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芥川賞受賞作「花腐し」が大胆に脚色。ふたりの男と、ひとりの女が織りなす、切なくも純粋な愛の物語

キネマ旬報WEB

祥子との出会いと別れを経験して、どこか一度人生を降りた感じがする栩谷と伊関を、綾野と柄本が絶妙のコンビネーションで演じている。その彼らに忘れられない心の傷跡を残すヒロイン・祥子に扮した、さとうほなみの存在感が素晴らしい。伊関と暮らしていた20代前半には、女優として成功するという夢に懸けるエネルギーを感じさせ、30代へ向かう栩谷との生活では、女優の夢よりも彼と一緒に生きることへと想いがシフトしていく心境の変化を、点描される回想の中で見事に表現している。荒井監督は、ひとつのレクイエムとしてこの映画を作ったと言うが、二人の男性に鎮魂歌を奏でさせる祥子の存在は、観る者に強く印象付けられるだろう。

また生き生きとした過去の部分をカラーで描き、雨が降り続くどんよりとした現在をモノクロで描いた川上皓市の撮影も見事。加えてエンドクレジットで流れる、栩谷と祥子の思い出の曲『さよならの向う側』も、ロマンティックな余韻を残して効果的。キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位になった「火口のふたり」(2019)に続いて、荒井監督は新たな代表作を作ったと言える。

今回のBlu-ray&DVDには、予告編とイベント映像集を『特典映像』として収録。イベント映像集には、監督と綾野剛、柄本佑、さとうほなみの4人が揃った『完成披露上映会』と『公開記念舞台挨拶』の模様が収録されている。『完成披露上映会』ではずぶ濡れになりながら撮影した雨のシーンについて俳優たちが語り、『公開記念舞台挨拶』では『さよならの向う側』をデュエットした綾野剛とさとうほなみの裏話が面白い。何より俳優陣の荒井監督と映画に対する愛が溢れた舞台会挨拶になっていて、撮影現場での雰囲気の良さが伝わってくる。本編と合わせて観れば、さらに作品への興味が増すはずだ。

 

文=金澤誠 制作=キネマ旬報社

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  『花腐し』

●4月24日(水)Blu-ray&DVDリリース(レンタル同時)
Blu-ray&DVDの詳細情報こちら

Blu-ray 価格:6,380円(税込)
【ディスク】<1枚>
★封入特典★
・フォトブック(12P)
★映像特典★
・イベント映像集、予告編

●DVD 価格:5,280円(税込)
【ディスク】<1枚>
★封入特典★
・フォトブック(12P)
★映像特典★
・イベント映像集、予告編

●2023年/日本/本編137分
●監督:荒井晴彦
●原作:松浦寿輝『花腐し』(講談社文庫)
●脚本:荒井晴彦、中野太

●出演:綾野剛、柄本佑、さとうほなみ
吉岡睦雄、川瀬陽太、MINAMO、Nia、マキタスポーツ、山崎ハコ、赤座美代子/奥田瑛二

●発売・販売元:VAP
©2023「花腐し」製作委員会

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