ある家族が強引に離ればなれにされ、永遠に引き裂かれてしまう悲劇の物語を丁寧に描きながら、同時に教会権力の衰退とイタリアという国の誕生につながる壮大な歴史をも見せてくる。このミクロとマクロを同時に描く離れ業こそ、ベロッキオ監督作品の醍醐味だ。
──壺屋めり(イタリア美術史研究者)
約150年前の誘拐事件を描く本作は現代にも通じる多くの課題を突きつけている。信仰をめぐる戦争とカルト教団による洗脳は現在も続いているからだ。それに加えて、子どもの人格形成や親子のつながりとは何かという重い問いは見る者を揺さぶるに違いない。
──信田さよ子(原宿カウンセリングセンター顧問・公認心理師)
Story
1858年、ボローニャのユダヤ人街で、教皇が派遣した兵士たちがモルターラ家に押し入る。何者かに洗礼を授かったとされる7歳の息子エドガルドをキリスト教徒として養育するため、連れ去りに来たのだ。取り乱したモルターラ夫妻は、息子を取り戻そうとあらゆる手を尽くす。そして世論と国際的なユダヤ人社会に支えられ、その闘いは政治的な局面へ突入。しかし教会とローマ教皇は揺らいだ権力を強化するため、エドガルドの返還に応じようとしなかった……。
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© IBC MOVIE / KAVAC FILM / AD VITAM PRODUCTION / MATCH FACTORY PRODUCTIONS (2023)
配給:ファインフィルムズ