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働くと読書ができなくなる⁉︎ 恋愛映画に見る「労働と読書」の関係/なぜ働いていると本が読めなくなるのか①

ダ・ヴィンチWeb

 もちろん、『花束みたいな恋をした』の麦が「スマホのゲームならできるけど、本や漫画は読めない」と述べたときの「本や漫画」は、勉強というよりも文化的な娯楽、という意味だ。しかし『独学大全』が述べる「勉強・学問」と、『花束みたいな恋をした』の指す「ゴールデンカムイ」や「宝石の国」が離れたものであるとは私には感じられない。というか、ほぼ同じもの──自分の余暇の時間を使って文化を享受しようとする姿勢──だろう。

『花束みたいな恋をした』の麦と絹の、文化的趣味に触れる姿勢の背後にある階級格差は、『独学大全』の指摘する、勉強・学問に触れる姿勢の背後にある階級格差と同様のものではないだろうか。そしてそれがどちらも2020~21年に指摘された問題であることは、決して偶然ではないだろう。

「はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざりぢつと手を見る」……と詠んだのは明治時代の石川啄木だったけれど、現代でもやっぱり、はたらけどはたらけど、暮らしは楽にならない。それどころか、私たちは本を読む余裕さえなくなっている。暮らしは社会の格差を反映するし、その暮らしは本を読む時間すら、手に入れさせてくれない。

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