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WurtS、肉体性と物語性を取り込んだ才気溢れるパフォーマンス 新たな展開も予感させた初ワンマンツアー

Real Sound

WurtS(写真=川崎龍弥)

 WurtSにとって初めてのワンマンツアー『WurtS LIVE 2022』。11月29日のファイナルは初のZepp DiverCity(TOKYO)。満員となった会場のステージ中央には、巨大な卵が鎮座しており、「この卵からは新たな生命体が生まれる。その卵が孵化する瞬間を見せたい」ということがアナウンスされる。ただし、孵化するにはいくつか条件がある、と。防護服を着た何者かが登場し、「彼のライブを全力で楽しむこと。ただそれだけだ。それでは実験開始」と告げ、“研究者×音楽家”を名乗るWurtSならではのコンセプチュアルなライブが始まった。

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 お馴染みのウサギ(DJ)とサポートメンバー3人が登場。ビートにあわせてウサギがハンドクラップをし、ギター&ベース&ドラムの楽器隊がラップが乗ったビートに加わる。WurtSが手を振って現れ、エレクトリックギターを持つと、性急なドラムロールから分厚いバンドサウンドが奏でられる。最新EP『MOONRAKER』にも収録されている「コズミック」だ。満員のオーディエンスが、拳を突き上げて応戦する。WurtSが初めて有観客ライブを行ったのは2022年4月のこと。そこではまだ初々しさを放っていたが、その2カ月後のPEOPLE 1との対バンライブでは、まるで覚醒したかのような肉体的なパフォーマンスを見せていた。そこから約半年、さらに躍動感があふれた堂々たる佇まいを見せていることに驚く。5人編成のバンドはすでに一心同体の生命体のように、阿吽の呼吸でガンガンに盛り上げていく。

 「僕の個人主義」「オブリビエイト」と、手を一切休めず抜けの良いバンドサウンドを叩きつけていく。語感の良い歌詞とバンドアンサンブルがガチっとハマり、高い中毒性を生む。「オブリビエイト」の〈yeah yeah〉や〈oh oh oh〉といったラインは、今にもシンガロングが聴こえてきそうな問答無用のキャッチーさを放つ。以前WurtSにインタビューした時に、「なぜどの曲も異常な程に抜けが良いと思うか?」と聞いたら、「どの曲にもEDMの要素があるからだと思う」と返答してくれたことがあった。EDMが持つキャッチーなビート&メロディが貫かれているからこそ、ダイレクトに体を直撃する機能性の高さがある。それはWurtSのライブが俄然肉体的になっているからこそ、余計強く感じた。

 少し声を弾ませながら、「もうツアーファイナルなのかって感じです。この1年の集大成を見せられたらと思うので、今日は楽しんで帰ってください!」と言った後、曲名を告げて歓声が上がったのは「BOY MEETS GIRL」。小気味良いビートにWurtSのスポークンワード調のラップが乗り、間奏ではウサギが音に合わせて小さなトランペットを吹く真似をして和ませる。

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 「NERVEs」ではハンドマイクでステージ下手から上手に移動し、オーディエンスに近づいて歌ったWurtS。「楽しんでいますか?」と問いかけて客席から大きな拍手が送られると、嬉しそうに返答して「Talking Box (Dirty Pop Remix)」へ。海外のTikTokでリミックスバージョンの方がバズるケースが多くあることを踏まえ、2021年に多くのミームを生んだ「Talking Box」にラップを加えてドロップした楽曲で、狙い通りバズを起こした。ラップパートではオーディエンスが上下にジャンプをし、大盛り上がり。研究者としての才気を証明するシーンだった。

 今年リリースされ、WurtSが大海に乗り出したことを示す言わば開幕宣言的な意味合いを持つ「SPACESHIP」から、後半がスタート。スペイシーなダンストラックに乗りながら、右手を突き上げ〈大胆に開幕だ/乗り込めよSPACESHIP〉と歌うWurtS。この浮遊感あふれるビートにただ体を預けて楽しめばいいんだという快楽性があった。最新曲「MOONRAKER」は、WurtSのしっとり感のある伸びやかな歌声を真ん中に据えた、EDMを基調としたダンスミュージックでもオルタナティブロックでもないポップソング。随所にWurtSの多大なる伸びしろを感じさせた。

 そして「ブルーベリーハニー」「分かってないよ」「リトルダンサー」「SIREN」とアッパーな曲を立て続けに演奏。オーディエンスの胸の高まりをキャッチするかのように、ウサギも一層ノリノリでアジテート。甘酸っぱく瑞々しい焦燥感が爆発すると同時に、ワンダーランド感もどんどん高まる。WurtSはかつて「2022年の野望は信頼感を高めること」と口にしていた。その言葉通り、様々な仕掛けを孕んだ楽曲ごと、映像作品ごとに、「WurtSなら間違いなく楽しませてくれる」という確信が高まっていった2022年だったわけだが、世界観が強固になりつつあるライブでも、それは同様だ。

 アンコールでは、TikTokでお題を集めていた未発表曲「COOLじゃない?」を、「急なんでデモみたいな感じなんですけど」と前置きしてから披露。ダウナー感とやさぐれ感がまさにクールな曲だった。「どうでしたか?」と恐々と問いかけ、オーディエンスからの拍手に安堵したようなWurtSは、「卵、割れるのかな(笑)? 何でこんなことをしてるかというと、ミュージックビデオがシリーズ化していて、もしかしたらこの卵のつながりが出てくるかもしれないので、次作を楽しみにしていてください。一緒に卵割っちゃいましょう!」といたずらっ子のような雰囲気を滲ませながら話した。来年3月からはWurtS曰く、「ストイックなライブハウスツアー」も始まる。まだ発表されていないリリースも多くあるという。音楽を軸にしたWurtSの革新的な研究の旅はまだまだ続く。(小松香里)

 
   

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