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『虎に翼』“チェ・ヒャンスク”として最後の笑顔 苦楽をともにした“魔女5”の心苦しい別れ

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『虎に翼』写真提供=NHK

 『虎に翼』(NHK総合)第28話で、寅子(伊藤沙莉)たちは香淑(ハ・ヨンス)との思い出作りのため、海にやってきた。海辺はどんよりとしており、思わず寅子は「ごめんなさい。思っていた景色と違っていた」と口にする。

参考:『虎に翼』第29話、高等試験にいなかった梅子(平岩紙)から寅子(伊藤沙莉)へ手紙が

 そんな中、香淑は嬉しそうな面持ちで寅子たちとともに海辺を歩いていた。その表情に、仲間たちの温かみに触れた香淑の胸中が感じ取れる。「考えてみたら、私たちっていつも思ってたのと違う方へ行ってるなって」という寅子の言葉に、梅子(平岩紙)や涼子(桜井ユキ)、よね(土居志央梨)がこれまでの思い出を振り返る中、香淑が笑顔でこう言った。

「でも、どれも最後はいい方に流れて……今日もきっとそうなります」

 ハ・ヨンス演じる香淑は、物静かだが芯のある性格と人懐っこい笑顔が印象的だ。時代の逆風に晒されながらも、健気に学び続けた香淑の強さを、ハ・ヨンスは心に残る親しげな笑顔と実直な佇まいによって見せてくれた。香淑が日本で勉強を続けるのが困難になるほど、朝鮮半島から来た人々はつらく苦しい立場に置かれている。

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 しかし香淑は寅子たちの前でなら、身を固くすることなく、母国での自分の名前を伝えることができる。香淑は砂浜に自らの名前を書いて、普段通りの面持ちで「チェ・ヒャンスク(崔香淑)と読みます」と言った。「ヒャンちゃん」という新しい愛称に、とびっきりの明るい笑顔を見せた香淑。涙が込み上げてくるのを抑えながら、別れの時間を楽しむ姿が胸に響いた。

 第28話で高等試験を断念することになるのは香淑だけではない。涼子の父・侑次郎(中村育二)が芸者と駆け落ちしたことが判明。涼子は桜川家を途絶えさせないために男爵家の子息と婚約することに決めた。ともに励んできた涼子の決断に納得がいかないよねは「お前はそれでいいのかよ?」「お前がやってきたことはワガママなのか? 違うだろ!」と強く問い詰める。唇を噛み締め、涙を堪えながら、よねの言葉を受け止めた涼子が言った「よねさんみたいに強くなりたかった」という言葉に胸が締め付けられる。

 涼子は、自暴自棄になり、酒に溺れる母・寿子(筒井真理子)を見捨てることができなかった。母を抱きしめる涼子の涙には、道半ばで高等試験を諦めることになった悔しさも、母を守りたい気持ちも感じられ、心苦しかった。

 物語の終わり、香淑、涼子の思いを背負って高等試験に臨む寅子たちだが、梅子の姿が会場にない。第28話は、夫・徹男(飯田基祐)に離婚届を突きつけられた梅子が少しやつれた表情で海を眺める姿が映し出され、幕引きとなった。試験会場に現れなかった梅子が下した決断が気になるところだ。
(文=片山香帆)

 
   

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