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BUMP OF CHICKEN「邂逅」歌詞の意味を考察!映画「陰陽師0」主題歌に込めた別離から見る愛の想いとは?

UtaTen

再び巡り合いたいあなたへ


1996年のデビュー以来進化を続ける人気バンドBUMP OF CHICKENが2024年4月15日に配信リリースした新曲『邂逅(かいこう)』は、山崎賢人主演映画『陰陽師0』の主題歌です。

『陰陽師0』は平安時代に実在した陰陽師・安倍晴明の活躍を描いた夢枕獏のベストセラー小説「陰陽師」シリーズを原作に、晴明が陰陽師になる前の物語を描いた完全オリジナルストーリー。

呪術の天才と呼ばれていながらも陰陽師になる意欲や興味がない若き清明が、貴族の源博雅から皇族の徽子女王を襲う怪奇現象の解決を頼まれたところから物語は動き始めます。

主題歌である『邂逅』は、バンドとして約4ヶ月ぶりの新曲。

映画タイアップ曲ということもあり、オリコンの「デイリー デジタルシングル(単曲)ランキング」で初登場1位を獲得するなど、情報解禁されてから音楽・映画ファン共に大きな注目を集めています。

▲BUMP OF CHICKEN-邂逅(かいこう)【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

物語を盛り上げる壮大なスケールと展開が魅力のサウンドと藤原基央の力強い歌声が作り出す世界観に引き込まれるでしょう。

タイトルの「邂逅」は思いがけない出会いや巡り合いの意味を持つ言葉です。

どのような想いが歌われているのか、さっそく歌詞の意味を考察していきましょう。



主人公の視線の先では夜空に黒く染められた水面に月が映り込み、神秘的な「白銀の道」が引かれたような光景が広がっています。

これは現実には決して渡ることのできない道であることから、死後の世界へ続く道と解釈できるでしょう。

そうふまえた上で主人公が「いつかこの足で渡っていく 必ずもう一度逢える」と考えている点に注目すると、大切な人が亡くなっている状況と読み取れます。

愛する人との死別は残された人に大きな喪失感と悲しみを及ぼすため、主人公はショックがあまりに大きすぎて周囲の音が何も聞こえなくなってしまっているようです。

そんな中でも、大切な人の声だけは強く記憶に残っていて度々思い出されます。

火の粉は炎から飛び出した小さなものですが、落ちた場所の周囲を焦がしてしまいます。

同じように今は亡き愛する人の声も主人公の心にこびりつき「静かに焦がす」ように胸の奥を熱くしていることが分かるでしょう。

他者と交わらない主人公は冷淡さと情熱の両方を秘めた自分自身を「静寂のけだもの」と表現し、大切な存在を失った人生を「息をするだけのかたまり」になったような気分でただ生きていることを明かしています。

今だけ子供でいさせてほしい





独りぼっちの現実を見ては「私を孤独にするのは何故」と問いかけ、まだあらゆる場所にその人の気配を感じては「離れたとも思えないのは何故」と語りかける主人公。

失ってぽっかり空いた心の穴は他の誰にも埋められないのに「あなたのいない未来を生きろ」と謳います。

おそらく別れの前に本人から言われた言葉を思い返しているのでしょう。

本来「生きろ」という願いは前向きで相手を想うものですが、時に残酷に人の心を縛ることもあるのでしょう。

この主人公も愛する人の存在によって人生に意義を見出していたために、その願いを叶えたい気持ちと追いかけたい気持ちの間で揺れ動いていると解釈できます。

前に進むためには、泣いてばかりいるわけにはいきません。

だから「今だけ子供でいさせてほしい」と、純粋に死を悲しみ泣くことを許してくれるよう懇願します。

続く部分に出てくる「星空」は死者を表していると思われます。

そのため「夜明けが星空を迎えに来たら」という表現は、朝が来て星が見えなくなるように大切な人が死によって消えてしまった後、その死を受け入れた時のことと考察できます。

悲しく苦しい出来事ですが、受け入れられた時には過去の選択によって生まれた未来をしっかり歩むから、今だけはただ泣かせてくれと言っているようです。



ここではふと吹いてきた風に目を閉じ微睡んでいる様子がわかります。

これは実際の出来事というよりも、現実逃避していることを表しているのではないでしょうか。

主人公は、泡沫のように消えていく命をいくつも見送り心が疲弊していき、眠ったまま幸せな夢の中に落ちてそこに居続けられたらいいのにと考えているようです。

自棄になり「捨ててばかり」になった耳の奥に時折いつかかけられた声が思い出され、心に痛みを与えます。

とはいえ痛いと感じることは生きている証拠のため、心の痛みは主人公を一歩前進させるための力ともなっているのでしょう。

「微睡みかけた目を覚ますように」現実と向き合い、やがて笑顔が作れるようになります。



それでも悲しみは簡単には消えず、主人公は「そばにいて」「消えないで」と願います。

孤独を抱えており、自分の存在価値や愛される温もりを感じたいと思っていることがこの歌詞のフレーズから読み取れますね。

自分の中に住む「静寂のけだもの」が「嘲るように唸る」のを感じ、人生について思い悩みます。

「命は譲らずに」とあることから愛する人を追いかけて死を選ぶことはやめたようですが、未だ「息をするだけのかたまり」のまま何とか生きていることが窺えますね。

埋まらない心の穴と共にあなたのいない未来を生きる





再会する時が来たら感謝を伝えたいと思っています。

その一方で、なぜ「ありがとう」と伝えたいのかと考え始めているようです。

おそらくその頭の中では、相手から向けられた優しさや愛情を感じるあらゆる場面が思い出されていることでしょう。

自分を孤独にして苦しめていると思いながらも、それ以上に与えてくれたもの全てに感謝があふれていきます。

この先の「あなたのいない未来」には、二度と同じ温もりを得ることはできません。

しかし、心を焦がす声は過去に縋らず人との繋がりを持つようにと語りかけ、他者からの愛を受け入れて生きるよう促してきます。



涙を連れていけないと考えていた主人公は、ここで「涙はついてきてくれる」と言っています。

涙は悲しい時やつらい時に、その人の心に常に寄り添っているものです。

「死ぬまで埋まらない心の穴」を自覚すると、泣くまいと思っても涙があふれてきます。

そして同時に愛があふれ、「あなたのいない未来を生きろ」と主人公を鼓舞してくるのでしょう。

涙は弱さの象徴ではなく、相手を想う温かな愛の象徴だと表現されているように感じます。



きっと主人公は、隣にはいられないとしても記憶の中で「そばにいて」「消えないで」と願い続けています。

熱い太陽の下にいても、孤独によって心は凍えそうなほどです。

それでも、未来を生きてほしいという遺された想いを大切に思っています。

いつか自分が死ぬ時がきたら、それは愛する人との再会の時です。

冒頭と同じフレーズでありながら、ここでは「必ずもう一度逢える」から「いつかこの足で渡っていく」までは懸命に生きようと覚悟を決めた様子が伝わってきます。

「邂逅」は深い愛を感じる巡り合いの歌!


BUMP OF CHICKENの『邂逅』は、別離という悲しい出来事に焦点を当てて邂逅の奇跡や尊さを表現した楽曲でした。

愛する人との別れによって感じる苦しみは耐え難いものですが、この楽曲を聴くとその気持ちが認められそっと寄り添ってくれるような穏やかさを感じさせます。

映画のストーリーとどのように交わるのかにも注目しながら、歌詞やメロディに込められたメッセージを感じてください。
 
   

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