『悪魔の花嫁』14巻(秋田書店)

【画像】え?ここまでやる? 悲惨な死に方がこびりつく人気マンガ・アニメ(4枚)

生きたままミイラに?

 マンガやアニメのなかで登場キャラの死が描かれることは多いですが、あまりにも残酷でグロテスクな描写をされると、それが強く記憶に残ってトラウマになる人も少なくないでしょう。今回は、ネット上で今でも話題になる「マンガやアニメの悲惨すぎた死亡シーン」を振り返ります。

 残酷な描写といってはじめに少女マンガを思い出す人は少ないかもしれませんが、1975年から少女マンガ誌「月刊プリンセス」で連載された『悪魔の花嫁(デイモスのはなよめ)』(原作:池田悦子、作画:あしべゆうほ)は、悲惨な場面が多く登場する有名な作品です。

 同作は中学生の美奈子と悪魔・デイモスによってドラマが繰り広げられる、ホラーとファンタジーの要素が入った1作でした。遠い昔の記憶をもとに美奈子のことを花嫁と思っているデイモスが突如として美奈子の前に現れ、そこから彼によって不思議な出来事が次々と発生します。

 1話完結型で話が進むなかで、残酷な描写はもちろん、デイモスが事件に巻き込まれた美奈子を助けたり、人間の欲望にデイモスが手を貸して最悪の結末を迎えたりと、さまざまな物語が展開されるのも魅力のひとつです。

 そんななかでも、悲惨すぎるといわれているのがコミックス第14巻の第82話「眠れる愛」でした。この話では大恋愛の末に結婚する、次期博物館当主の晴彦と真紀のカップルが登場し、その後に真紀が不倫をしてしまいます。それに気付いた晴彦は激昂して、真紀を監禁した後に水も食料も与えないようにしました。そして代わりに杉油と香料を飲ませ、天然ソーダを全身に浴びせるという拷問を続けるのです。

 真紀はどんどんやせ細り、晴彦は「どんな気分だ? 内臓と肉がしだいにとけて おまえの美しかった体が骨と皮ばかりになっていくのは」と話しかけました。晴彦には彼女を生きながらミイラとして博物館に展示するという狙いがあり、それは実現されます。ほぼ骨だけになったミイラの真紀の悲惨なビジュアルは、いまだに忘れられない人が多いようです。

 他には2008年から「ビジネスジャンプ」で連載されていた『シャトゥーン~ヒグマの森~』(原作小説:増田俊也、作画:奥谷通教)の「ヒグマに襲われる」場面も、なかなかに悲惨な描写がされています。

 同作は冬眠に失敗して雪山を徘徊する飢えた凶暴なヒグマと、零下40度の大森林に閉ざされた人たちが戦うという「動物パニックマンガ」です。登場人物が奮闘するも、次々とヒグマの前に成すすべもなく殺されてしまう同作は、実在の猛獣に追いかけられるというリアルな恐怖体験が味わえます。

 コミックス第1巻の第3話「エス」では、フィンランド出身のエスコ・バーヤネン(以下、エス)が山小屋の研究所にいたにもかかわらず、ヒグマが窓ガラスを割ってエスを連れ去ります。そして生きた状態のまま腕を噛みちぎられ、さらに顔面からも噛みつかれて、断末魔の叫びをあげ、もう痛みも感じないなか、彼は寒さに震えながら徐々に捕食されていくのでした。

 この場面を鮮烈に覚えている読者は多いようで、「たまに夢に出てきて大量に汗をかいて目覚める」「食べられているエスがピクピク反応しているのがトラウマ」といった声も多くあがっています。



『Re:ゼロから始める異世界生活』2nd seasonのキービジュアル (C)長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活2製作委員会

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最愛の息子がハンバーグに

『シャトゥーン』と同じく、猛獣に捕食されるシーンとして有名なのが、人気アニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』の第2期で放送された第33話「命の価値」です。

 同作は主人公の高校生であるナツキ・スバルが異世界に転生し、そこで出会ったハーフエルフのエミリアやメイドのラムたちと降りかかる危機を乗り越えるというファンタジー作品です。スバルには「死に戻り」という特殊能力があり、バットエンドを迎えるルートを回避するために何度も死んではやり直しており、ようやく成功ルートにたどり着いた時は喜びを感じた人も多いでしょう。

 第33話でのスバルは間違った選択をして死亡するのですが、その死に方というのが「大兎による捕食」でした。大兎は名前に反して小さい兎ですが、一匹から単体で分裂増殖し、飢餓を満たすために人も食してしまう魔獣で、スバルは大量の大兎に食べられてしまいます。

 普通の兎とサイズが変わらない大兎によって体が徐々に噛みちぎられていき、スバルは絶叫します。断末魔の叫びがしばらく続くため、「聞いているのがツラくなる」「悲惨さがダイレクトに伝わった」と衝撃を受けた視聴者が続出したようです。楽に死ねない描写というのは、やはり強烈なインパクトを残すのでしょう。

 ダイレクトな描写ではないにせよ、悲惨な事実が間接的に明かされたことで、視聴者にトラウマを植えつけた作品もあります。

「週刊少年ジャンプ」のヒット作品『封神演義』(著:藤崎竜)は、3000年以上前の古代中国を舞台に、仙人たちの戦いを描いたマンガです。皇帝の紂王(ちゅうおう)を絶世の美女・妲己(だっき)が手玉に取り、彼女たちによって王朝が支配されます。その悪しき仙人や道士を封じ込める「封神計画」を実行するため、主人公の太公望(たいこうぼう)が動き出しました。

 第16話「妲己ちゃん酒池肉林をする」では西岐を治める四大諸侯のひとりである姫昌(きしょう)が登場するのですが、彼は妲己が考えた残酷すぎる酒池肉林の宴に反対し、7年間も幽閉されることになります。

 そして、少し先の25話にて、姫昌の息子・伯邑考(はくゆうこう)が父を助けにやってきたものの、それは叶いませんでした。妲己はその美貌で伯邑考を誘惑し、最後は彼が持参した歌を歌う猿・白面猿猴を暴走させ、わざと自分に怪我を負わせます。この時点で伯邑考の処刑は確定しました。すると、突如として妲己と義妹の喜媚(きび)によって、ポップな料理番組風の場面が展開されます。

 そして「番組」内ではひき肉を手でかき混ぜるなどしてハンバーグを作り、看守によって完成した料理が姫昌のもとに運ばれました。姫昌は「ハンバーグが大好物」といいながらも、ひとりになった途端に涙を流して「伯邑考…」とつぶやきます。

「伯邑考がハンバーグにされてしまった」というショッキングすぎる展開で、「コミカルに描写されてるけど、やってることエグすぎるでしょ」「事実を知ってから料理工程見ると吐き気が…」「一応原作(中国の古典怪奇小説『封神演義』)通りだけど、何倍も怖い」と、今でも語り継がれる衝撃の場面となりました。直接的な描写ではなく、想像に訴える表現によって、より不気味で衝撃的な印象を与えています。