ONE | 「今から本気で漫画家を目指す」とつぶやいたら
ONE | 「今から本気で漫画家を目指す」とつぶやいたら
あらゆる敵をたった一撃で倒してしまうという人気ヒーローコミック『ワンパンマン』(集英社)。そのもとになったのは、原作者のONEさんが個人のHPでコツコツと発表し続けてきたネット漫画でした。投稿コミックのまとめサイトで人気に火がつき、いくつかの幸運が重なってプロ漫画家への道を歩むことになったONEさんのサクセスストーリーは、今の時代ならではの漫画道といえるかもしれません。彼はどのようにして、プロになれたのか? その経緯をうかがいました。
ONE
『ワンパンマン』48話より。
ネット漫画が仕事になるなんて、夢にも思わなかった

――ONEさんが世に出るきっかけとなった『ワンパンマン』は、ネット上ではわりと初期から反響があったそうですね。

『ワンパンマン』第1話より
『ワンパンマン』が連載されているONEさんのHPは累計4000万人以上に読まれている

ONE 描き始めて数カ月のうちにネットのまとめブログなどで取り上げられ、新都社という2ちゃんねる系の投稿漫画サイトでは1位になったりもしたんです。今ほどじゃないんですが、ウェブ漫画というカテゴリーのなかでは、そこそこ人気っていうポジションで。

――その人気がプロ漫画家への足がかりになると予想していましたか?

ONEいえ。それが仕事に結びつくなんていう発想はまったくありませんでしたね。当時もネット漫画を商売にしている人はいたのかもしれませんが、僕にとっては別世界の話でしたから。それで、『ワンパンマン』を65話くらいまで描いたところで、1年間お金を貯めるために就職したんです。

――その間は『ワンパンマン』の更新をストップしていたんですよね。

ONEはい。ただ、休載中も雑誌やまとめサイトに取り上げられて、ワンパンマンの名前は少しずつ広まっていました。そういう人気で少しは自信を得られたから、上司に引き留められても仕事を辞めて漫画を選ぶことができたんだと思います。そして、決意表明のためにTwitterで「仕事を辞めた」とつぶやいたんです。今から本気で漫画家を目指す、死にもの狂いで漫画家になるしかない、みたいなことを書いて……。

――プロを目指すと宣言したんですね。

ONEそうですね。苦手なペン入れや清書も練習して、トラウマになっている持ち込みだってやってやる! という意気込みでつぶやいたんですけど、そうしたらわりとすぐに、『アイシールド21』を描いている漫画家の村田雄介先生から「じゃあ俺と組みませんか?」みたいな連絡をいただいて。

『アイシールド21』1巻

――なんと、第一線のプロの方からアプローチが。

ONE僕の漫画を原作として村田先生が『ワンパンマン』をリメイクしたいというお話をいただき、集英社のウェブサイト『となりのヤングジャンプ』での連載が決まりました。ほかにも僕のTwitterを見て、いくつかの出版社からワンパンマンの原作買い取りの話や、4コマ誌で新作を描いてみないかっていうようなメールをいただいて。
 その時に初めて、出版社の方やプロの漫画家さんが『ワンパンマン』を読んでいたことを知って、「HPをやっていてよかった!」みたいな。

――運よくというか、思わぬ方向から商業誌デビュー。

ONEまったく想像もしない方向でしたね。村田先生が『ワンパンマン』を知っていてくれたのも、Twitterを見てくれたのも偶然ですから。

――でも、ONEさんは原作者ではなく漫画家志望でしたよね。他人がワンパンマンを描くことについてはどう思われたんでしょう?

ONEほかにも漫画家の方からリメイクしたいという連絡をいただいたことはあったんですが、そういうのは大しておもしろくならないだろうなって考えていたんです。でも、僕が村田先生のファンだったこともあり、村田先生が描き直すなら話は別だ、と。どうなるんだろうっていう興味もあったし、純粋に読んでみたいと思えましたし。この人がいいならがんばろうって。

――原作者としてのやりとりは、どのように行われているんでしょう?

ONE『ワンパンマン』に関してはもとの漫画があるので、普段は僕のHPに掲載されている原作を読んで、村田先生の解釈で描いていただいています。バトルの表現とか、表情のニュアンスとか、原作ではラフなところを村田先生が汲み取って本格的にアレンジして。セリフは原作からまったく変えないし、編集者も介入しないんです。

――編集者は介さないんですね。

ONEそうですね。もう完成している漫画だし、すでにネットで読者の支持を得ているからおもしろさの裏付けが取れているっていう判断で。ヤンジャン編集部からは、そのままの漫画を原作にすればいいっていう感じでやらせてもらっています。

そして、職業ウェブ漫画家へ

――『となりのヤングジャンプ』では、『ワンパンマン』のリメイク版とほぼ同時期に、1年間毎日更新というONEさんの日刊漫画『魔界のオッサン』も始まりました。

ONE『魔界のオッサン』は、『ワンパンマン』の担当編集さんから毎日更新されるコンテンツをつくりたいと相談されたのがきっかけで始まったんです。サイトを活気づけることが目的なので、日記でも落書きでも、何でも自由にしていいからって言われたんですけど……まあ僕の日記を読んでもつまらないだろうから、漫画だろうなと。

――あの漫画は魔界が舞台ではあるけれど、わりと日常的でほのぼのしているなと思いながら読んでいて……。

ONEそうですね。4コマ漫画みたいなノリの漫画をやってみようと思っていましたから。

――ただ、読んでいるうちに急にバトル展開になる……と思いきや、ひとコマだけのギャグが挟まれたり。ページ数もバラバラだし、これはウェブならではのおもしろさだなって思いました。

『魔界のオッサン』第122回より
『魔界のオッサン』第122回より。スタート時はほのぼのした4コマ漫画のノリだったが…

ONEたしかに、雑誌に載せたらページの無駄づかいになるようなこともやりましたね。これは仕事だっていう気持ちもなくはないんですけど、担当さんも楽に構えていいからって言ってくれたんです。そんなにがちがちになることなく、自分のHPに載せているような感覚で描かせていただきました。

――毎日描き続けるっていうのは難しくなかったですか?

ONE毎日微妙に忙しい感じですかね。並行して『裏サンデー』(小学館ウェブサイト)で『モブサイコ100』の連載もやっていたから、運悪く締め切りが重なったりするとカツカツになってしまう……みたいな。HPに描いている『ワンパンマン』だけは締め切りがないので、優先順位が下がってあまり更新できなくなってしまいましたね。

――逆にそれまで、締め切りがないのに自発的に描けていたこともすごいんですけどね。

ONE『ワンパンマン』は僕自身も続きが気になっているので、描きたい衝動に駆られているんです。でも、一度描き始めると没頭してほかのことが手につかなくなってしまうから、かなりまとまった時間を確保しないといけなくて……。

――なるほど。ONEさんが早くまとまった時間を取れるように祈っています。一読者としては次の新展開が気になるあまり、ほかのことが手につかなくなりそうなので(笑)。

執筆:宇野浩志

(更新日:2016年1月10日)

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