宿儺は敵・味方問わず、実力がある者には強い興味を示す性格をしている。だが虎杖に対しては一貫して眼中にない素振りで、交戦するたびに「つまらん」と吐き捨ててきた。だが虎杖は実際には高いポテンシャルを秘めている上、宿儺と強い縁のある存在なので、この反応は一見すると不可解にも見えるだろう。
辻褄が合うように想像するなら、宿儺は虎杖の潜在能力を察していたからこそ、その真価を発揮できず、並みの術師レベルに留まっていることを退屈だと感じていたのかもしれない。あるいは、双子の片割れをルーツに持っているため、本能的に虎杖と戦うことに気が乗らず、そのことに宿儺自身が気づいていない……という可能性もあるだろうか。
ところで虎杖に関しては、まだいくつかの謎が残されている。その内もっとも重要だと思われるのは、「播磨」に関する設定だ。宿儺と裏梅は虎杖の顔を見て、播磨にいた人物を思い出すような口ぶりをしており、読者のあいだでは蘆屋貞綱との関係性についての考察が盛り上がっていた。
だが今回明かされた情報を見るかぎり、父方の血筋はこの設定とは関わりがなさそうだ。そうなると播磨や蘆屋貞綱との接点があるのは、母である香織の血筋の方なのかもしれない。
香織は「反重力機構」(アンチグラビティシステム)という謎の術式を持っている人物だったが、この設定にも何らかの背景が存在するのだろうか。目まぐるしい展開が続く新宿決戦の行方が、ますます気になるところだ。
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(c)芥見下々/集英社
(文=キットゥン希美)