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これは傑作だ!障害を抱えるSixTONES松村北斗と上白石萌音の「高度なサスペンス」/大高宏雄の「映画一直線」

アサ芸プラス

 その後の2人は、ちょっと対極的な振る舞いになっていく。孝俊は明快な変化とともに歩む。先の笑い、笑顔を経て、生活そのものに張りが出てくる。

 美紗は体調が一定ではないから、笑顔が首尾一貫するわけではない。突発的に怒り出す彼女に、絶えず気を遣う孝俊の数々の所作は、美紗から始まった支え合いが基盤になっている。

 松村は一変した表情を見るだけで、圧倒的な演技力の持ち主であることがわかる。あの生気ある表情によって、映画の道筋に「希望」という言葉を当てはめたくなる。

 上白石は、配慮ある人間関係を保つ人柄が天下一品だ。そこから逸脱していく際、極端すぎる変貌の姿を見せないのも、彼女ならではの個性である。なんとかギリギリ、押しとどまる感じがある。

「夜明けのすべて」は、多くの人に「希望」を与える。言葉が上滑りする安直な「希望」ではない。映画のように生きることができると、思わせてくれるのだ。傑作である。

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(大高宏雄)

映画ジャーナリスト。キネマ旬報「大高宏雄のファイト・シネクラブ」、毎日新聞「チャートの裏側」などを連載。新著「アメリカ映画に明日はあるか」(ハモニカブックス)など著書多数。1992年から毎年、独立系作品を中心とした映画賞「日本映画プロフェッショナル大賞(略称=日プロ大賞)」を主宰。2023年には32回目を迎えた。

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