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子供の体力低下、スポーツ離れにどう対処すべき?習い事より先に出来ること

パラサポWEB

「今の子どもたちにとってスポーツは、習い事なんですね。親御さんに“何をやりたい?”と訊かれて、サッカー、野球あるいは他のスポーツを答える。すると、親御さんは道具を買う、送り迎えをする、もしかしたら運営の手伝いもしなければならないかもしれないと、覚悟をするわけです。しかし、子どもはまず外遊びをするなどして、体を動かす楽しさを知る方が良い。その中で、ルールを変えたらもっと面白くなるとか、選手を入れ替えてみたらどうなるだろうとか、様々な工夫をすることは成長につながります。しかし、いきなり競技に入ってしまうから、親御さんや指導者といった大人たちは、より上手くなるには、より高いレベルを目指すにはどうしたらいいかが大事だと思ってしまう。それは子どもたちにとってはかなりつらいことだなと思います」

まずは「体を動かすことが楽しい」と思う経験をして、仲間ができれば、みんなで工夫をしてもっと面白いものを考えようと試行錯誤する。そういうステップを踏む中で、自分はこのスポーツをしたいと決める。どの競技をするかを選ぶのは中学、高校生ぐらいでいいのではないかと大渕氏は語った。

「いつだったか、少年野球の試合を見ていたんですが、小学校5年生ぐらいの女の子がネクストバッターズサークルにいて、打順が来るのを待っていました。そこに監督が近づいていって何をするのかと思ったら“バットは振るなよ(フォアボールで塁に出ろ)”と言ったんです。がっかりしましたね。今、スポーツをする子どもたちの周囲は、一事が万事なんです。勝ちたいのは大人で、子どもを第一に考えて子どもを楽しませることができていない。そばでお母さんが一生懸命写真を撮っていましたが、バットを振らない我が子の写真をどうしたいんでしょう。いったい大人たちは何をしたいのか? 子どもたちは自分が楽しいと思えなければ、何事も頑張れないんです。その競技が好きで好きでたまらないという子どもを育てるのが、育成年代に対する大人たちのやるべきことであって、それができる指導者が素晴らしい。決して勝った指導者が素晴らしいわけではないということは、スカウトとして言っておきたいと思います」

実際大渕氏がスカウトとして選手たちを見ていると、野球の好きの度合いには濃淡があるのだそう。そこまで野球は好きではないけれども、投げてみたら球が速かったというので、体の方が先に評価されてプロへの道に進む選手はいる。しかし、心から好きではないと壁にぶつかったときに我慢できなくなってしまうケースはあるのだという。

手取足取り教えてもらった経験は、長く心に残るに違いない 写真提供:大渕隆氏

大学生の野球選手と鬼ごっこをしながら、体を動かす楽しさを知り、自分はどんな競技をしたいかのヒントを得る。スポーツに限らず、普段接する機会があまりないであろう大学生との触れあいは、子どものその後に大きな影響を与えることだってあり得る。このような場所・機会は、もっともっと増やしていくことが大事ではないだろうか。

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プロ経験がないにも関わらず、IT企業や高校野球での指導経験を買われ北海道日本ハムファイターズとスカウト契約を結んだことが話題となった、ユニークな人生経験を積んできた大渕氏。“スポーツは、まずは外遊びから”“競技を決めるのは中学、高校生ぐらいからでいい”といった言葉は、まさに実体験から来るものなのだろう。このような方が教育の現場に携わると、それこそいろいろな課題が解決できるのかもしれない。当事者である子どもの視点に立って、スポーツの課題と向き合い考える。そんな大渕氏の真摯な姿勢は、学校やスポーツに限らず、さまざまな場面で人と関わる際に参考になるのではないだろうか。

text by Reiko Sadaie(Parasapo Lab)
key visual by Shutterstock

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