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『虎に翼』もついに戦争の時代へ 女子/男子が平等のため共に“土下座”することの意味

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『虎に翼』写真提供=NHK

 1年半に及ぶ裁判の結果、直言(岡部たかし)をはじめ共亜事件の被告人全員の無罪が確定。猪爪家にようやく平穏が戻った。

参考:『虎に翼』第27話、香淑(ハ・ヨンス)が特高に目を付けられていたことを明かす

 その半年後、名律大学法学部の最終学年となった寅子(伊藤沙莉)は、ともに勉学に励んできたよね(土居志央梨)、涼子(桜井ユキ)、梅子(平岩紙)、香淑(ハ・ヨンス)とともに、司法試験の前身となる高等試験司法科試験に臨む。だが、結果はそろって不合格。『虎に翼』(NHK総合)第26話では、そんな寅子たちに厳しい現実が立ちはだかった。

 寅子の不合格が決まり、猪爪家ではさっそく家族会議が開かれる。高等試験は狭き門とはいえ、寅子は「必ず一発で合格してみせる」と豪語した手前、はる(石田ゆり子)に顔向けできない。その隣で同じようにうなだれて座っている優三(仲野太賀)。「お察しの通り」というもはやお馴染みとなったナレーションで、優三の不合格が伝えられた。

 だが、昼は銀行で働いている優三とは違い、寅子は大学を卒業したら無職となる。今年で24歳となるため、「地獄から引き出すなら今しかない」とはるから諦めるように言われる寅子。追い詰められた状況ですかさずアシストするのは、帝都銀行を退職し、発煙筒や信号弾を作る会社の社長となった直言だ。

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 1年半もの間、寅子は穂高(小林薫)や仲間たちの力を借りながら直言を無罪にするために奔走した。それが少しも勉強に影響しなかったはずがないと、直言は寅子にもう一度チャンスを与えてもらえるよう、はるに頭を下げて頼み込む。女子部入学の件では「任せとけ」と言いながら、何もできなかった頼りない父の珍しく必死な姿は効果てきめん。寅子は働きながらという条件付きで卒業しても勉強を続けることを許された。

 寅子たちの学年で一次の筆記試験に合格したのは、花岡(岩田剛典)と稲垣(松川尚瑠輝)の2人。女子部で通過したのは、OGの久保田(小林涼子)のみだ。それでも全滅を免れたと安堵する一同だったが、次の口述試験で久保田だけが不合格となる。「申し訳ない! 私の力不足だった!」と寅子たちに頭を下げる久保田。だが、本当にただの実力不足なのだろうか。21世紀でさえ、入学試験で女性受験者の得点が減点される由々しき事態が起きているのだから、今よりも遥かに男女差別が激しかったこの時代なら、女性という理由だけで不合格にされたとしてもおかしくはない。寅子たちも優秀な久保田が不合格という事実に納得がいかなかった。

 その真偽はさておき、明律大学は1人も合格者が出せなかった女子部新入生募集の停止を決定する。寅子たちが肩を落とす中、「そんなことは絶対にさせない!」と立ち上がったのは香淑だ。香淑は鬼気迫る形相で学長(久保酎吉)に詰め寄り、必ず合格するから1年だけ待ってほしいと直談判。香淑に続き、女子部の生徒たちは床に手をついて頭を下げる。

 法改正がなされ、女性にも弁護士資格が与えられるようになってから、まだたったの2年。高等試験受験者の中でも女性は男性に比べて圧倒的に母数が少ないにもかかわらず、すぐさま新入生募集の停止に結びつくのはやはり女子部に対する世間の目が冷たいからなのだろう。それを阻止するために寅子たちが土下座までしなければならない状況に理不尽さを感じる。だがその姿を見て、花岡や轟(戸塚純貴)はもちろんのこと、日頃女子部をからかっている男子生徒たちまでもが一緒になって頭を下げる光景は希望だ。男女不平等な世の中に法学の世界から風穴を開けようとする寅子たちの姿は確実に多くの人の心を動かしている。穂高の説得もあり、学長は来年の試験で女子部の誰かが合格すれば、募集を再開すると約束してくれた。

 一方で、この年の7月に日中戦争が始まり、日本は一気に戦時色を帯びていく。中山(安藤輪子)の「夫に召集令状が来た」という台詞に胸がドキッとした。寅子の家族や優三、法学部の仲間も無関係ではない。出版社に勤める香淑の兄・潤哲(ユン・ソンモ)が警察と思わしき2人組に連行されていく場面もあり、不安が高まる。寅子たちは果たしてみんなで合格することができるのだろうか。
(文=苫とり子)

 
   

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