◆ねび行く~成長して大人になる。◆若草、初草~幼い孫の若紫なぞらをえたもの。
◆露~老い先短く儚はかなく、露のように直ぐ消えてしまう自分を尼君が例えたもの。
◆見送る露~成長、生い先を見届ける、この自分(尼君)。老い先と同音。
◆見つる先~成長を見届ける将来。
◆霞、若草、ねび行く、初草は、春。先無きは、露。それぞれ縁語の修辞法。作品の背景で響き合う効果がある。
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◆若草の若紫~同音の響きの重ね。
3B
如月初めつ方の頃ほひ、雪山どものまづいとゆかしくなれば、をみな車にて東にむかひつつ、遥かに野の方見遣らるるに、冬の気をもよほし澄み渡るあるやうも、山どものさまもいみじうおもしろし。あな、すずろにあはれなる事、言ふもおろかなり。
◆立ちならぶ 如月屏風(きさらぎびょうぶ) 遥かなり あてに着たらむ 真白の袙(あこめ)
【現代語訳】
二月初めに沢山の雪山を見たくなったので、女車に乗り揺らせて、東の方に向かいながら、野原の彼方に自然と目を遣ります。すると、冬の空気をもたらすような澄み切った様子も、数々の山々の様子も、とても素晴らしいのです。まあ! 何とはなく、しみじみとした趣があることは、言葉に表しようがありません。
◆雪が降り積もった山々が遠くに立ち並ぶのは、光り輝く屏風が遥か彼方にあるみたいですね、そして、真っ白な袙を優美に着たように見えることです。
【参考】
あてに着たらむ~あてに、は形容動詞「あてなり」の連用形で、高貴で気品がある様子。「む」は、推量の形で和らげて表現する婉曲用法で、「真白の袙を上品に身に着けているような」の意味。存続の助動詞「たり」の未然形+婉曲用法の助動詞「む」の連体形。
◆袙〜平安時代の男子と女子の中着。
【前回の記事を読む】喜びも苦しみも見聞きするにつけ、この先に思いを馳せ…