アニメ『ちびまる子ちゃん』キービジュアル (C)さくらプロダクション/日本アニメーション

【画像】意外な最終回!『ちびまる子ちゃん』を見る(4枚)

さくら一家が大金持ちに!?

 さくらももこ先生原作のアニメ『ちびまる子ちゃん』が始まったのは1990年1月のこと。放送直後から爆発的な人気を博し、社会現象とも言われました。その後は一度の中断を挟み、現在も放送が続いています。まさに国民的アニメと言っても差し支えないでしょう。

 ところで、そんな『ちびまる子ちゃん』には「最終回が用意されている」という都市伝説があります。いくつかのサイトの記述がありますが、内容は概ね「祖父の友蔵が亡くなり、母親が遺品の古い株券を発見。調べてみたら株が高騰しており、売却して一家は大金持ちに。まる子とお姉ちゃんは大学に進学し、まる子は念願の漫画家になる」というものでした。

 もちろん原作にもアニメにもこのようなエピソードはなく、出所不明、事実無根の噂にすぎません。そもそも、お金持ちにならなくても漫画家にはなれます。2008年に刊行された『マンガ・アニメ都市伝説』(山口敏太郎・著/ベスト新書)にも記されていますので、08年以前からこのような噂があったのでしょう。

 アニメ『ちびまる子ちゃん』は先述のとおり、90年1月に放送が始まりましたが、92年9月27日に最終回を迎えています。これはアニメ会社とフジテレビの間で3年の放送契約が結ばれていることを知った原作者のさくら先生が「まる子三ヶ年計画」を立ててネタを準備し、計画通りに台本を書いて計画通りに番組を終了させたからです(『さるのこしかけ』集英社文庫)。なお、アニメが始まったときのさくら先生は24歳でした。

 アニメ『ちびまる子ちゃん』第1期の最終回は142話「さくら家のお月見」です。脚本はさくら先生自身が手がけています。

 十五夜の日、お月見をとても楽しみにしているまる子とたまちゃんは近くの土手へ行き、ススキを取って家へ帰ります。家では月見で酒が飲めると大喜びしていた父ヒロシが友蔵と一緒に飲みはじめます。その頃、花輪くんの家では盛大なお花見パーティーが開かれていました。花輪くんはクラスメイトに電話してパーティーに招待しますが、さくら家は泥酔したヒロシが無意味な長電話をしていてつながりません。

 さらにヒロシはまる子に日本酒を無理やり勧めて飲ませてしまい、まる子、ヒロシ、友蔵の3人で踊りはじめてしまう始末。花輪くんの家にクラスメイトが集まってパーティーを楽しんでいる最中も、まる子は鍋をかぶって踊り続けました。最後は、富士山とお月様が写って終わります。湿った感じのまったくない、とても楽しい最終回でした



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さくら先生逝去後に発表された「最後のエピソード」とは?

 原作コミックはさくら先生が逝去された年の2018年12月に17巻が刊行されています。さくら先生が描いたものとしては最後であり、帯には大きく「完結」と書かれていました。巻末の「さくらももこプロフィール」にも「漫画単行本『ちびまる子ちゃん』17巻(完結)」と記されています。

 収録されている最後のエピソードは「おっちゃんのまほうカードの巻」。これは『ちびまる子ちゃん』誕生25周年を記念して、1巻に収録された「その1」をリメイクしたものです。

 内容はほとんど一緒ですが、両者を比較してみると、お姉ちゃんがしっかり者になっていたり、100円くれたおじいちゃんの言葉が異なっていたりと、細かな差異が楽しめます。最後のコマは、まる子がお姉ちゃんと一緒に「甘味処みつや」を訪れて、「あしたから楽しい夏休みが始まります」というモノローグが重なるというものでした。

 いったんは「完結」とされましたが、19年から新作マンガの不定期連載が再開します。これは、かつてアニメ用にさくら先生が書き下ろした脚本をもとに、30年以上にわたってアシスタントを務めた小萩ぼたん先生が作画を担当したもの。22年に10月コミック18巻として刊行されました。小萩先生がラジオ「さくらももこのオールナイトニッポン」に毎回送っていたイラストがさくら先生の目にとまり、アシスタントになったのだそうです。

 18巻の最後のエピソードは「たこやきをつくろう」。まる子の懇願によって、たこやきを作る道具を買ったさくら家ですが、失敗したたこやきのほうが成功したものより美味しくて……という、実に『ちびまる子ちゃん』らしいお話でした。

 アニメはまだ続いていますし、さくら先生の長男で現在は会社を引き継いで作品管理をしている三浦陽一郎さんによると、マンガになる前の脚本がまだたくさんあるそうです(NHK「ラジオ深夜便」2022年5月9日)。まだまだ『ちびまる子ちゃん』は「最終回」を迎えることはないようです。