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『虎に翼』ハ・ヨンス“香淑”の“やるべきこと”の真意 寅子と花岡の関係にも変化が?

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『虎に翼』写真提供=NHK

 女子部新入生募集の停止を決定した学長(久保酎吉)に頭を下げた結果、女子部の誰かが高等試験に合格すれば募集が再開されることとなり喜ぶ寅子(伊藤沙莉)たち。だが、男女差別が現在よりも顕著な昭和10年代において、女性が試験を突破するのは簡単ではない。ここからが本当に厳しい戦いが待ち受けている。『虎に翼』(NHK総合)第27話では香淑(ハ・ヨンス)が寅子たちに特高に目をつけられていたことを明かす。

参考:明日の第28話では、香淑(ハ・ヨンス)に続いて涼子(桜井ユキ)も試験を辞退することに

「長年にわたって染み付いたものを変えるというのは容易ではない。当たり前だと思っていた法律が、習慣、価値観が間違っていると分かっていても受け入れられない、変えられないのが人間だ。それでもそれを我々は引き剥がし溶かし、少しずつでも新しく上塗りしていくしかない」

 昭和13年(1938年)3月、寅子たちは明律大学の卒業式を迎える。穂高(小林薫)は卒業を迎えた寅子たちへ卒業の祝福ともに、法学を学ぶものとしての心得を説いた。その言葉は法学を学んでいない筆者にとっても、胸に響いてくるものがあった。穂高の言葉にまっすぐ耳を傾ける寅子たちのまなざしはとても頼もしい。

 明律大学を卒業した寅子は、共亜事件の弁護士の一人だった雲野六郎(塚地武雅)の事務所で働きながら、試験に向けて勉強を続けていくことになる。卒業後もよね(土居志央梨)や涼子(桜井ユキ)たちとは時々勉強会を開いて集まっており、香淑はお馴染みの竹もとで住み込みで働きながら勉強していた。

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 一方で、花岡(岩田剛典)は司法官試補として裁判官になるための実務修習中で、寅子とは頻繁にお昼をともにする関係性となっていた。新たに桂場(松山ケンイチ)の下についていた花岡に対し、寅子は過去に桂場から「裁判官になりたいのか?」と聞かれたことを明かすと、花岡は「やっぱりすごいな、猪爪は」と感心する。花岡は桂場から「裁判官向きじゃない」とキッパリ言われていたのだ。当時の女性には裁判官になる資格は与えられておらず、裁判官になるためには戦後を待たなければいけない。女性は裁判官になれないと言われた寅子の表情はスッキリしていないようも見えた。 

 ある日、竹もとに集まって勉強会を開いていた寅子たちのもとに突然特高が押しかけてくる。すでに朝鮮に帰国していた香淑の兄・潤哲(ユン・ソンモ)だったが、朝鮮では治安維持法に反する労働争議に加担し姿をくらましているのだという。香淑にとって潤哲は日本に呼んでくれた人物。日本では文芸誌の編集として働いていたが、同じ出版社で働いていた朝鮮人が反体制思想の集会に参加していたことが発覚し捕まったことから、潤哲と香淑にもその疑いがかけられていた。これも全ては前年に始まった日中戦争の影響だ。戦争へと傾いていく日本において朝鮮人の香淑は日本に居続けるのはかなり厳しい状況となっていた。

 潤哲は「一緒に帰らないか」と香淑を誘うが、香淑は「やるべきことがあるから」と朝鮮に帰ることを断っていた。やるべきこととは寅子たちと一緒に高等試験に合格することを意味するのかと思っていたが、その真意は違っていた。「みんなの試験を見届けて、それから国に帰るつもりでした」とみんなに頭を下げる香淑。彼女は寅子たちと、これからの女子部のために少しでも役に立ちたいと、勉強を続けていたのだ。

 だが、よねも言うように香淑が帰国するタイミングは今しかない。これを逃してしまえば、日本は戦争へと突入し、状況は悪化していくばかり。本来であれば香淑も一緒に試験に合格する瞬間を見届けたいものだが、今は何よりも香淑の安全が最優先だ。無事に帰国できることを願いたい。
(文=川崎龍也)

 
   

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