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『VIVANT』役所広司に隠された謎 ノゴーン・ベキには“真の目的”があるのか?

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『VIVANT』©︎TBS

「我らを欺き、別班としてここに来た、そうだな!?」

参考:『VIVANT』は“考察ドラマ”なのか? 視聴者を作品に“参加”させる3つの要素

 ノゴーン・ベキ(役所広司)はそう声を荒げた。その目線は乃木憂助(堺雅人)をしっかり射抜いており、落ち着いてはいるがその態度からは怒っているような落胆しているような様子がうかがえる。いつも強気の乃木の別人格・Fまでもが「このままじゃ殺されるぞ」と警告している。『VIVANT』(TBS系)最終回を目前にして、乃木は絶体絶命のピンチを迎えている。

 第9話では、乃木がテントの上層部メンバーから仕事を任されるようになり、次第にテントの真の姿が明らかになっていった。それと同時に、リーダーであるベキの人物像も明確となってきている。最終回前に本作の大ボスと言えるベキについてわかっていることをまとめていきたい。

 まず、ノゴーン・ベキとはバルカの言葉で「緑の魔術師」という意味であり、現地の人たちからの呼び名であった。ベキの本名は乃木卓。DNA鑑定も行われ、はっきりとしたが、乃木の実の父親である。乃木家はたたら製鉄で栄えた島根の御三家のひとつで、名家として知られていたが、卓は次男であったため、家に残ることができず、猛勉強の末、警官となり、その高い能力を買われ、警視庁公安部外事第1課に配属となった。テントの存在を別班が追っていると知った時、ベキはすぐにアジトを変えるように指示をしていたこととから、早くから別班の存在を把握していたことが窺えたが、これは公安に所属していたためだろう。

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 卓は武装勢力を調査する公安の任務で農業使節団と偽ってバルカへ渡り、緑化事業に従事する傍ら、諜報活動をしていた。通常、諜報員は家族にさえ本当のことを話さないが、卓は妻の明美(高梨臨)には自分の本当の職業を明かしていたという。卓の働きも虚しく、バルカの内乱を防ぐことはできず、卓たちは武装勢力に拉致されそうになってしまう。武装勢力からはなんとか逃げおおせ、あとは救出してくれる公安のヘリコプターに乗り込むだけ、となった時、そのヘリコプターが突然引き返してしまうのだ。卓曰く、「公安から見捨てられた瞬間」だ。乃木はこの時のことをよく覚えており、彼が悪夢でよく見るのはこの時の場面である。

 幼い乃木と生き別れ、その後の拷問で明美を亡くした卓は、なんとか息子だけでも探し出そうとバルカで消息を探し回るがうまくいかなかった。その頃、生まれたばかりのノコル(二宮和也)と出会い、息子を育てられなかった無念さから彼を自分の子として育てるようになったという。さらに武装勢力から村を守る用心棒を請け負うようになった過程で、バトラカ(林泰文)やピヨ(吉原光夫)らと協力するようになり、孤児たちを養護するようになった。実はテントの主な事業は今も孤児たちの支援なのだが、その原型はここから出来上がっている。

 と、ここまでがドラマの中で語られたベキとテントの姿で、まあ、筋は通っているのだがちょっと待ってほしい。もともとが公安の諜報部員ということは、現在、別班に所属している乃木や公安の後輩にあたる野崎(阿部寛)と同じようなスキルを持っているということである。それにしては、「祖国に絶望した過去もあるが、今は社会貢献活動をしている」と言えるベキの行動はあまりに素直すぎないだろうか。もちろん、組織に振り回され、それによって愛する人を失ってしまったのだから、卓が思うままありのままに生きることにし、その最終的な姿がベキだという考えも理解できる。だが、かつて、バルカ政府と内通していた裏切り者をあぶりだした野崎や自ら銃を向け、別班メンバーを即死かのように見せかけていた乃木のように、ベキも一癖あるなにかを隠し持っており、テントにはもっと別の「真の目的」があるような気がしてならない。

 しかしそんなベキの「真の目的」どころか、ベキの目の前で「別班の任務でここに来た」と明かしてしまった乃木の意図するところもはっきりしないまま、ついに迎えてしまう最終回。もはやいろいろ考えすぎてしまってドツボにハマりそうだ。放送日が早く来てほしい。そう考えながら指折り数えて待っている。

(文=久保田ひかる)

 
   

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