、IOCの強い意思がうかがえる。注目度の高い種目を残しながら、大会規模をいかにおさえるか。ひいてはビジネスとしてのチャンスを大きくするか、そんな狙いが常に見え隠れする。

 振り返れば、レスリングなども五輪からの除外問題に揺れたことが記憶に新しい。

 そう考えれば、全ての種目がIOCの査定に晒されているのが現状だ。時にはテレビ中継にあわせたルールの変更など、競技側の存続に向けた努力もなされているが、いたずらなルール変更は、歴史の断絶にもなりかねないし、競技の魅力を損なう可能性もある。

 改善すべきところは改善するにせよ、競技固有の魅力を損なう変更は避けなければならない。競技ひと筋に打ち込んできた選手の人生に、大きな影響を与えてしまうからだ。

 競歩の50kmの除外問題は、あらためてそんなことを考えさせる契機でもあった。

text by 松原孝臣
「オリンピックへの道」

(更新日:2017年4月18日)

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