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『岸辺露伴』の末永いシリーズ化を希望 『ルーヴルへ行く』を成功させた複雑な脚本構成

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『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』©2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会 ©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

 映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』が、5月6日にNHK総合で放送される。

参考:『岸辺露伴は動かない』「密漁海岸」注目ポイントを解説 「ジャンケン小僧」復習が“ベネ”?

 本作は、NHKドラマ『岸辺露伴は動かない』(以下、『岸辺露伴』)を映画化したもので、人間を本に変えて記憶を見たり、指示を書き込むことで行動を操ることのできる「ヘブンズ・ドアー」という特殊な力を持つ漫画家・岸辺露伴(高橋一生)が人知を超えた異常な出来事に遭遇する姿を描く怪異譚となっている。

 今回の映画では「この世で最も黒く、邪悪な絵」の謎を解くために、パリのルーヴル美術館へ向かった露伴と編集者の泉京香(飯豊まりえ)が、美術館の地下倉庫でおぞましい怪異に遭遇する姿が描かれる。

 原作は、荒木飛呂彦の長編人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社/以下、『ジョジョ』)のスピンオフ漫画。

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 『ジョジョ』の一番の魅力は第3部から登場する「スタンド」と呼ばれる精神エネルギーが具現化した超能力だ。スタンド使いと呼ばれる異能力者が多数登場しスタンド対決を繰り広げるのが『ジョジョ』の面白さで、荒木にしか描けないエキセントリックなキャラクターと奇抜な造形のスタンドが暴れ回る様子は、娯楽性と前衛性が共存する唯一無二の漫画表現となっている。

 『岸辺露伴』もまた、不気味な怪奇現象や一癖も二癖もある登場人物が魅惑的だが、それらの描写は荒木の圧倒的な画力があってこそ成立するものだ。

 そのため、ドラマや映画といった実写映像で荒木ワールドを展開することは困難だと思われていたが、アニメ版『ジョジョ』の脚本・シリーズ構成も担当している小林靖子と企画・演出を担当した渡辺一貴監督の実写化に対するアプローチは実に見事だった。

 あえて「スタンド」という名称を使わず「ギフト」と呼ぶことで、ドラマならではの『岸辺露伴』を作り上げており「ヘブンズ・ドアー」を筆頭とする超常現象の見せ方も、漫画の作画をCGで忠実に再現する方向ではなく、あえてアナログの手触りを残すことで、実写ならではのアプローチとなっている。

 また、岸辺露伴と編集者の泉京香のバディモノにすることで『トリック』(テレビ朝日系)などのミステリードラマの手法をうまく活用している。何より最大の功労者は高橋一生を筆頭とする役者たちだろう。

 荒木ワールドのキャラクターは全員エキセントリックな変人で、現実ではありえない奇行や台詞が続くのだが、過剰な漫画表現を取り込んだ上で、ケレン味のある演劇的な芝居に見事に落とし込んでいる。

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