メガハウス「ガンダムガールズジェネレーション 機動戦士ガンダム ララァ・スン」 (C)創通・サンライズ

【画像】よく考えると「ビーム・ナギナタ」って謎だよね…みんな大好き「ゲルググ」いろいろ(8枚)

読み解く鍵はシャアの「ゲルググ」

 アニメ「ガンダム」シリーズの「ニュータイプ」といえば、いざパイロットを務めれば未来予知にも近い「直感」を働かせて、光速に近いビーム兵器を回避し、ビットのような遠隔操作兵器も操るという、軍事的な観点からは非常に強力な存在です。

 シリーズ第1作『機動戦士ガンダム』のジオン公国軍には、「ララァ・スン」や「シャリア・ブル」、そしておなじみ「シャア・アズナブル」といったニュータイプのパイロットが所属し、それぞれ「エルメス」「ブラウ・ブロ」「ジオング」というニュータイプ専用モビルアーマー(MA)/モビルスーツ(MS)に搭乗して戦います。これら兵器には「サイコミュシステム」と呼ばれる、無線で遠隔操作可能な無人攻撃ポッド「ビット」や、有線でコントロールする腕部ビーム砲などといったニュータイプ専用兵器が搭載されており、ミノフスキー粒子でレーダーが効かないこの世界では対応困難な「オールレンジ攻撃」を仕掛けてきます。

 特に「エルメス」のビットは感知も困難で、地球連邦軍の宇宙艦艇は、ほぼ何もできずに撃沈される様子が描かれていました。

 このように強力なニュータイプ専用MA/MSとニュータイプパイロットではあるものの、物語において戦場に投入されるのはいつも1機ずつでした。そして、普通に戦えば連邦軍にできることは何もないほどの戦力でありながら、ニュータイプとして異常覚醒を遂げたアムロが操縦する「ガンダム」を相手にすると分が悪く、ビットや有線ビーム砲はビーム・ライフルで撃墜され、接近戦を挑まれて撃破されるのです。

 アムロの「ガンダム」を中心とする「ホワイトベース」のモビルスーツ隊が高練度なのは、特にシャアは熟知しているはずであり、兵力を逐次投入すれば各個撃破されるかもしれないことは、シャアも頭にあったことでしょう。

 ではなぜ、ジオン軍はニュータイプ部隊を集中運用できなかったのでしょうか。「エルメス」と「ブラウ・ブロ」と「ジオング」を同じ戦場に投入すれば、いくら「ガンダム」でも大いに苦戦するでしょうし、もしかすると撃破できる目だってあるかもしれません。そこまでは期待できないとしても、アムロ&「ガンダム」以外は全て撃破できそうですし、そうなると「ホワイトベース」を撃沈して「ガンダム」も無力化できるかもしれないのです。

 なおこの場合、それぞれの機体の完成時期のズレについては、無視しても大丈夫でしょう。シャリア・ブルが登場するエピソードはソロモン要塞の陥落後で、そしてソロモンが陥落したのは12月25日、終戦まで約1週間というタイミングです。

 しかし、ニュータイプ兵器の集中運用はなりませんでした。改めて、なぜ集中運用ができなかったのかを考えると、その答えは「ララァの『エルメス』を護衛するのが、シャアの『ゲルググ』」であったことから紐解けるかもしれません。



BANDAI SPIRITS「1/550 ブラウ・ブロ」 (C)創通・サンライズ

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ニュータイプ兵器が集中運用できない理由の一考

 シャアの「ゲルググ」は高性能なモビルスーツではあるものの、ニュータイプ用兵器などは何も搭載していませんでした。またこの時点で、シャアのニュータイプ適正がどの程度なのか、上司の「キシリア」が把握していないとは思えません。シャアをニュータイプ部隊の指揮官として任命し、後で「ジオング」も与えているのですから、ある程度、ニュータイプ能力があることは把握していたはずです。にも関わらず、シャアは「ジオング」までニュータイプ用兵器に搭乗していません。

 恐らく、当時のサイコミュ技術では、複数のニュータイプ兵器を同じ戦場に投入すると、サイコミュ同士が混信して、うまくビットや有線腕部ビーム砲を動かせなくなるのではないでしょうか。だからシャアは、ニュータイプ能力で自分より勝るララァ(劇中でシャアは「ララァの方が優れている」と認めています)の「エルメス」にオールレンジ攻撃を任せ、自分は通常兵器の「ゲルググ」で護衛に徹していたのだと思われます。

 そう考えるなら、特に「ブラウ・ブロ」のような図体の大きなMAには、エースパイロットの搭乗したMSの護衛を付けるべきでしたが、たとえばマンガ『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』に登場するエース部隊「キマイラ」は、「シャアのニュータイプ部隊が反乱を起こした際に、撃破するための戦力」とのことです。つまり、上官たるキシリアとしては「キマイラ」のようなエース部隊が、カリスマ性を持つシャアの影響下に置かれたり、ニュータイプたちと共感して寝返ることを恐れ、ニュータイプ部隊の護衛にはできなかったのでしょう。この両者が連携していたら、アムロの「ガンダム」でも撃破されていたかもしれませんね。

 キシリアがシャアのニュータイプ部隊を信用しきれなかったばかりに(弟のガルマを殺し、自分も仇討対象なのですから、無理もありませんが)、ニュータイプ部隊とエース部隊が連携できず、連邦に敗れたと考えるなら「足並みのそろわないジオンらしさ」を感じてなりません。