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致命傷に…。サッカーU-23日本代表に何が起きていたのか? 田中聡と川﨑颯太の明暗を分けた組織的な問題【コラム】

フットボールチャンネル

●「日本ではなかなかない」「アジャストする力」
 
 U-23マリ代表戦ではアフリカ系の選手と初めて対戦するという選手も多く、その身体能力の高さや一瞬のスピードに圧倒されてしまった。川﨑颯太は「純粋に相手の一歩は大きいし速い。かなり驚かされた」、ベルギーリーグでそういった選手との対峙を経験している山本理仁も「一瞬でも気を抜くとクルっとターンして剥がしにくるのは日本ではなかなかない」と言っていた。

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 1対1の間合いや個人能力に面を食らった部分は大きい。ただ、山本はそれとは異なる視点でもこの試合を振り返っていた。
 
「12番(イスフ・ベンバ・シソコ)が下りてきて、ドリブルで運ばれて、そこに僕か(川﨑)颯太が出なきゃいけない状況になる。出たら8番(ブバカル・トラオレ)、10番(ママドゥ・サンギャレ)の脇が空いてくる。相手が僕らの2ボランチに対して数的優位を作ってきたというのが個人的には嫌でした」
 
 個の能力の高さは目に付いたが、戦術的にU-23日本代表の出方を見極めて、ウィークポイントを的確に突いていたことが分かる。「オリンピック出場を決めている強豪国らしい、アジャストする力があったと思う」と敵軍を分析し、「フォーメーション的にミスマッチが生まれたところ(中盤)もありますし、そこに対応できなかった自分たちが原因かな」と対応力の差を感じていた。
 
 これはU-23ウクライナ代表戦でも同じことが言える。前半から相手のビルドアップにプレスをかけて奪い、シュートにつなげるシーンもあったが、それをはがされてピンチを招くシーンも少なくなかった。これに対し松木玖生は「プレスがなかなかうまくいっていない雰囲気になっていた」と振り返る。
 
 2試合に共通するのは、前半に出た課題をどう解決したかという部分にある。
 
●致命傷になりかねないU-23日本代表の課題
 
 2試合ともに、ハーフタイムでチームとして明確な修正を行っている。U-23マリ代表戦では山本と川﨑の立ち位置を入れ替え、山本が中盤の底にポジションを取った。高い位置を取るようになった川﨑は「前へのエネルギーが出せるようになったと思うし、シンプルに潰すとか前にっていう方に頭を切り替えられた」、山本も「後半頭から自分たちのボールの流れも良くなったし、流れを掴めたのは良かった」と変化を感じていた。
 
 U-23ウクライナ代表戦でも「ハーフタイムでしっかり選手たちでいろんな話をして、後半は修正できたと思う」と松木は言う。高い位置からの前線からのプレスに、中盤や最終ラインが呼応して動く連動性は、前半に比べて改善されていた部分の1つだ。
 
 ただ、松木が「もう少し流動的にプレスをかけるところをピッチ内で修正できれば、また(状況は)変わってくる」とも言っていた。U-23ウクライナ代表戦は失点することなく前半を終えることができたが、修正できなければU-23マリ代表戦のように失点を重ねてしまうかもしれない。4月のパリ五輪アジア最終予選(AFC U-23アジアカップカタール2024)では、そういった修正の迅速さが致命傷になりかねない。
 
 ハーフタイムを経て明確に修正する姿を見ても、選手たちの「チームとしてやるべきことをしっかりやる」という意識の強さは強く感じる。ただ、サッカーは瞬間的な決断の連続であり、相手が常に存在するスポーツだ。こちらがグーを出した後に相手がパーを出したら、チョキを出さないとやられてしまう。相手の出方を見て修正するという後出しじゃんけんを絶え間なく、いたちごっこのように続けなければならない。
 
 U-23マリ代表戦で失点につながるミスを犯し、なかなか持ち味を出せずにいた川﨑はこのような言葉を残している。
 
●川﨑颯太と田中聡が明暗を分けた理由
 
「試合が終わったあとにセンターバックと話すと、みんなやりにくかったと感じていたし、ポジションにこだわりすぎていたところもあった。『こう動いて、こうしないといけない』みたいなところにエネルギーを使っちゃったことに、全員がストレスを感じていたところがあって、もっとシンプルにやっても良かったのかなと思ってて。少し気を使い過ぎたところが、出足が一歩遅れるところや、セカンドボールのところで遅れる原因になったとも思います」
 
 山本も「颯太も気持ちを立て直そうと頑張っていましたけど、そういう状況に陥った時は難しいし、自分もその気持ちは分かる」と難しさを認める。U-23マリ代表戦で起きていた混乱の実情は、川﨑の言葉からもよく分かるだろう。
 
 苦しんだ川﨑とは対照的に、U-23ウクライナ代表戦で田中聡は持ち味を発揮していた。球際の強さや推進力といった似た特徴を持つ両者が明暗を分けた理由は、田中の試合後の言葉が端的に表している。
 
「いつもならもっと緊張しているんですけど、代表定着しているわけじゃないですし、久しぶりなのでミスしても失うものはない。そういうメンタルで入ったのが良かったのかなと思います」
 
 後半途中からピッチに立った田中には、大岩剛監督がピッチ脇から何度も声をかけていたという。「守備の立ち位置だったり、逆サイドにボールがいったときの絞りだったり」と田中はその内容を明かしていたが、失うものがない田中は自分の持ち味を発揮していた。瞬間的な判断に迷いは一切なく、湘南ベルマーレの背番号5のままプレーしているように見えた。
 
●解像度が上がるほど顕著になる「判断の遅れ」
 
 大岩監督はチームに必要なタスクを遵守させたうえで、選手には個々の特徴を発揮してほしいと常々言う。ただ、短い活動期間の中で合わせなければいけない代表チームで、チームのタスクを守らせようとすればするほど選手には負荷がかかり、個々の特徴は影をひそめる。タスクの解像度が上がれば上がるほど、それは顕著になる。
 
 U-23マリ代表戦の後半の相手センターバックとサイドバックの間を裏に抜けてポケットを取る。U-23ウクライナ代表戦の縦パスをワンタッチで落として3人目を使う。そういったチームとしての狙いは分かりやすかった。ただ、分かりやすいということは対応されやすいということでもあり、川﨑の言うように「こうしないといけない」の連続は判断の遅れを招く。選手個々が判断する余白の少なさは冒頭のピッチ上の修正力にもつながる。
 
 忠実にこなそうとした川﨑が苦戦し、開き直って自分の良さを出そうとした田中が輝くという皮肉が生まれた。難しいのは、この問題は二者択一ではなくグラデーションであり、いい塩梅を見つける必要があるということだ。チームとしてのタスクが少なければ、森保ジャパン(A代表)のように選手から「もっと指示が欲しい」という声が漏れる。適切な解像度はリバプールとイングランド代表では違うし、イングランド代表と日本代表でも違い、U-23日本代表とA代表も同じではないかもしれない。
 
 U-23日本代表はU-23日本代表として、適切な解像度を見極めなければいけない。ただ、残された時間はあと1か月。アジア最終予選はすぐにやってくる。
 
(取材・文:加藤健一)

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