「池キャプテンがいない中、いろいろな気づきがあった。ボールの出しどころが限られるという部分で、新たな日本の形をつくる通過点になり、充実した大会になりました」
車いすラグビーを始めて初のキャプテンを務めた乗松また、池不在により、初めてキャプテンとして過ごしてみて気づきが多かったという乗松の言葉も興味深い。
「全員が悔いのない大会になるようにしたいと思って臨んでいるんですけど、みんなのことを考える時間と自分個人のことを考える比率が難しい。初日より2日目はうまくバランスが取れて試合に集中できましたが……。自分が考える理想は、チームに何か助けが必要なときに、みんなが前を向く言葉がけやプレーをできるキャプテン。コート外でも常に考えていきたいと思う。とくにコート外のところで、池さんが背負ってきたものの大きさを肌で感じているところですが、僕だけじゃなくて選手それぞれがチームを強くするところに関わることができる。池さんだけ(に頼るの)ではなく、気づいたところを補い合えるチームが絶対に強いと思うので」
2018年の世界選手権でアメリカ、オーストラリアとの死闘を制し、2021年の東京パラリンピックと2022年の世界選手権では準決勝で負けてからの銅メダルマッチに勝利した。数々の壁を乗り越えたチームの中心にいた乗松の言葉からは金メダルへの強い意志と危機感がうかがえた。
代表候補の若山英史、羽賀理之、島川慎一はクラブチーム選抜の一員としてオープンゲームに参加したパリで何色のメダルを目指すのか
今大会は、ベテランハイポインター島川慎一(3.0)も選出されず。(3.5-2.0-2.0-0.5)と(3.5-2.0-1.5-1.0)といったバランスラインを強化できた一方で、日本代表の最大の武器であるハイローライン(障がいの重い選手と軽い選手の組み合わせ)の仕上がり具合を確かめることはできなかった。
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そして、岸HCも自身の采配を「未経験の部分が多い」と自認していることもあって課題は多くある。
現在、日本代表は世界ランキング3位。パリ本番で世界のトップと対峙したとき、これらの課題をクリアできていなければイーブンの内容で渡り合うことはできない。
日本代表は4月と6月に国際大会に出場予定。本番まで時間はない。いかに強豪と渡り合うラインを完成させることができるのか。岸HCが大事にしているという「いい準備」で金メダルへの勝機を見出してほしい。
2024ジャパンパラ車いすラグビー競技大会で全勝優勝した日本代表※カッコ内は、障がいの種類やレベルによって与えられた持ち点
text by Asuka Senaga
photo by X-1