掴めそうでつかめないチャットモンチー「シャングリラ」の世界観 そのヒントは童話にあった
掴めそうでつかめないチャットモンチー「シャングリラ」の世界観 そのヒントは童話にあった
2000年にリードボーカルの橋本絵莉子が中心となり結成されたバンド「チャットモンチー」

メンバーの入れ替わりを経験しながらも、チャットモンチーは躍進し続けた。2004年に徳島で行われたバンドコンテストではグランプリを受賞し、その注目度を上げた。

10年以上の長いキャリアを持つ彼女達だが、その活動の中では解散の危機もあったという。2011年に脱退したドラムの高橋久美子。脱退した彼女は、ももいろクローバーZへの楽曲提供やエッセイや絵本の発売などその活躍は甚だしい。

実は彼女がチャットモンチーから脱退する前に、すでに解散の危機があったという。周囲の期待と自分たちの気持ちが乖離していた。周囲は勢いのままにどんどんと大きくなるチャットモンチーを想像していた。その期待に応えようとすればするほど、バンドが分解してしまう恐れがあった。

「バンドは続けるだけが正しいことじゃない」そんな思いもよぎっていた最中、高橋久美子から脱退の申し出があったのだ。
結果、チャットモンチーは解散しなかった。さらにアクセルを踏み加速したのだ。その時の二人は半ばやけくそだったのかもしれない。いずれにしろ危機を乗り越えたチャットモンチーは、さらなるステージへと駆け上がったのだ。

ガールズバンドとして頭角を現し多くのファンを持つ彼女達は、現実的なようでどこか浮遊している、掴めそうでつかめない歌詞を書く。
サウンド面でもギターにドラム、ベースが一つのまとまった楽器として機能しているかのようなグルーブ感を持つ。エレキギターがかき鳴らされていたとしても、溶けそうになる甘い感覚を誘うのだ。

今回は彼女達の大ヒット曲「シャングリラ」からその世界観を見てみよう。






理想郷を意味するシャングリラだが、発音してみると音の響きがどこかコミカルである。意味と響きのギャップを持つ単語「シャングリラ」を主軸にチャットモンチーは世界を展開していく。
上記の歌詞を見るとシャングリラに問いかけていると分かる。仮にではあるが理想の男性の名前を「シャングリラ」としているのだ。掴み所のない不思議な世界観は彼女達のセンスある言葉のチョイスにより形成されているのだ。

さらに具体的に想像してみると、私たちの頭にはシャングリラという王子様に憧れるいたいけな少女が浮かぶ。その少女は、自分たちの住む場所から遠く離れた夢の国にいるのだ。
チャットモンチーの歌詞をなぞると、まるで童話を読んでいるような面持ちになる。ここにチャットモンチーの世界を紐解くヒントがあるはずだ。





連絡を取る手段である携帯電話を川に落としてしまう女の子。これでは、好きな男の人に連絡を取ることができない。理想をさらに遠のけてしまったちょっぴりドジな女の子を思わず応援したくなる。
そう、気がつけばリスナーはチャットモンチーが紡いだ物語(世界)にすでに迷いこんでしまっているのだ。





さらに物語は続く。上記のちっぽけな物とは携帯電話のことを指す。
携帯電話を失った少女は自由を感じる。チャットモンチーは、恋い焦がれる少女の心をなぞるだけではない。携帯電話に依存してしまっている人々に警鐘を鳴らす。

恋愛のみだけではなく、より心を豊かにするための彼女達なりの指針が示されているのだ。「胸を張って歩けよ 前を見て歩けよ 希望の光 なんてなくったっていいじゃないか」という歌詞が素直な気持ちを感じる大切さを思い起こさせてくれる。

少女の心を表現した名曲シャングリラから、一流のガールズバンド「チャットモンチー」は一流の作家であるとも理解できる。

彼女らが紡ぐストーリーに一度はまると抜け出せない。彼女達が創るのは、ただゆらゆらと揺れているだけの世界ではない。物語にはメッセージも込められている。
「より幸せな方へと進むように」その思いを込めてチャットモンチーは、鼓動のわずかな高鳴りさえも音楽で表現しているようだ。


TEXT:笹谷創(http://sasaworks1990.hatenablog.com/)
(更新日:2017年3月20日)

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