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災害時、約100人の部員が駆けつける⁈ 広島経済大学の野球部が消防団サポーターに!

パラサポWEB

このように若い学生たちが率先して地域のために活動する姿勢には広島県ならではの環境が影響している可能性があるかもしれないと堤監督は言う。

「広島では小さい時から平和教育が身近にあって、8月6日には平和記念式典を見たり、普段から平和記念公園に行ったりということが日常の中で行われているので、戦争がいい悪いという話以前に、日常を平和に保つという意識が強いのかもしれません。ボランティアに関しても学生たちは何の躊躇もなく参加していますし、何かいいことをしているというよりは、困っている人が目の前にいるのであればどうにかしたい、自分に何ができるかを自主的に考えているように感じます」(堤監督)

また広島で野球といえば広島東洋カープだが、実はカープは日本のプロ野球12球団のうち新聞社などの親会社をもたない唯一の球団で、「12球団唯一の市民球団」とも言われている。野球は、広島市民にとってとても身近な存在だ。

「野球部はいろいろ方々に応援や支援をいただいて活動が成り立っているという部分があります。ですから、そうやって支えてくれている方々への恩返しという意味も込めて、活動をしていますし、普段からいろいろな相談を受けます。たとえば、野球をやっている小中学生が厳しい指導でモチベーションが下がってしまっているので、大学生たちと一緒に野球をさせてもらって本当は野球は楽しい、スポーツは楽しいんだぞ、というのを教えてもらえないか、といった依頼を受けたこともあります」(堤監督)

広島経済大学の硬式野球部も、市民にとってカープのように身近で、頼れる強い味方といった存在になっているのかもしれない。

学生にとっても、得るものが大きい

2023年 広島六大学野球春季リーグ戦において、4季ぶりの優勝を決めた硬式野球部(写真提供:広島経済大学硬式野球部)

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災害時には広島経済大学の硬式野球部の100名以上が消防団サポーターとして駆けつけてくれるというのは、とても心強いが、実は学生にとっても得るものが大きいと堤監督は言う。

「消防団サポーターをはじめとするボランティア活動の全てが、実は野球に繋がっていると思うんです。柳田悠岐選手が広島に帰ってくると話をする機会があるんですが、彼を見ていても、プロの選手は細かいところへの気遣いであったり、相手ピッチャーの考えていること、相手チームがどう動くかなど、常に他者の視点に立って物事を考えていると思うんです。スポーツではそうした視点、想像力や発想力といったものが非常に重要な要素ですし、野球以外の、社会に出てからもそれは大切なことだと思います。

災害現場での活動はどれひとつ同じ状況はありません。そこで、被害に遭われた方々が何を求めているのか、どうしたら喜んでいただけるのかっていうことを、相手の立場に立って考えるという点で、勉強をさせていただいています。その上、少しでも地域の方々の安心・安全に役立てているとしたら、野球をするにも、大学生活を通して成長する上で得るものが大きいんじゃないでしょうか」(堤監督)

部員が相手の立場に立って考え、自主的に行動するために、堤監督が心がけていることがあるという。それは「最初から答えを言わない」ということだそうだ。

「僕が考えていることが本当の答えではないかもしれませんよね。おそらく自分が持っている答えは自分の過去の経験に基づくものでしかないと思っているので、それが今の彼らに当てはまるのか、その学生個人に当てはまるのか、チームに当てはまるのか、というのは常に考えています。本当の正解というのは本人が考えなければ見えてこないと思うので、基本的には答えを言わないようにということだけ、気をつけてやっています。あとは、最低限のチームのルールというのを決めておけば、学生たちは僕よりも凄いことを考えたりします。ですから、主体的にいろんなことを考えられるような状況を作ってあげたいなと思っています」(堤監督)

誰かに言われたからではなく、自分たちで考え、自分たちの地域を守る。そんな学生が100人以上もいて、災害時には駆けつけてくれるとは広島市民が羨ましい。若林主任によると、今後は災害時だけでなく、防災訓練や消防団のPR活動、防火思想の普及啓発活動といった地域貢献にも学生たちに協力してもらいたいという。近年、自然災害が多発しているが、広島市の例はいいモデルケースになりそうだ。

text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)
写真提供:広島市消防局/広島経済大学硬式野球部
photo by Shutterstock

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