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鈴木亮平の肉体には“実写ならでは”の魅力がある 『シティーハンター』は理想的な成功例に

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Netflix映画『シティーハンター』©北条司/コアミックス 1985

 Netflixで配信が開始された実写版『シティーハンター』が大評判だ。

参考:鈴木亮平×森田望智が『シティーハンター』実写版ハンマー誕生秘話を語る メイキング写真も

 配信開始の翌日には、「日本の今日の映画TOP10」1位を獲得。「日本の週間TOP10(映画)」でも2週連続1位に輝いたほか、「週間グローバルTOP10(非英語映画)」(4月22日~28日)でも初登場1位を記録。さらに、フランス、韓国、香港、ブラジル含む世界50の国と地域でも週間TOP10入りを果たしている。SNSでは原作をよく知る往年のファンから「圧倒的な再現度と面白さ」と絶賛が相次ぎ、原作未読の海外視聴者や若い世代からも「続きはないのか」「原作マンガやアニメを観たくなった」という声がたくさんあがっている。

 本作は、原作マンガの持つ世界観を逐一大事に描くことで往年のファンを納得させることに心を砕いた内容で、往年の『シティーハンター』ファンが楽しめることはもちろん、一本の映画作品として的確なアレンジを施し、原作を知らない人に『シティーハンター』の魅力を伝えることにも成功している。これは実写化の理想的成功例と言えるだろう。

 「実写化」という言葉が頻繁に使われるようになって久しい。しかし、「実写化」は何かと心配され、議論の的になり、時に大きな炎上もしてきた。だがここにきて、ようやく「実写化」は一つの壁を越えて、大きく花開こうとしている。昨今は『幽☆遊☆白書』や『ゴールデンカムイ』など国内から見事な実写化作品が登場しており、この『シティーハンター』もそれらに連なる作品と言える。何が本作を成功に導いたのか、考えてみたい。

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■実写に求められるリアリティラインの引き直し

 本作は、原作序盤の最も大きなエピソードであるエンジェルダスト編を巧みに構成し直して、新たな物語に仕立て上げている。ただそれだけに留まらず、『シティーハンター』で最も頻出するボディーガードの仕事風景も中盤に用意し見せ場としており、作品全体の持つ魅力を的確に詰め込んでいる。

 ストーリーだけでなく、衣装や小道具などあらゆる点で原作ファンをうならせる要素が大量だ。お馴染みのロングコートを華麗になびかせ銃を操る鈴木亮平の姿に、ファンは「確かに冴羽獠だ」と思うだろう。愛車の赤いミニクーパーも登場する。あの車が新宿の町を走っているだけでも原作ファンは泣けるのではないか。また、原作ファンには馴染み深い「トンボ」や「カラス」マークも、画面をくまなく見ると小道具の中に発見することができる。

 また、冴羽獠の住むアパートのレイアウトが原作準拠であるのも嬉しいポイントだろう。リビングも獠の寝室も、ほぼ原作を忠実に再現しているし、細かく見ていくと随所にファンには思い出深いアイテムが置かれている。アパート内の射撃場も登場し、ど真ん中を打ち抜き続けるピンホールショットも見せてくれる。原作ファンを喜ばせるトリビアは大量に隠されているので、何度観ても楽しいだろう。

 ただ、本作はそうした小ネタが多いから面白いのではない。映画としてしっかり完成度が高いから面白いのだ。マンガ実写化で作り手の頭を悩ませるのは、リアリティラインの設定だ。マンガでは、100トンの巨大ハンマーで殴られても次のページでピンピンしていても問題はないが、実写で同じことをやると上手くいかない。しかし、『シティーハンター』はハードボイルドなシリアスさとギャグが両立している作品なので、どちらの要素も外さずに生身の肉体で表現して違和感のないものとせねばならない。

 特に難しいのは、香のハンマーの扱いだっただろう。マンガならではの誇張表現として成立していた香のハンマーをどう実写空間に持ち込むか。そのままやったのでは作品のバランスを壊しかねない難題を、本作の制作陣は巧みな方法で自然に香にハンマーを持たせることに成功した。

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