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ゴミと呼ばれた少年がゴミから生まれた敵を倒す!漫画『ガチアクタ』レビュー

ホンシェルジュ

シュッとしたイケメンからキュートな美少女まで描きこなす画力の高さや、装飾にこだわり抜いたファッションセンスの良さで、大久保の漫画が好きな層にとどまらず新しい読者を取り入れることに成功しました。

メリハリ満点なデフォルメの利いたキャラデザ、白と黒のコントラストが鮮烈な絵作り、ゲス顔すら魅力的に映える圧倒的目ヂカラ。

裏那圭&晏童秀吉タッグの三拍子揃った個性が凝縮された『ガチアクタ』は、結果として非常に中毒性の高い作品に仕上がりました。

ガチアクタ(2) (講談社コミックス)
著者[“裏那 圭”, “晏童 秀吉”] 出版日

ゴミから生まれた斑獣を唯一倒し得る人通者が世界の鍵を握る?

次点に挙げるのは読めば読むほど深まる世界の謎と、斑獣を唯一倒し得る人通者の設定の面白さ。

下界には人通者(ギバー)と呼ばれる能力者が存在し、人器と呼ばれる特殊な武器を自由自在に操り、凶暴な斑獣を撃退します。ルドの恩人のエンジンや師のザンカもこれにあたり、斑獣を狩り生計を立てる掃除屋を営んでいました。

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この人器の設定が面白い!

あるキャラははさみ、別のキャラは眼鏡と種類は様々ですが、共通しているのはそのキャラクターの一番大事なものであること。

即ち、大切にしていた物に命が宿り具現した武器が人器なのです。

付喪神を思い浮かべればわかりやすいかもしれません。この人器はもちろんオンリーワンのアイテムで、キャラクターごとに形状や性質が異なっています。それ故人器誕生に纏わるエピソードは涙なしには読めません!

人と人、人と物の間に生まれるエモーショナルなドラマこそ『ガチアクタ』のポイント。

天上界ではいとも容易く物が捨てられていました。捨てられた物はゴミとして処分される運命を免れず、その悲劇が数多くの斑獣を生み出します。

かたや人通者は浪費と対極の存在。

有形無形にかかわらず、どうしても捨てられない何かを持ち、自分の信念を貫き通した結果能力者として覚醒した彼等は一人一人が魅力的です。

ゴミを大量投棄して顧みない天上界とそのゴミの中で暮らす人々がいる下界の対比は、私達が生きる現実世界ならびに格差社会の風刺とも解釈できます。

ゴミか否かを決めるのは人の心、自分の意志。

『ガチアクタ』の根底に流れるメッセージ性は、大量消費社会のアンチテーゼとして、読者の心に突き刺さります。

ガチでかっこいい&可愛いキャラクターに惚れる!

最後に挙げるのが忘れちゃいけないキャラクターの魅力。

『ガチアクタ』の本質はバディものにして師弟もの。

全てを失った主人公・ルドが逆境のどん底から這い上がり、頼れる仲間を得て成長していく姿を描いた、最高に熱くて面白い少年漫画なのです。

第一話時点ですこぶる劣悪な環境におかれていたルド。それでも絶望せずやってこれたのは、心の支えとなる幼馴染と養父がいたから。

ところが養父はあっさり殺され、ヒロイン枠かと思われた幼馴染には、「信じてたのに……やっぱり人殺しの子供なんだね」とこれまたあっさり見限られてしまいました。

この時点でプラマイゼロ、どころかマイナスからのスタートです。

普通なら絶望のあまり自殺しかねない状況ですが、奈落で運命的な出会いを果たした掃除屋・エンジンに世界の真実を告げられ、「レグトを殺した奴の正体と目的を突き止める!」と開眼しました。

少年漫画の王道は「主人公が失った何かを取り戻す為に足掻く」物語。

クールなエンジンや関西弁の棒使いザンカなど、一筋縄じゃいかない兄貴分にしごかれながら、天上界にリベンジを誓い自分を鍛え上げるルドをきっと応援したくなります。

リヨウやセミュなど女性陣も負けず劣らずチャーミングで、生き生きした一挙手一投足から目が離せなくなりました。

ガチアクタ(3) (講談社コミックス)
著者[“裏那 圭”, “晏童 秀吉”] 出版日

『ガチアクタ』を読んだ人におすすめの本

『ガチアクタ』が気に入った人におすすめしたいのが大久保篤『ソウルイーター』

月刊少年ガンガンで連載されたファンタジーバトル漫画で、職人&武器の男女バディの痛快な活躍を描きました。アニメ化もしています。

アメコミタッチの背景や大胆なデフォルメなど、『ガチアクタ』にハマった読者なら楽しめることうけあいの大久保節を堪能してください。

ソウルイーター (1)
著者大久保 篤 出版日
  • 1
  • 2

2022年10月17日

提供元: ホンシェルジュ

 
   

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