気になるけど、謎は謎のままでいい? 画像は「鬼滅の刃(完全生産限定版)」Blu-ray&DVD 第1巻(アニプレックス)

【画像】えっ、原料は一緒なの? これが個性出すぎな日輪刀の持ち主です(5枚)

謎のまま終わった信じがたい事実

 すでに原作が完結している『鬼滅の刃』ですが、あらためて読み返してみると、謎めいた設定がいくつも存在することに気が付きます。たとえば自分の階級を示すことができる「藤花彫り(とうかぼり)」という設定が、いつの間にか生まれており、読者はおろか炭治郎でさえもポカーンとしていました。ほかにどんな奇妙な設定があったのか、振り返ってみましょう。

「山の天気は変わりやすい」が通用しないトンデモ峰「陽光山」

「鬼殺隊」の主力装備である日輪刀は、「陽光山(ようこうざん)」で採れる「陽光を吸収した砂鉄と鉱石」が原料となっています。炭治郎の刀を造った鋼鐵塚(はがねづか)さんいわく「陽光山」は一年中陽が射しており、なおかつ「くもらないし雨も降らない」そうです。

 さらには「太陽に一番近い山」とも説明しているので、おそらく上空に雲が存在しないほど大きな山なのでしょう。とはいえ日本一高い富士山はくもりもすれば雨も降る山であり、標高8848mを誇るエベレストでさえ、上空に雲があるために積雪します。また種類にもよりますが、雲は1万数千メートルの高さにできることもあるといいます。そうなると「陽光山」は、とんでもない高さの山である可能性が……。

 しかし、鋼鐵塚さんが「陽光山」の説明をした際に描かれた山には木が生えている様子が見て取れます。富士山やエベレストのように標高が高い山の頂上には樹木が育つうえで必要な環境が整っておらず、植物が生えなくなることから、エベレスト以上に標高が高いとは考えにくいでしょう。「陽光山」は、くもらないし雨も降らないことから「太陽に似ている」という意味で「太陽に一番近い山」と呼ばれているのかもしれません。

 鬼や日輪刀の存在よりも、よほど謎に満ちているといえるでしょう。

ねずみなのに筋骨隆々! 陰の鬼殺隊こと「ムキムキねずみ」

『鬼滅の刃』で描かれた気になる存在といえば、音柱である宇髄天元(うずい てんげん)が使役する忍獣「ムキムキねずみ」も忘れられません。その姿はシュールかつインパクト抜群で、上半身は筋肉でパンパンに膨れ上がり、なおかつ二足歩行。特別な訓練を受けているため知能も高く、1匹で刀1本を持ち上げる程度に力も強いようです。

『鬼滅の刃』には、鬼殺隊の伝令係である鎹鴉(かすがいがらす)を始めとして、さまざまな動物が登場しますが、そのなかでもムキムキねずみは明らかに異質です。しかしなぜか作中では、さらっとした説明しか行われていません。嘴平伊之助(はしびら いのすけ)なども当たり前のように存在を受け入れ、「ねずみ共!! 刀だ!!」と刀を持ってこさせていました。

 ただTVアニメ版ではOPにレギュラー出演しているほか、「ムキッ、ムキッ」というセリフだけのために、人気声優の木村昴さんを起用しています。さらに第4話の「大正コソコソ噂話」においては宇髄自らムキムキねずみの解説を行い、「陰の鬼殺隊といってもいい」と彼らの活躍ぶりを称賛していました。ムキムキねずみは単なるイロモノではなく、人気と実力を兼ね備えた存在のようです。



猗窩座が描かれた『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』キービジュアル第3弾 (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

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鬼同士のランク付けってどうしてる?

勝敗の基準がいまいち分からない「入れ替わりの血戦」

 炭治郎たち鬼殺隊だけでなく、敵である無惨サイドにも気になる設定がありました。それが、上弦の壱である黒死牟(こくしぼう)が口にしていた「入れ替わりの血戦」です。

 この設定が明らかにされたのは、上弦の陸の敗死を受けて行われた会議、通称「第2回パワハラ会議」直後のことでした。上弦の参の猗窩座(あかざ)がひょんなことから上弦の弐である童磨(どうま)の頭を真っ二つにした際、黒死牟が「猗窩座、お前は度が過ぎる」「気に喰わぬのならば『入れ替わりの血戦』を申し込むことだ……」と忠告しています。

 話の流れからおそらく「入れ替わりの血戦」とは、鬼たちのあいだに存在した下剋上システムのようなものなのでしょう。読者のなかには鬼同士の対決を期待した人も多かったと思いますが、本編で言及されたのはこのときだけで、結局「入れ替わりの血戦」が行われたことは一度もありませんでした。

 ただ『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐』によると、黒死牟は過去に3回、「入れ替わりの血戦」を申し込まれたことがあるそうです。そのうちの1名が猗窩座で、残念ながら下剋上は叶いませんでした。

 つまり猗窩座は黒死牟に敗れたことになりますが、そもそも驚異的な再生能力を誇る鬼同士の戦いはどうやって勝敗をつけるのでしょうか。何らかのルールがあるのか、ギブアップするまで勝負が続くのか、あるいは無惨様が審判を務めていたのか……。一度でいいから見てみたいものです。

 こうして振り返ってみると『鬼滅の刃』には、気になる存在や信じがたい事実がさらりと描かれていることが多々あります。だからこそ、何回読み返しても新たな発見があって面白いのかもしれません。