センバツに漂う“打高投低”の予感。清宮、安田以外の好選手を一挙紹介!
センバツに漂う“打高投低”の予感。清宮、安田以外の好選手を一挙紹介!
 3月19日に開幕する第89回選抜大会出場校を見て、今大会は“打高投低”になりそうだと思った。


屈託のない笑顔を浮かべる清宮。早実で一学年下の野村を含めて、今回の選抜では好打者が目白押しだ。 (photograph by Hideki Sugiyama)

 3月19日に開幕する第89回選抜大会出場校を見て、今大会は“打高投低”になりそうだと思った。2015、2016年の過去2年、勝利チームの得点が3点以内だった試合はともに11試合あり、これは“投高打低”を表している。逆に2012、2013年はそれぞれ7試合、5試合と少なく、“打高投低”を表している。

 その中で今大会は後者に近い傾向になると予測する。まず2016年11月に行われた秋の全国大会、明治神宮大会の戦い方から見ていこう。なお、学年は新学年で表記している。

 優勝候補筆頭は明治神宮大会優勝校、履正社だ。早稲田実業と激突した決勝では3回にドラフト1位候補、安田尚憲(3年、三塁手)が初球のストレートをレフトスタンドに放り込み3ラン、4回には7番・片山悠(3年、捕手)が3ランを放ち、一発攻勢の迫力が強く印象に残った。

 作戦面でも強気の姿勢が際立つ。1対1で迎えた3回は無死一塁で1番打者が、4対6と勝ち越された4回表は9番打者がいずれも打って出た。これが3回に3点、4回に7点を奪うビッグイニングの突破口となった。

履正社・若林、早実・野村の打力も注目に値する。

 安田の新チームになってからの公式戦成績は打率.420、本塁打4、打点22と3部門とも安定して高い。この安田を打率.452、打点24の両部門で凌いでいるのが4番若林将平(3年、左翼手)で、早実戦の4回表には内角低めをうまくさばいて三塁線を抜くタイムリーを放っている。

 履正社に敗れた早実もドラフト1位候補、清宮幸太郎(3年、一塁手)を擁しているだけあって強気だ。1対4でリードされた3回裏、無死二塁の場面で2番打者に強打させた。これがセカンドのエラーを誘い、続く清宮がタイムリーヒットを放つ。続く4番・野村大樹(2年、三塁手)の二塁打で二者が生還した。

 成績面も清宮だけが突出しているのではない。野村は本塁打こそ清宮の5本に1本及ばない4本だが、打率.459、打点18は清宮を凌いでいる(清宮は打率.412、本塁打5、打点14)。

強打とバントを使い分けるのが甲子園の勝てる戦術。

 また、両校の特徴としてバント戦術が挙げられる。これはかつての智辯和歌山の例でみるとわかりやすい。智辯和歌山は初出場した春の1985年、そして夏は’87年から’92年までに出場した計4回はいずれも甲子園で初戦敗退している。それが初勝利を挙げた’93年夏以降は驚異の勝率で突っ走り、高嶋仁監督は春、夏通算歴代ナンバーワンの63勝を挙げるほどになった。

 この高嶋監督は勝ち出した原因を「バントを多用するようになってから」と話す。

 勝てないときは後に控えるバッターが心許なかったため、バントより強打のサインを出したが、’93年以降は信頼できる打者が増え、走者を送ったほうが得点する確率が上がったので自然とバントが増えた、と言っている。

 履正社と早実は強打が目立つ一方で、智辯和歌山同様にバントもしっかり決める。明治神宮大会決勝に話を戻すと、履正社は0対1でリードされた2回表、早実は4対4とした3回裏、さらに6対11でリードを許した5回裏に走者をバントで送っている。一方に偏らず、あるときは強く打っていき、あるときは確実に得点圏に進めて、あとの打者に託す、甲子園の伝統的な戦術で勝ち進んできた。

山田哲人のようなタイミングで打つ静岡・稲角塁。

 その明治神宮大会で目立った打者は安田、清宮ら以外にもいる。初戦で早実に3対5で敗れた静岡で注目したのはクリーンアップの稲角塁(3年、一塁手)、成瀬和人(2年、左翼手)、小栁廉(3年、右翼手)の3人だ。

 一本足打法の稲角はゆったりしたタイミングの取り方が山田哲人(ヤクルト)によく似ている。また成瀬は第2打席、小栁は第1打席で火の出るようなセンター前ヒットを放ち素質の高さを証明した。

 宇部鴻城の4番、嶋谷将平(3年)は秋の公式戦打率.472も凄いが、遊撃手としての柔らかいフィールディングと強肩でも注目される存在。福岡大大濠の3番、古賀悠斗(3年、捕手)は明徳義塾戦で見せたイニング間1.88秒の強肩に魅了された。

 現代野球はプロ、アマに限らず、打者は走塁とディフェンスを含めた総合力で評価するのが当たり前になっている。嶋谷と古賀はもちろん、安田と清宮も走攻守の三拍子が揃っているタイプだ。

北関東勢、大阪桐蔭、報徳学園などにも好選手が!

 攻撃陣の迫力だけで見れば履正社、早実が抜け出ており、あとに続くのが福岡大大濠、静岡、仙台育英だが、明治神宮大会に出場しなかった中にも強豪校が散見できる。

 近年甲子園を席巻している北関東では前橋育英、健大高崎の群馬勢に勢いがあり、とくに健大高崎は伝統の機動力が今年も健在。昨秋の関東大会では、筆者が俊足の目安にしている打者走者の「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12秒未満」を明秀日立戦、横浜戦で4人(6回)が記録、計測した中では関東大会での最多だった。

 優勝候補の一角に名前が挙がるのが近畿大会ベスト4の大阪桐蔭だ。大阪大会、近畿大会では決勝戦を前に敗れたが、2年生の藤原恭大(中堅手)、根尾昂(右翼手)は入学時から逸材と騒がれていた選手で、順調に成長のステップを踏んでいる。

 報徳学園の遊撃手、小園海斗(2年)も注目選手だ。昨夏の兵庫大会2回戦で昨年のドラフトで阪神に3位指名された才木浩人(須磨翔風)からセンター前に強烈なヒットを放つなど、打者としても文句ない。そして、このセンター前ヒットのときの一塁到達タイムが4.18、4.20秒という俊足ぶりも見せた。クリーンヒットで4.3秒未満はプロでも数えるほどしかいない。

 昨年の優勝校、智弁学園は前チームでも中心打者だった太田英毅(遊撃手)、福元悠真(右翼手)の2人の3年生がチームを引っ張る。西浦颯大(3年、右翼手)がいる明徳義塾、昨年の春、夏ベスト4のチームから木本凌雅(3年、一塁手)、廣部就平(3年、三塁手)が残った秀岳館も打線の迫力では負けていない。

145キロ超えを期待できるピッチャーは計14人。

 投手はどうだろう。昨年の選抜では藤嶋健人(東邦)、高山優希(大阪桐蔭)、吉高壮(明石商)、高田萌生(創志学園)、吉川貴大(開星)が145キロ超えのストレートを披露したが、今年の大会で大台クリアが期待できる選手は次の14人だ。

 平松竜也(3年、盛岡大付)、長谷川拓帆(3年、仙台育英)、丸山和郁(3年、前橋育英)金久保優斗(3年、東海大市原望洋)、桜井周斗(3年、日大三)、池谷蒼大(3年、静岡)、竹田祐(3年、履正社)、徳山壮磨(3年、大阪桐蔭)、根尾昂(2年、大阪桐蔭)、松本竜也(3年、智弁学園)、三浦銀二(3年、福岡大大濠)、田浦文丸、川端健斗(ともに秀岳館)、山口翔(3年、熊本工)。

履正社・竹田は投手、打者ともに抜群の能力。

 金久保、竹田、山口はすでに140キロ台中盤を超え、根尾にいたっては中学3年時にストレートが146キロを計測、その動画は高校野球ファンの間に広く拡散している。その根尾が投手ではなく野手で起用されている。大阪桐蔭の選手層の厚さとともに根尾の野手としての才能を感じないわけにはいかない。

 安定感では履正社の竹田が頭一つ抜けている。早実戦では3回途中から登板、6回3分の1を被安打6、奪三振7、与四球3、与死球2の無失点に抑えた。清宮には四死球1つずつとキャッチャーフライ、野村には三振、左前打、四球と少々逃げ腰だったが、この試合で計測したストレートの最速は145キロで、カーブのキレと落差も一線級である。

 ちなみに竹田は打者としての能力も高く、早実戦では2点リードされた4回表、無死一塁の場面では打って出てセンター前に弾き返している。“センスがいい”“形がいい”など打者を形容する言葉は様々だが、打者・竹田を一言で言い表すなら「力が有り余っているスラッガー」である。

 組み合わせ抽選会は3月10日。それが決まるまでどこが上位に来るとか予想できないが、投打のバランスがいいのは履正社、大阪桐蔭、福岡大大濠の3校で、早実、健大高崎、静岡、智弁学園、秀岳館がそれに続くという分析になる。

text by 小関順二
「詳説日本野球研究」

(更新日:2017年2月15日)

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