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米国の社会的マイノリティに広がる「もしトラ」への強い不安とは?

週プレNEWS


3月のスーパーチューズデーでのトランプ氏の圧勝により、「もしトラ」から「ほぼトラ」へと潮目が変わったともいわれている
4月24日、自民党の麻生太郎副総裁が、米ニューヨークでトランプ前大統領と会談した。トランプ氏が今年の大統領選で返り咲きを果たす可能性を視野に、関係を強化する狙いがあるとみられている。

3月のスーパーチューズデーでのトランプ氏の圧勝を受け、「もしトラ」への警戒感が強まっている。それは、関税引き上げ、自動車・エネルギー産業の保護、米国第一主義など、トランプ氏の公約に関わる産業に従事する人々に限ったことではない。特にトランプ大統領再来に怯えているのが、社会的マイノリティに属する人々だ。

■分断の時代が再び!?

「パンデミック最中に、アジア人コミュニティに対するヘイトクライムが激増して、なんの罪もない沢山のアジア人が無差別に殴られたり、線路に突き落とされたり、殺されたりしたことは記憶に新しいと思います。特に狙われたのは、抵抗できない高齢の女性達でしたが、元を辿れば、トランプがコロナウイルスを『チャイナ・ウイルス』と呼んだことが発端です」

ニューヨーク在住のトランスジェンダー、サニー・モリサネ・シロマさんは、そう話す。彼女は、「もしトラ」が現実となった場合、自身も所属するLGBTQコミュニティをはじめとする社会的マイノリティが、再びヘイトクライムの矛先となるのではないかという不安を抱えている。

事実、2017年からのトランプ政権下で、アメリカ社会はLGBTQの人権を巡って大きく分断した。LGBTQの人権を擁護したオバマ政権と対照的に、エバンジェリカルズ(キリスト教福音派)から莫大な政治献金を得ていたトランプ大統領は、彼らの教義に沿うようにLGBTQに差別的な政策を展開した。例えばそれは軍への入隊の禁止や、性自認にもとづく保健医療上の差別を禁止する連邦法の弱体化などである。

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11月の大統領選に向けてトランプ氏が台頭する中、彼女が危惧する事態はすでに現実のものとなりつつある。FBI(連邦捜査局)が発表した2023年度の報告書によると、性的自認を理由とするヘイトクライムの数は前年に比べ 32.9% 増加。米国のLGBTQの人権保護を提唱する団体「ヒューマン・ライツ・キャンペーン」は近年のヘイトクライムの急激な増加を受け、2023年6月にLGBTQの人々に対する国家非常事態を宣言している。


2023年に行われたLGBTQコミュニティの祭典「NYCプライド」の様子
そうした状況と相関し、彼らの精神衛生も脆弱な状態にあるようだ。

カルフォルニア大学ロサンゼルス校のウイリアムズ研究所による2023年の報告によれば、トランスジェンダーの81%が自殺を考えたことがあり、42%は未遂を経験しているという。衝撃的な数字である。

これは、日本社会にとっても対岸の火事ではない。日本社会はあらゆる面で米国の影響下にあるといっていい。米国でのLGBTQに対する憎悪や偏見の高まりが、日本にも波及することは容易に想像できる。

例えば、アメリカの保守派ニュース専門放送局であるFOXニュースは、前回の大統領戦でのトランプ敗選について「投票集計機が不正に操作された」と主張する報道を繰り返した。しかしFOXニュースはその後、集計機メーカーに名誉毀損で訴えられると、虚偽報道を行ったことを全面的に認め、7億8700万ドルの和解金を支払うことに合意した。

これは、米メディアを相手取った名誉毀損訴訟では過去最高の和解額だ。これにより、アメリカでは同放送局の信頼性は失墜したが、日本では今なおFOXニュースの報道を引用した記事やニュースが大量に拡散されている。

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