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『VIVANT』マニアは必読! 小説版で”伏線”と”考察”の解像度が爆上がり

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 壮大なスケールと予想を裏切る展開で毎回、大きな話題となるドラマ『VIVANT』(TBS系)。本作は『半沢直樹』シリーズ(TBS)などで演出を務めた福澤克雄が原作を手掛けるオリジナルドラマだが、この度、そのシナリオを元にしたノベライズ本・日曜劇場『VIVANT』が発売された。ドラマとは違ったこのノベライズ本の魅力に迫っていきたい。

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ストーリーに集中できる構成

 計算された伏線と考察しがいのある謎の多さが魅力のドラマだが、いかんせん、登場人物や各話に詰め込まれた情報量が多い。そのため、リアルタイム視聴ではストーリーをだいたい理解し、その後、何度か見直している視聴者もいるのではないだろうか。もしかしたら、すんなり理解できないことが原因で最初の数話で脱落してしまった人も多いかも知れない。そのような人ほど、ぜひ本作を手に取ってもらいたい。

 ドラマ『VIVANT』の第1話のラストシーンでは、不意に馬と草原、そしてふたりの男が映し出された。ふたりは爆発事件にアディエル(Tsaschikher Khatanzorig)とジャミーン(Nandin-Erdene Khongorzul)が巻き込まれたことについて話していたが、突然の新しい人物の登場に「この人は誰だ?」「乃木(堺雅人)たちとどんな関係があるんだ?」とつい、考えてしまったことだろう。

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 この場面を小説にするならば、「ある男たちが爆発事件について話している」というようにふたりの正体を明かさないように書いても良いと思うのだが、本作では、この男たちの正体がノコル(二宮和也)とノゴーン・ベキ(役所広司)であることが記されている。本作はドラマが謎解きミステリのように描かれているのではなく、登場人物と事実がしっかりと明記される形でまとめられている。もちろん、乃木の別人格・Fの名もすぐに出てくる。つまり、「これは何?」「誰のこと?」というのが少ない分、内容に集中できるようになっているのだ。

ドラマでは分からなかった細かい情報

 では、謎解き要素を楽しみにドラマを見ている人は本作を楽しめないのかというと、そうでもない。ドラマ『VIVANT』の第1話で誤送金された1億ドルの行方を追って、セドルという街に向かおうとタクシーに乗った乃木は、その車が砂漠の中を突っ走っていくのには興味を示さず、手元にある“何か”を見つめていた。ドラマでは何を見ているかには焦点が当てられず、陽気に話しているドライバーの声が耳に入ってこないほど物思いに耽っている乃木の様子が描かれた。

 この時点では、乃木が見ているものが単なる書類のように見えていたのだが、本作ではそれが実は、「乃木の父親の40年後のシュミレーション写真」だったとはっきりと書かれている。ドラマでは第5話で乃木がアリ・カーン(山中崇)に見せているものだ。タクシーの中で見ていたものが書類ならば、乃木のどこか深刻そうな表情は、差額の9千ドルを何としてでも取り返したくて策を考えているように思えるが、父親の写真を見ていたとなれば、違って見えてくるのではないだろうか。

 このように本作には、ドラマで映像にはならなかった細かな情報が記されていることがある。これらは後からわかる伏線としてドラマをよりおもしろいものにしてくれるだろう。

 ドラマだけでももちろん楽しめる『VIVANT』だが、本作があればさらに一歩深く、興味深い『VIVANT』の世界に入り込むことができる。今回、発売となった上巻で描かれているのはドラマの第5話まで。ここまでもなかなかスリリングだったが、第6話以降も予想を遥かに超えた怒涛の展開が繰り広げられている。

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