『ゴールデンカムイ』特集が組まれた「Cut 2024年 01 月号」(ロッキングオン)

【画像】え…っ? 見た目の再現度も完璧!? これが近年のアクションも演技も高評価だった実写化出演俳優です

原作マンガを再現した怒涛のバトル描写!

 2024年1月19日に実写映画『ゴールデンカムイ』(作:野田サトル)が公開され、キャストの再現度や原作愛にあふれた描写の数々のほか、激しいアクション描写にも絶賛の声が寄せられています。近年は『ゴールデンカムイ』に限らず、マンガを原作にした「実写化アクション」のクオリティが上がったと感じている人も多いのではないでしょうか。今回は「マンガ原作×実写アクション作品」の魅力に迫ります。

世界的アクション俳優の右腕が参加

 作品を紹介する前に、まずは世界的アクション俳優ドニー・イェンさんの名を挙げる必要があります。イェンさんは現在に至るまで香港・中国映画界で活躍し、カンフーや総合格闘技をこなす姿から「宇宙最強」と呼ばれるほどの存在になりました。ハリウッドにも進出しており、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』や『ジョン・ウィック:コンセクエンス』などの作品でその名を知った人も多いのではないでしょうか。

 なぜイェンさんの名を挙げる必要があるかといえば、現在の日本のアクションシーンを支えているアクション監督、コーディネーター、スタントマンの多くがイェンさんの作品に関わってきたからです。

 邦画アクションのターニングポイントとなった『るろうに剣心』シリーズ(作:和月伸宏)のアクション監督・谷垣健治さんは、90年代に香港へ渡って以降イェンさんの作品に数多く携わってきました。香港アクションのノウハウを知り尽くした谷垣さんだからこそ、原作マンガの現実離れしたアクションを現実に落としこむことができたと言えます。

 また俳優陣の身体能力も、実写化成功に貢献したことは間違いありません。緋村剣心を演じた佐藤健さんの殺陣は、美しさすら感じさせてくれます。1作目の観柳邸庭園で弧を描くように敵に斬りこむシーンや、屋根伝いに駆け抜け飛び降りながら刀を振るう場面など、ワイヤーアクションを非現実に見せない表現力でこなしてみせました。

 運動神経の良さでは御庭番衆・巻町操を演じた土屋太鳳さんも負けておらず、『京都大火編』で披露した「空中開脚蹴り」はイェンさんの十八番でもあります。また剣心と互角に渡り合った雪代縁役・新田真剣佑さんの剣術も凄まじく、その気迫は剣心に強い憎しみを抱く縁という原作キャラを忠実に再現することになりました。

 ちなみに谷垣さんは『るろうに剣心』よりも前に、同じくマンガ原作の『カムイ外伝』にアクション監督で参加しています。『カムイ外伝』の段階ですでにワイヤーアクションを取り入れており、剣心の「斜め走り」はじめ、この作品での技術があったからこその『るろうに剣心』のアクションなので、あわせて注目してみてください。

※ここから先の記事は映画『ゴールデンカムイ』のネタバレを含みます。

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荒唐無稽な原作マンガのアクションも実現可能に

馬ぞりチェイスシーンに濃縮された怒涛のアクション



2023年の大ヒット作! 『キングダム 運命の炎』ポスタービジュアル (C)原泰久/集英社 (C)2023映画「キングダム」製作委員会

 近年のヒット作に携わったアクション監督・コーディネーターでいうと、『ゴールデンカムイ』の下村勇二さん、『幽☆遊☆白書』(作:冨樫義博)の大内貴仁さん、『Gメン』(作:小沢としお)の富田稔さんもイェンさんの香港作品に参加した経験があります。

 公開前から原作キャラの再現度が注目を集めていた『ゴールデンカムイ』は、こちらもハイクオリティなアクションで知られる『HiGH&LOW』シリーズの久保茂昭監督がメガホンを握りました。本作は多くの兵士が入り乱れる日露戦争の二〇三高地の戦闘シーンから始まり、冒頭にして邦画とは思えないスペクタクル描写に目が釘づけになるはずです。

 ストーリーの主軸がアイヌの金塊の隠し場所のカギとなる刺青人皮集めに移ると、アクションシーンは冒頭の集団戦からパーソナルなものへと変化します。なかでも目を見張るのが、第七師団のもとから脱走した杉元佐一(山崎賢人さん)とアシリパ(山田杏奈さん)コンビが繰り広げた馬ぞりのチェイスです。

 アシリパが屋根の上を疾走してそり上の杉元と合流する時点で十分に熱い場面ですが、以降も猛スピードのそり上で展開する杉元と月島軍曹(工藤阿須加さん)ほか兵士たちのファイトや、並走する馬を緩衝にしてそりに飛び移る二階堂浩平(柳俊太郎さん)の実写版オリジナルのエクストリームなアクションシーンがも展開されます。さらに鶴見中尉(玉木宏さん)が転倒する馬から放り出されるも、受け身の勢いのまま疾走するなど、マンガ的な怒涛のアクションから目が離せません。

 なお杉元役の山崎さんと下村勇二さんは、『キングダム』シリーズや『今際の国のアリス』などでもタッグを組んでいます。まさに阿吽の呼吸といえるのではないでしょうか。

アクションがキャラクターの「個性」に

 Netflixのドラマシリーズで、映画のようなスケールで全5話を展開した『幽☆遊☆白書』は、『HiGH&LOW』シリーズで知られる大内貴仁さんがアクション監督を務めています。原作は霊能力バトルを中心に描いているため、言うなれば『るろうに剣心』以上に規格外のアクションシーンが求められました。

 そんな心配もあった同作では、浦飯幽助が霊界探偵に就く第1話から激しい肉弾戦が展開し、視聴者を一気に作品の世界へと引きこみます。また幽助と桑原和真で手数が圧倒的に違っていたり、剣術を得意とする飛影のハイスピードバトルやローズ・ウィップを駆使する蔵馬の華麗な動きを描いていたりと、キャラごとにアクションの性質が明確に異なっているのも特徴です。

 アクションがはっきり区別されているのはもちろん原作どおりですが、同時に『HiGH&LOW』シリーズで個性あふれる大勢のキャラのアクションを描き分けた大内さんだからこその結果とも言えます。

 アクションの描き分けという点では、吉田稔さんが2023年に参加した『Gメン』『OUT』も見逃せません。

『Gメン』では岸優太さんや竜星涼さん、森本慎太郎さん、矢本悠馬さんらが落ちこぼれ生徒の集まり「Gクラス」のメンバーとして出演しています。とくに注目すべきはクライマックスの大乱闘で、岸さんのダンス能力を活かしたアクロバティックな体術をはじめ、プロレス技や空手など画面内で展開されるアクションが一辺倒にならない工夫が随所に見られました。

 品川祐さん監督・倉悠貴さん主演の『OUT』(原作:井口達也、漫画:みずたまこと)でも、タイマンシーンと乱戦が交互に映し出されるクライマックスのバトルに注目してみてください。ボクシングスタイルや剣術ベースのファイト、寝技主体の柔術など、アクションによって各キャラの個性が改めて浮き上がってくるのが分かるはずです。

 もちろん日本の長いアクション史には先駆者たちの奮闘があり、また俳優だけでなくアクション部・スタントチームの支えもあって現在につながっています。アクションに注目しながらマンガ原作の映画・ドラマを観れば、新たな発見があるかもしれません。

※山崎賢人さんの「崎」は「たつさき」が正しい表記
※アシリパの「リ」は小文字が正しい表記